2024年2月13日火曜日

イスラエル・「ダレット計画」(パレスチナ人追放計画)と暴力的「資本蓄積」 ——【連載第五回】パレスチナ連帯! ガザ虐殺戦争をやめろ! 


イスラエル・「ダレット計画」(パレスチナ人追放計画)と暴力的「資本蓄積」=イスラエルによるパレスチナ人追放・民族浄化計画を許すな!

ーー【連載第五回】パレスチナ連帯! ガザ虐殺戦争をやめろ! 渋谷要

最終更新 2024・02・15 13:54

●ラファ攻撃は「パレスチナ民族浄化」の攻撃だーー絶対許すな!

イスラエル首相・ネタニヤフは、2月8日の閣議で、3月11日までに、ラファ(ラファハ)への攻撃を終わらせるように軍などに指示したと報道されている。ガザ地区最南端の都市・ラファにはガザ北部などからの避難民150万人がイスラエルの攻撃を逃れて、集結しているという。その人口密集地に、空爆や地上戦などの戦闘が開始されれば、大変な大惨事がもたれされることは必至だ。今まで「イスラエルの自衛権」を擁護してきた合衆国政府でさえ、止めるように言っているのが、現実だ。しかし、イスラエル国家権力は、ラファを攻撃し「ハマスをせん滅する」としている。だが、現実に虐殺されているのは、子供を大量に含んだ一般市民だ。このファシズム戦争を絶対にゆるすな。

 しかし、こうした軍事作戦は、イスラエルが中東で戦後一貫して画策し、また実行してきた、軍事作戦の思想に淵源している。それが、ダレット計画だ。それは「パレスチナ人に対する民族浄化」の軍事計画であり、パレスチナ人のシナイ半島への追放計画だ(この計画の最近のものとしてはイスラエル諜報省の機密文書がある)。

 実際、避難民はラファからどこへ、「人道回路」(なるもの)をもって逃げろとイスラエル国家権力はいうのか。もはや、ガザ内には、安全な場所はおろか、安全かどうかはわからないが150万人もの避難民が「逃げる場所」がガザの中のどこにあるというのだろうか。

 こうして、パレスチナ人をガザから追放しようとしているのだ。「第二のナチスはネタニヤフ国家体制だ」という以外ない。以上のガザ虐殺戦争の土台となっているダレット計画をみることにしよう。

●ダレット計画

 「プラン・ダレット(ダレット計画)」は、1948年の第一次中東戦争(1948年2月~1949年3月)において、ユダヤ・シオニスト指導部と軍が1948年2月から5月の時期(つまり48年5・14イスラエル名「独立宣言」の前の時期)において、シオニスト指導部が展開した軍事作戦とその作戦計画を言う。国連による「パレスチナの2国家への分割」という決定に対し、シオニスト指導部は、「ユダヤ国家」とは別に、パレスチナ自治国家の領土を侵略し強奪する計画をつくった、それが「ダレット計画」だ。

 これは、イスラエルの初代の首相となるベングリオンによって想起され、軍事組織ハガナによって設計されたもので、48年3月に完成した作戦計画である。この作戦は上記の時期(48年2月~5月)において13作戦展開されたといわれている。その内、8作戦はアラブ国家に割り当てられた地域にアラブ正規軍が入る前に実行されたものとされている。

 この計画の基調は、国連分割計画で提案されたユダヤ人国家に割り当てられた地域の境界内と、その境界外のユダヤ人入植地、ユダヤ人国家との国境線に沿ったアラブ自治地域の町や村の征服を企図していた。アラブ人が抵抗した場合、征服された村の住民は征服地の境界の外に追放する計画だった。抵抗しなければアラブ住民はとどまることができるというものであり、それは、イスラエルの「奴隷になれ」ということ以外ではない。そして支配地域を要塞化する・軍事的に統治するものだった。実際これらの計画は、すでに撤退していたイギリス軍の基地、警察署の占領をポイントにシオニストの支配を実現していったとされている。その場合、どのような作戦がとられたのか。

ウィキペディア「プラン・ダレット」の項目では次のようである。

ーーー――

「防衛システムと要塞の統合の下での計画セクション3(警察署の占拠や輸送動脈の保護など)」につづく「セクション4」では、今回のガザ虐殺戦争でイスラエル軍が実際に行っている行為が次のようにしるされている。

「わが国の防衛システムの内部または近くに位置する敵の人口密集地が、現役の軍隊によって基地として使用されるのを防ぐために、作戦を開始すること。これらの操作は、次のカテゴリーに分類できる」として、つぎのように作戦を書いている。

 「村落の破壊(瓦礫に火をつけたり、爆破したり、地雷を埋め込んだり)、特に人口密集地を破壊し、継続的に制御することが困難である。次のガイドラインに従って操作統制活動を開始する:村の包囲と内部での捜査の実施。抵抗した場合、軍隊は破壊されねばならず、住民は国家の国境の外に追放されなければならない」。そして、その地域の「要塞化」が明記されている。

 「抵抗がない場合、…部隊の指揮官は村内のすべての武器、無線機器、自動車を没収」する。また「政治的に疑わしい人物を全員拘束する」そしてこれらの地域の行政当局はユダヤ人が任命されるとしている。

 また「国境の内外での反撃」というところでは、――これは今回の「10・7アルアクサ洪水作戦」に対するイスラエルの作戦の考え方もそうだと考えるが――「平均して大隊規模の部隊が深く浸透し、人口密集地や敵基地に対して集中攻撃を開始し、そこに配置されている敵軍とともにそれらを破壊することを目的としている」としている。

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 まさに、イスラエル国家権力によるパレスチナ人に対する民族浄化の設計図である。

こうした計画を念頭に置きながら、イスラエル国家権力は戦後、持久的な戦争計画を展開してきた。それが、まさに「中東戦争」の歴史であり、パレスチナ住民に対するアパルトヘイトとジェノサイド、シナイ半島への追放計画などのルーツとしての位置を持つものに他ならない。

●イスラエル諜報省の機密文書とはなにかーーガザ住民のシナイ半島への強制移住のシナリオ

2023年10月30日、イスラエルのニュースサイト「シチャ・メコミット」が「政策文書:ガザの民間人口の政治的方針の選択肢」(2023年10月13日の日付と、イスラエル諜報省のロゴが付けられたヘブライ語の文書)とタイトルを付された文書を報じた。これは、政府の機密文書の流出であるという。その文書は数百ページあるが、その「要旨」の部分ということだ。

※ここでは、yahooニュース2023年11月1日、川上泰徳氏の記事「ガザ全住民をシナイ半島に移送:流出したイスラエル秘密政策文書の全貌。ネタニヤフ首相の『出口戦略』か」の記事から、当文書からの引用を引用・援用することにする。

文書はまず、「ハマスの打倒」を前提とし、ガザの住民をどのようにするかをabcの三つの案として示している。Aは、西岸の自治政府を引き入れる。Bは、ガザにハマスに替わる新たなパレスチナ人の統治を生み出す。Cは、ガザの住民をシナイ半島に避難させる、というものだ。

 AとBは、パレスチナ人の勢力を力学的に利する可能性があり、イスラエルにとってリスクがある。Cが、「イスラエルにとって前向きで、長期的に戦略的な利点を与え、実行可能な選択肢である」とする。ただし、「国際的な圧力に対して政治レベルの強い決意が求められ、特に実施の過程で米国や他の親イスラエルの国々の協力が重要となる」とする。

ここまでが、前提だ。そこで、次のような作戦が考案される。(ここでは矢印で、作戦過程を記する)

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「ハマスとの戦闘のために住民を戦闘地域から避難させる」→「イスラエルはガザの民間人をエジプト北部のシナイ半島に避難させるように動く」→「第一段階では、シナイ半島にテントの町(複数形)がつくられ」→「次の段階はガザからの住民を支援する人道地域が創設され、市内北部に再定住のための都市が建設される」→「エジプトにつくられる再定住地とガザの間に数キロの無人地帯が設けられる必要があり、ガザ住民がイスラエル国境の近くに戻って、活動したり、居住したりできないようにする」→「加えて、エジプトに近いイスラエル国境地帯に防衛のための堡塁をつくる必要がある」。

こうした作戦計画のため、次のような作戦手順を明記している。

「1・住民にハマスとの戦闘地からの避難を求める

 2・第一段階ではガザ北部に攻撃を集中させ、住民が避難して、住民のまきぞえがない地域への地上戦を可能にする。

 3・第二段階では、地上戦によって北部と周辺の境界から徐々に軍事的に制圧して、最後にはガザ地域全域を制圧し、ハマスが構築した地下トンネルも制圧する。

 4・集中的な地上作戦の期間はA案、B案よりも短くなる。そのため、イスラエル軍が北の戦線とガザの戦闘にさらされる期間も短くなる。

 5・ガザの住民が南部のラファに避難することができるように、北部から南部に浮かう道路を使用可能にしておくことが重要である」。

これがシナイ半島への強制移住の前提となるシナリオであり、現在(2024年2月12日)、ガザーラファで起こっている事態そのものだ。だがしかし、ラファは書かれているような「避難」場所ではない。★★★そもそも「避難」などという言説はイスラエル国家権力による≪詐欺師的言い繕い≫であり、避難場所ではないことは、イスラエルが一番よく知っている。パレスチナ人をパレスチナから「追放」することが目的の虐殺なのだ★★★。ラファでは、現在100万人を超える避難民が存在しているが、すでに、イスラエルの空爆などによって、この数日間だけで、数十人規模の死者がでている。今後、犠牲者・被虐殺者は、もっと増加するといわれている。

 そして機密文書では、ガザ住民がラファの境界からシナイ半島へと向かうために、「エジプトは国際法上の義務を負う」などと主張している。また「避難民」を「移民」として「受け入れに協力」する「国際社会」として、合衆国、エジプト、サウジアラビアの名を挙げている。以上だ。

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まさに、イスラエルのガザ地区強奪のための、ガザ虐殺戦争がおこなわれているのだ。「ハマスからの自衛権」とは、今や全くの口実であり、それは、イスラエルとパレスチナ解放運動との一つの戦闘局面(敵の攻勢局面)を切り取り、利用した、全面的な虐殺戦争が「ダレット計画」を土台として組み立てられた、それ、として、まさに発動したのである。そういう戦争国家として、イスラエルは、戦後一貫して存在してきたのだ。

●ガザ沖油田開発と暴力的「資本蓄積」――戦争と収奪反対、Free Palestine!

こうした、ガザ虐殺戦争において、資本主義的「価値」としてどのようなことが分析されるかが、次の課題となる。

 第一にガザ住民がいなくなった土地にイスラエルからの「入植」が表明されている。第二に、更地となったガザをイスラエルが統治することが表明されている(「パレスチナ国家」否定の言説として)。第三に、ガザ沖油田開発に、ネタニヤフは、ガザ攻撃の当初から積極的に動き出している。そして、この資本蓄積は、「資本の本源的蓄積」を内包するものだ。それは、近代資本主義発生のための一回限り(エンクロージャー囲い込みなど)のことではなく、資本主義の転換期(恐慌、戦争、植民地支配など)においては、何回も繰り返し、おこなわれるという、例証に他ならない出来事だ。まさにこの戦争が、イスラエルにとって、新たな強盗的資本蓄積の開始をしめすものとなっているのだ。

 その構図を見て行こう。(つづく)