2022年3月11日金曜日

「一帯一路」の帝国主義――米中冷戦の「初期」の分析として

ノート・ 「一帯一路」の帝国主義――米中冷戦の「初期」の分析として

                             渋谷要


最終更新 2022・04・15   20:30 


【はじめに】

本論は、資本蓄積と市場形成の様式の形態をふまえつつ、21世紀に入り、本格化してきた「米中冷戦」のあり様を、中国スターリン主義の「一帯一路」の帝国主義(この「帝国主義」という規定は後述する)と、「自由で開かれたインド・太平洋」の西側(広義)帝国主義との、帝国主義間対立との視点から、分析することを、主眼としている。その場合、後述するように中国の動きが、この対立を主導・醸成している側面が強いと考えられる。その点で、本論では、中国の「一帯一路」の分析を中心に、この「一帯一路」に対する日米印豪―欧州の「自由で開かれたインド・太平洋」との攻防を、分析しようとするものである。もっとも、これらは、開始された「米中対立」の「初期」のきわめて、資料的にも十分でない、分析にならざるをえないだろう。本論を踏まえて、続編を展開してゆきたいと考えるものである。

 また、本論著者(渋谷)は、国際社会(=ブルジョア民主主義)のルールどおり、「人権に国境はない」「人権問題を国内問題とするのは、それだけで、ファシストの所業だ」という立場である、この点、明確に明記しておく。


【序節】ウクライナは「一帯一路」で中国と緊密につながっている――中国にとって、ウクライナのNATO参加などありえない

●中国とウクライナの交易関係

 ウクライナ側の統計では2020年において輸出入とも中国が最大の相手国。中国からウクライナへの輸出品は玩具、携帯電話、パソコン、太陽光パネル・セル、工業製品、コロナワクチン、人用ワクチンなど。輸入品は鉄鉱石、トウモロコシ、植物油、穀物、油脂関係など。これは交易関係の一端だ。

 中国と欧州の「一帯一路」沿線国は、国際貨物列車「中欧班列」でつながっている。2020年7月、中国湖北省武漢市からウクライナのキエフ向けの定期直通列車が、2021年9月には、キエフ市からシャンシーション西安市に向けて直通列車がそれぞれ運航を開始した。2021年6月、インフラ建設分野での協力の深化に関する協定を締結。企業・金融機関による道路・橋・鉄道などでの協力を結んだ。

 中国の範先栄・駐ウクライナ大使は、「国家能源集団傘下の風力発電企業の龍源電力によるユージヌイ風力発電プロジェクトは、2021年に完成し稼働を開始した。そしてムイコーライウ州に建設中の風力発電所(2022年稼働予定)は、中国企業のウクライナにおける最大規模の投資プロジェクトだ」としている(新華社20221年1月14日)」(ジェトロ「ビジネス短信」「中国・ウクライナとの経済関係が緊密化 貿易は大きく増加」、中国北アジア課 2022・01・31(中井邦尚)参照引用)。

●ウクライナに展開する軍事産業と中国

 2月27日、ミャンマー軍は、ロシア支持を発表した。そのミャンマーや中国とウクライナの軍事交易を見てみよう。

「ミャンマー民主派弾圧を支えるウクライナの武器輸出――人権団体報告書(セバスチャン・ストラジオ署名)」と題する「News Week」(2021・9・14/18:13)の記事では、ミャンマー軍の防衛産業総局、ウクライナの国営防衛企業ウクロボンプロム、ミャンマーの民間武器ブローカー「ミャンマー・ケミカル&マシナリー」(MCM)等の合弁会社の軍事産業上のつながりが提示されている。アウンフラインウーという人物がこのMCMのトップで、武器取引の仲介役として展開しており、2017年1月にはウクライナの在ミャンマー名誉領事に任命されているとの報告文書が紹介されている。また例えば、ウクライナは中国と軍事生産でも連携している。例えば中国初の空母「遼寧」はもともと旧ソ連製のものをウクライナから購入したものだ。また、世界最大の揚陸艇『ズーブル』も、クリミア半島の造船所でウクライナが作って中国に供与したものだ。こうした関係にあるウクライナがNATOに入ることは、中国にとっては「失地」であり、絶対に避けなければならないことなのである。

 だから中国は「ウクライナへの人道支援」などといいだしているのでもある。まさにNATOと中・ロとの「ウクライナ争闘戦」だ。

 ウクライナにおいても、このように展開してきた「一帯一路」の帝国主義的現実を分析していこう。

【第一節】 香港民主化運動弾圧と「一帯一路」

●香港安全法をめぐって

  二〇二〇年六月、スイスで国連人権理事会が開催された。そこでは中国・北京政府が香港に設置しようとしている「香港国家安全維持法」導入(※二〇二〇年六月三〇日施行)の賛否が採決された。もとより、かかる「安全法」は、香港民主化運動を弾圧し、香港に戒厳体制を施行するものにほかならない。これに「反対」は、二七か国。「賛成」は五三か国であった。

 安全法に賛成した五三か国の国名は次のとうりだ。

「中国、朝鮮、カンボジア、スリランカ、ネパール、パキスタン、ミャンマー、ラオス」(以上がアジア)。「アンティグア・バーブーダ、キューバ、スリナム、ドミニカ、ニカラグア、ベネズエラ」(以上が中南米)。「アラブ首長国連邦、イエメン、イラク、イラン、オマーン、クウェート、サウジアラビア、シリア、バーレーン、レバノン、パレスチナ」(以上が中東)。「エジプト、エリトリア、ガボン、カメル―ン、ガンビア、ギニア、ギニアピサウ、コモロ、コンゴ共和国、ザンビア、シエラレオネ、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、赤道ギニア、ソマリア、中央アフリカ、トーゴ、ニジェール、ブルンジ、南スーダン、モザンビーク、モーリタニア、モロッコ、レソト」(以上アフリカ)。「パプアニューギニア」(以上、大洋州)。「タジキスタン、ベラルーシ」(以上、欧州)。

 こうした国家群は、これから見るように中国の「一帯一路」の国際経済圏構想への参加国である。

  「反対」は、二七か国。このとき、アメリカ合衆国は「人権理事会」を脱退(二〇一八年より)しており、韓国は「棄権」している。27か国の共同声明は、「香港国家安全維持法」は「一国二制度」を揺るがす。「人権の保障に影響を与える」。「国連に登録され、法的拘束力を持った条約である中英共同宣言(一九八四年)が香港の『高度な自治』や、報道・集会・結社等の自由や権利を保障している」などと表明するものだった。

二七か国の国名は次のとうりだ。

「日本」(以上、アジア)。「オーストラリア、ニュージーランド、パラオ、マーシャル」(以上、大洋州)。「カナダ」(以上、北米)。「ベリーズ」(以上、中南米)。「アイスランド、アイルランド、イギリス、エストニア、オーストリア、オランダ、スイス、スウェーデン、スロバキア、スロベニア、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、フランス、ベルギー、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク」(以上、欧州)。

こうした賛否の「世界地図」は、明確に今日、先に示した「帝国主義間対立」の様相とかかわっている。

まさにこうした現実に対して、次のような分析がある。

「一帯一路では、沿線国に資金を貸し付けて道路や港湾、鉄道、ダムなどを整備するとともに、人・物の交流を深めて『親中経済圏』を構築する。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は加盟国・地域が一〇二(承認ベース)あり、ここでも南米やアフリカなどが半数を占める。これに対し、日米主導のアジア開発銀行(ADB)は六八にとどまっている。さらに、政治宣伝も兼ねた新型コロナウイルス対策である「マスク外交」により中国が医療支援したのは計一五〇か国に及ぶ」(西岡省二「決して忘れてはならない『中国の香港弾圧を支持した53か国』の名前と場所」、yahooニュース、2020年9月16日配信)。

 こうした、国際社会の現実が、「一帯一路」と「自由で開かれたインド・太平洋」という帝国主義間対立の、攻防の現実、「世界戦略地図」を象徴する出来事となっているのである。

●香港安全法の内容とは何か――それは、欧米日帝国主義との中国全体主義の争闘戦の開戦の表明だった

「中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法」(香港安全法と略す)

第三章犯罪行為および処罰

第一節国家分裂罪

第二十条 ……(1)「香港特別行政区または中華人民共和国のその他すべての地域を中華人民共和国から切り離そうとすること」。(2)(これらの地域の)「法的地位を違法に改変しようとすること」。(3)(これらの地域の地位を)「外国に帰属させようとすること」。

「首謀者」や重大犯罪者は「無期懲役もしくは十年以上の有期刑」などがさだめられている。

また第二十一条では「扇動・協助・教唆・金銭その他の財産での支援」が、五年以上十年以下の有期刑等々になると規定している。

第二節 転覆国家政権罪

第二十二条では「いかなる人も、武力・武力を用いた威嚇行為・またはその他の違法な手段をもって、いかに定める国家政権転覆の一つでも組織したり画策したり実施したり参加したりした場合には、犯罪とされる」とし、いくつかの規定を設けている。とくにその(4)は、香港の「政権機関の職務を履行するための場所および設備を、正常な職務の履行が不可能なほどに攻撃または破壊すること」としている。

罰則として、前条と同様の罰則が規定されている。

さらに「第三節 テロ活動罪」とつづいている。

また第四節「外国または境外の勢力と結託して国家安全に危害を加える罪」が規定されている。その29条の(5)では「各種の違法な方法を通じて、香港特別行政区住民の、中央人民政府または香港特別行政区政府に対する恨みを引き起こし、重大な悪い結果を引き起こす可能性のある行為」とある。「恨み」ってなんだこれ。このような完全に100%権力者の恣意的な乱用が、規定されているのが、この法なのである。これが「三年以上十年以下の有期刑」等とされているのである。

さらに「第五節 その他の処罰規定」がしめされる。

第三十一条「会社・団体などの法人あるいは法人でない組織が本法に定める犯罪を実施した場合には、組織として取り扱い当該組織に罰金を科す」。また「刑事処罰を受けた場合には、責任を持って業務の一時停止を命令、または営業の許可証を取り下げる」。

第三十四条「香港特別区行政区の永久性居民の身分を持っていない人が本法に規定する犯罪を実施した場合にh、独立的にまたは付加的に国外追放を適用することができる」。また「本法の規定に違反した場合、いかなる理由でもそれに対して刑事責任を追及しなかった場青でも、国外追放できる」。

第三十七条「香港特別行政区の永久性居民または(香港内で)設立された会社・団体などの法人あるいは非法人組織が香港特別行政区以外で本法に規定する犯罪を実施した場合、本法を適用する」。

第三十八条「香港特別行政区の永久性居民の身分がない人が香港特別行政区以外で香港特別行政区を的確に狙って本法に対する犯罪を実施した場合には、本法を適用する」等と規定している。

 また、第41条に、非公開・秘密裁判の規定がある。「裁判は公開でなければならない。国家秘密・公共秩序などの状況に及ぶ公開しない方がいい審理の時には、報道関係者や聴衆が全部または一部の審理を傍聴することを禁止することができるが、判決結果は一律に公開・公表しなければならない」。こうして、権力者が好きなように、裁判を操り操作・誘導できるものとなっている。

 まさに、中国共産党権力が必要と認識した弾圧は、どんなことでもできることになる。なぜなら、具体的にどんなものが犯罪に「なるのか」、「ならないのか」は、これらの条文からは、明確に認識できないからだ。国家権力が決めるということだ。

 「あいつらが国家を転覆しようとしている」と権力が決めてしまえば平和デモでも、言論活動でも、そういう合法的なものでも、たとえば、国家転覆罪になってしまう。

 そして第三十八条などは、まったく香港に一回も行ったことがない外国人が、「香港民主化運動を支持する。弾圧をやめろ」と中国の国外で言っただけで、例えば国家転覆罪の「協助」や「教唆」になってしまう可能性も、この条文文章の構成からは、否定できないだろう。

 また、この条項は、「一帯一路」に敵対すると北京の権力者たちが規定した人・集団・会社を香港安全法で粉砕するという図式を含有するものだともいえるだろう。つまり、「一帯一路」に敵対する民間資本勢力との<資本間競争>に適用できるという含意があるという分析視角が成立すると、見なければならない。

  元より、香港安全法は、2019年11月、香港の地方議会に当たる区議会選挙で、民主派は議席の8割を獲得した。これに対する反動として、中国共産党が仕組んだのがこの法律だ。2020年6月に成立した。それ以降、この法に基づく弾圧が展開された。

 そして2021年香港の立法会(議会)選挙では、90議席の内、北京派(「親中派」という言葉があるが、本論論者(渋谷)は北京の共産党スターリニスト指導部の系統という意味で北京派とする)がほぼ議席を独占することになる。それはこういう仕組だ。それまでの議席数70を90にし、選挙委員会枠を新設。「選挙委員」が議席を選出する枠だ。その議席は40議席だ。その選挙委員は、ほぼ北京派である。さらに、民主派の優位な直接選挙枠は従来の35議席から20議席に縮小された。また、残りの30議席は業界別の間接選挙枠となっている。 

 こうした選挙の前提となっていることだが、選挙管理委員会当局から事前審査で、「愛国者」と認められないものは、立候補できないことにされた。さらにそのため、「選挙委員」10人から、推薦を受ける義務がある。まさに、これは、民主主義を破壊する専制政治の管理「選挙」だ。

  こういうのを、権威主義国家(善悪を国家権力がすべて決める。例えば「愛国」の価値観の内容を中国共産党がすべて決める、それは「愛国」ではないと共産党が言えば「亡国」にさえなる)のファシズム立法というのだ。なにが「愛国」かなどは、多様な考えがあるだろうし、<それ以上に>、例えば「愛国」を否定する人も、<それ以上・以外>に<無限に>多様な人々が、自由に立候補できるのが、自由と民主主義でなければならない。

 まさにこの法の施行以降、香港の議会でかなりの勢力を占めていた民主派は、ことごとく、議会から締め出されてしまった。そういうのを、民主主義の否定・全体主義国家というのである。絶対に許容できない。

 では、こういう党独裁の国家権力がめざす「一帯一路」とは何か。かなり広い、ウィンドをあけるところから、始めよう。

【第二節】「一帯一路」の版図

ウィキペディアを検索すれば、比較的詳しい構図をみることができる。

「一帯一路」とは、二〇一四年に北京市で開催された「アジア太平洋経済協力(APEC)」の首脳会議で、当時の習近平「総書記」が提唱したものである。「一帯(陸路)」は、中国→ユーラシア大陸→欧州(「シルクロード経済ベルト」)。「一路(海路)」は、中国沿岸部→東南アジア・南アジア→アラビア半島→アフリカ東岸(「二一世紀海上シルクロード」)。正式名称は「シルクロード経済ベルトと二一世紀海洋シルクロード」だ。

 また、「氷上シルクロード(北極海航路)」としう第三のルートがある。ロシアの大統領プーチンが、一帯一路と北極海航路の結合として提起したものであり、欧州→ロシア→日本→中国というルート設定だ。例えば日本では商船三井が中国企業と提携し北極海航路をつうじてロシアの液化天然ガス(火力発電の燃料)を運搬している。また、中南米諸国とは、「太平洋海上シルクロード」として、南米の鉄道網などの建設に係るとされるものだ。

また、こういう分析もある。

「『一帯一路』に、もはや石油だけでは食っていけない中東諸国がその解決策の一つとして乗りかかろうという理由がある。」として「一帯一路」での「北緯」のルート、大陸を横断するルート(中国→モンゴル→ロシア→欧州)では、「中国→カザフスタン→ポーランド→ドイツ→フランスへと、物流にかかる時間がこれまでの最長六〇日から一八日までに短縮される」という。

「一方の南緯は、中国からウズベキスタン、タジキスタン、イラン、イラク、トルコを結ぶ。こちらは石油や天然ガスといった重量の大きな貨物の輸送ルートとなる予定だ。いわゆる『マラッカ・ジレンマ』(中国のエネルギーや物流にとって死活的意味を持つマラッカ海峡の安全航路がアメリカなどに事実上管理されている現状のこと)を回避でき、アメリカ海軍の影響が及ばないルートだと言える。これが実現すれば、物流コストを現在の七割水準まで下げることができるとされている」。だが、イランやイラクは、アメリカの経済制裁や治安の悪化などで、計画は進まない。「その代わりに二〇二〇年十二月八日、トルコのイスタンブールからジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンを横断して中国の西安まで結ぶ鉄道貨物輸送ルートが開通した。これによい、一か月かかっていた輸送機関が12日間に短縮された」。

こうしたことに対し、イランは、「一帯一路」を積極的に利用しようとしていると論者は分析している。簡単に言えば、一帯一路のルートを、イランの思惑で延長させ、ペルシャ湾で一帯一路の様々なルート(陸路と南路)をつないだり、地中海とパイプラインで連接したりする人工のラインを作り出すことを企図しているというのである。

これには、アメリカ合衆国が管理するスエズ運河の通行料やタンカー規模の限界などの問題が直接にかかわっている。

「スエズ運河の通航料は高い。一艘一回5千万円はかかる。しかも運河の通航路の深さが最大二〇メートルしかなく、それいじょうのスーパータンカーが通れない。…ゆえに物流にコスト高の原因となっている。そのため、イラクのファオの港に大量のスーパータンカーを寄港できるようにし、パイプラインが地中海にまで延びれば、輸送コストも日数も大幅に減らすことができる。またスエズ運河経由よりもさらに安くなる。

ここが大きなポイントなのだ。例えばイスラエルと国交を正常化させたアラブ首長国連邦(UAE)は、スエズ運河ではなく一九六〇年代にイスラエルの紅海側・エイラートの港と地中海のアシュケロン間に敷かれたパイプラインを復活・利用することを決めている」(アビール・アル・サマライ(ハット研究所所長)「中東諸国が中国の『一帯一路』を利用する理由 オイルマネー以外の収入を求め中国に接近」(「東洋経済」オンライン 二〇二一年二月四日)など。

こうした、地域経済の矛盾を受け取りながら、中国の「一帯一路」は、全世界にそのグローバリズムを組織しようとしている。ここでは、その規模の大きさと、いろいろな地域利害や企業利害をうまく取り込みながら、中国が世界化しているさまを確認したいと思う。

 もはや「中国社会主義=一国社会主義=『民族』共産主義」という意味でのスターリン主義という定義は、遠い昔の話なのだ。完全に「帝国主義化」した、膨張主義・覇権主義となり、欧米日の帝国主義の世界秩序に対して、帝国主義的権益の「再分割」を表明し、実践するものとなっている。

では、そこで、どのような、帝国主義的運営の「手法」が駆使されているか。一つ一つの事例によって、それを見ていくことにしよう。

【第三節】「一帯一路」の開発帝国主義――「債務の罠」=「租借地」政策など

●「一帯一路」の今日版「租借地」政策――スリランカの場合

有名な問題となっているものを、まず最初に見ていこう。

 スリランカ政府は二〇一七年七月、中国の援助でスリランカ南部のハンバントタ港を中国国有企業にひきわたした。そこには中国の国旗がかかげられている。スリランカ国営企業と中国国有企業はスリランカ側が中国に港の管理会社の株式70%を99年間譲渡することになった。この港は、親中派のラジャバクサ政権時代に着工したが、その建設費約一三億ドルの大半は中国が融資したものだ。だが、最高六・三%の高金利という債務がスリランカの財政にとって負担となり、中国にリースの形で引き渡された。この譲渡の期間は九九年間だ。「運営権」は中国企業に譲渡される。つまり、中国の管理統制下に入っている。20世紀に行われていた植民地・租借地政策の今日版だ。

「借金漬けの事情(小見出し) スリランカの名目GDP(2017年)は871億ドルである。それに対して政府の対外債務は310億ドルになっている。ちなみにスリランカが2008年から2018年の間に中国から借り入れたのは72億ドルである。これをスリランカは返済することができないでいる。なぜか。一つには、中国融資の条件が他の国や機関より厳しいからである。金利が2%のものもあるが、なかには6・5%に設定されているものもある。据え置き期間も短い。二つ目には、融資を受けて作られたインフラが利益を生んでいないことがある。コロンボ首都圏とカトナヤケ空港を結ぶ高速道路は、確かに役に立っている。しかし、電力事情を一気に解消すると期待されていたノロッチョライ発電所(8億9000万ドル)は故障を繰り返している。マッタラ空港(1億8000万ドル)は世界一ガラガラの空港と言われている。ハンバントタ港は2017年の一年間の寄港船数が251そうと惨憺たるありさまだった。これらの操業による利益を返済に充てることは全くできないどころか、利益を上げているコロンボ港などの稼ぎで赤字を補填している状態だったのである。スリランカ側は中国に返済の延期などを求めたが、中国側は聞き入れなかった」。

 さらに、このコロンボ周辺では、中国による周辺の開発事業が展開しているとレポートはつづられてゆく。「さらに、コロンボの街中には中国の建設するビルがそこかしこにある。中国人労働者向けの、漢字が書かれた看板があるので一目瞭然だ。これらのプロジェクトに直接従事するスリランカ人は決して多くないのかもしれない。しかし、日々大きくなってゆくビル、埋め立ての進む現場に接すると、訪れたこともない、遠いハンバントタの港がかすんで見えても仕方ない」(IDE-JETRO ジェトロ 「IDEスクエア」2018年10月 新井悦代「(アジアに浸透する中国)99年租借地となっても中国を頼るスリランカ」)。

●中国企業によるオーストラリアでの99年賃貸し買収

 これと同様の事態は、オーストラリアなどの先進国でも起こっている。2019年、オーストラリアのケスウィック島を、「チャイナ・ブルーム」という中国企業が買収した。国立公園に指定された島の80%を除く20%を、島が所属するクイーンズランド修に99年の長期賃貸するというものだ。中国企業は、住民や観光客を立ち入り禁止にし、海岸整備事業を強行。その結果、ウミガメの生息地も破壊してしまった。中国の富裕層が独占するリゾートとしているのだ。そのほかにも、セントビーンズ島など、さまざまな島が、買い取られたという状況だ。

また、2015年には、中国の「嵐橋集団」という企業が、北部準州政府とオーストラリアの北部ダーウィンの商業港を99年賃貸する契約を結んだ。が、オーストラリア政府は「安全保障上のリスク」があるとし、2018年に同国で成立した「重要インフラ保安法」との関係などでの「契約見直し」に入ったという事態が生起した。このように、中国の「一帯一路」の帝国主義は、各国に中国の飛び地を作り、そこを「拠点」に経済侵出を設計している。また、それらの「拠点」は軍事転用可能な機能をもつものという、少なくとも、可能性をもつものだ。その事例を、次のアフリカに見ていこう。

●アフリカにおける中国の押し売り的・開発帝国主義的展開

 米中の経済的覇権競争がアフリカで激化している。そこでは、中国の押し売りともいえる開発事業が進めれている。

「巨大経済圏構想「一帯一路」や新型コロナウイルス対策などで、アフリカ支援を強める中国。しかし、身の丈に合わない巨大事業は地元の財政負担が重く、中止や融資拒否の動きも少なくない。その一方、米国企業が中国に対抗するスーパーハイウェー建設をすすめるなど、米中の覇権争いはアフリカにも及ぶ」。

「インド洋に面したケニアの港町、モンパサ。この街からゾウや牛が草をはむサバンナを横切り、内陸のナイロビまでの約480キロの区間を列車が走っている。2017年開業の鉄道は第一期分として中国がケニアに約3200億円を融資し、中国企業が建設した。今年(2020年――引用者・渋谷)一月に列車に乗って視察した中国の王外相は『大成功だ。中国とアフリカのウィンウィンの関係の手本で、「一帯一路」の成果でもある』と自賛した。……車両にはケニアと中国国旗が掲げられている。『中国の基準、技術、装備を採用した』と中国メディアがアピールする通り、モンパサやナイロビには巨大な駅とターミナルがつくられ、チケット売り場や電光掲示板も中国そっくり。運転士も中国人、列車の運行管理も中国企業が担う。

 ただ、ナイロビとモンパサを結ぶ旅客列車は、新型コロナ禍の前でも一日に2往復だけだ。ケニアの外交筋は「中国などからの輸入品をモンパサから運ぶ往路はまだ貨物輸送の需要があるが、ケニアには輸出品がないため復路のコンテナはガラガラ」と明かす。ケニアのビジネス・デイリー紙によると、開業2年目の旅客売り上げは17億6千万シリング(約17億6千万円)、貨物収入は当初の計画より65%低い80億シリング程度にとどまったとみられる。ケニア側は中国の運営会社に年180億シリングを支払わねばならないが、運営費すらまかなえていない。

 アフリカ側から事業を断る例も少なくない。タンザニアのマグフリ大統領は昨年(2019年――引用者・渋谷)6月、中国と合意していた一兆円規模のバガモヨ港の建設計画を中断した。習近平(シーチンピン)国家主席が13年の就任後初の外遊で打ち出した看板事業だったが、『33年間の抵当権や99年間のリース権などを求めてきた。正気でない人間にしか受け入れられない条件だった』と地元メディアはぶちまけた。

 また、西アフリカのシエラレオネも18年、中国から融資を受けて建設予定だった新空港計画を『不必要だ』としてキャンセルした。港や鉄道、空港などのインフラ投資を中心とする従来型の一帯一路事業の多くは、採算割れや過剰債務などの現実に直面している」。

これに対して、「ケニアでは、中国に米国が対抗する動きもある。モンパサとナイロビを結ぶ鉄道に沿う同じ区間を、米国主導で『スーパーハイウェー』を建設する計画が浮上しているのだ」(朝日新聞2020年8月4日5時00分。「(世界初2020)    「一帯一路」アフリカで逆風 中国の巨大事業、中止や融資拒否も」(モンパサ=奥寺淳))。等々である。

 これらの「99年リース」の政策は、かつて、20世紀、「租借地」の名称で知られた植民地主義の政策であり、中国に対するイギリスの九竜半島の租借などが有名だ。大日本帝国は、1905年から中国の遼東半島南部(名称は「関東州」)を「99年間」の租借地とした。管理支配権の獲得などとしては、それと同様の植民地政策を中国スターリン主義は展開しているのである。

●「一帯一路」の開発事業と軍事基地

以下は「アフリカの角」とよばれる地域における「一帯一路」の展開の中での話だ。

 アフリカのジプチは、「一帯一路」の開発事業の一つの重要拠点となっているところだ。

例えば「総面積48平方キロメートル(羽田空港の四倍超)、35億ドル(約3900億円)もの巨費を投じて中国の企業群が建設、そして運営をおこな予定なのがアフリカ最大の『ジプチ国際自由貿易区』である。……黄色く塗られた正面ゲートにはジプチ国旗と中国国旗がたなびいていた。そのゲートの左側には、ほぼ完成しているホテルがその威容を誇っていた。まだほとんど手つかずといっていいこの自由貿易ゾーンだが、その規模は想像を絶する。車で走ってみれば、その地区全体が地平線のようだ」。

「エチオピアに延びる幹線道路は、両国を行き交う大型トラック、タンクローリーなどがひっきりなしに走っている。この道はジプチの生命線だ。電力はエチオピアから送られ、水もエチオピアに依存している。……同じように中国の投資はジプチにとって欠かせないものになりつつある。……(中国の投資はこの自由貿易ゾーンにとどまらない)……この自由貿易ゾーンから連なるジプチの優良な湾岸地域は中国資本によって、巨大開発が急ピッチで進められている。『中国公建』……工事現場は建設を請け負っている中国の企業群の名前で埋め尽くされている。まさに”すべて中国のもの”なのである」。

そして、軍事基地だ。

「自由貿易ゾーンに並ぶように一昨年(2017年)、中国が建設した中国初の海外での中国軍基地が望まれる。万里の長城のような外壁が延々と続き、中の様子はうかがい知ることはできない。一帯一路という途上国にとっての甘い”蜜”は、その国のインフラから、軍事転用可能なインフラへの投資から始める。ましてや、ジプチなどは、自由貿易ゾーンの中に、中国軍基地もふくまれているのだ。……その基地の近くには石油備蓄基地も出来ている。……この地域はさながら中国租界の様相。ジプチから隔離した独立国家のようでもある」。

だが反面「巨額な債務が中国の動きを始めている。それは2・2兆円もの鉄道建設を白紙に戻したマレーシア、誰も利用しない空港、高速道路を作り、残ったのは巨額の債務だけとなったスリランカ、一帯一路のモデル国家といわれたエチオピアもGDPの59%という債務に喘いでいる。エチオピアの姿が、明日のジプチの姿ではないと誰が言えるだろうか」(児玉博 (ジャーナリスト)「中国軍初の海外基地は鉄道・港湾建設の見返りか?――「一帯一路」の衝撃・中国に飲み込まれるアフリカ・ジプチ(後編)」、2019/02/25、「WEDGE Infinity」Wedge reportより引用)と述べている。

(※ 中国租界……「中国の開港都市で、外国人がその居留地区の行政・警察を管理する組織、およびその地域。1845年イギリスが上海に創設、一時は8ヵ国27か所に及んだ。第二次大戦中に消滅」(広辞苑)。大日本帝国は「上海共同租界」に「日本租界」をつくり日本人10万人が居住。また天津などに複数のところに租界をもっていた)。

●スエズ再開発とアフリカ「一帯一路」戦略

エジプトを中心とした「一帯一路」の展開では次のようである。

「中国の習近平国家主席が主導する『一帯一路』は驚異的なスピードと規模で建設が進む。対米貿易戦争が激化する中、海のシルクロードは中東・アフリカ、欧州へと延びるチョークポイント(水上の要塞)のスエズ運河、地中海を抑えようとしている」。

「政変続きのエジプトは改革に取り組む見返りに、2016年、国際通貨基金(IMF)から120億ドル(約1兆3200億円)の融資を受けることで合意した。『エジプトは1956年、アラブの中では初めて国交を樹立した国。習主席になってから両国関係は一段と強化された。『債務の罠』に陥るスリランカやアフリカ諸国ほどエジプトは困っておらず、慎重に投資を受け入れている』。シンクタンク、エジプト外交評議会(ECFR)事務局長のヒシャム・エルジメイティ元駐日エジプト大使は語る。 

2018年9月、シシ大統領と習主席は『新首都』と高速道路、スエズ経済貿易協力区での製油所開発、石炭火力・水力発電所、送電網など総額219億ドル(約2兆4000億円)のメガプロジェクトで署名した。IMFからの融資を上回る規模だ。この五年間では中国の投資が一番大きくなったという報道もある」。

 それはまたシシ大統領と習主席にとって、イスラム過激派を抑えこむということで、共通する課題をもっていることからも相互に重要なものと認識されているという。「エジプトが神経を尖らせるのはイスラム過激派への資金提供で、『シシ政権はテロ資金取締法をつくり、テロに関係していると判断すれば没収できるようになった』とカイロ・アメリカン大学のアミ―・オースティン・ホルムズ准教授は説明する」と。

 記事は最後に次のように締めくくられている。「中国の港湾投資に詳しいオランダのクリンゲンダール国際関係研究所のフランス=ポール・ファン・デア・パッテン上級研究員はこう語る。

『世界における中国の港湾投資のスピードと規模は凄まじい。ギリシャのピレウス港では中国の軍事的リスクより中国製偽造品の増加が現実的な問題になっている。欧米は投資の恩恵を生かすためにも中国の独占支配や軍事的・地政学的な紛争が起こらないよう警戒が必要だ』

 中国の『一帯一路』は南シナ海からスエズ運河、地中海へと巨大ヘビ・アナコンダのように延びる。アナコンダは中の獲物を囲い込むように急速に成長を続けている」と分析している(木村正人(国際ジャーナリスト)「水上の要塞・スエズ再開発に中国が投じる巨額マネー——一帯一路の衝撃、赤く染まる『海のシルクロード』2019/03/01」、WEDGE Infinity、wedge REPORT)。


そこで、次に、地中海のイタリアでの「一帯一路」の展開を見ていこう。

【第四節】イタリアと「一帯一路」――イタリア側からの関係見直しか

●イタリアと「一帯一路」の選択の可否について

イタリアは、中国・北京中南海指導部の「一帯一路」構想において、インド洋→中東→欧州へと展開する「海のシルクロード」の終着点のようである。「一帯一路」については、本論でものべているように、スリランカの事例を典型として「債務の罠」をしかけられ、借金漬けにされたあげく、借金対象を「租借地」などとされるなどが発生しており、「一帯一路」から距離をとり始めた国家もあらわれてきた最中のことである。

イタリアのドラギ首相は13日(2021年6月)「G7サミット閉幕後記者会見し、中国について「多国間のルールを守らない専制国家であり、民主主義国家と同じ世界観を共有していない」と断じた。

『中国と協力する必要があるが、共有できないもの、受け入れられないものについては率直に話し合わなければならない』。」

「イタリアはドラギ氏が首相に就任する前の2019年、G7参加国として初めて中国の広域経済圏構想『一帯一路』に参画する覚書を交わした。中国によるインフラ投資をテコに経済を活性化さえたい狙いだったが、ドラギ氏は『具体的な合意につては慎重に検討していく』と述べ、見直しを含めて考えていくことを明らかにした」(2021年6・14「日本経済新聞」)。

●イタリア―欧州における「一帯一路」港湾事業の展開

以上のイタリアの判断に先立つこと、2019年、中国企業はイタリアの港湾事業に参画した。

「習主席は同23日に、イタリアのコンテ首相とローマで会談を行い、両国は『一帯一路』構想に関する覚書を締結した。

中国外交部によると、この覚書を契機に、『一帯一路』構想と、イタリアの『北部の港建設』『イタリア投資計画』の結合を強化し、各分野での互恵協力を推進するとしている。……宇宙技術、インフラ建設、交通、環境、エネルギーなどの優先分野で、早期に多くの成果を上げるとした」(「イタリアが『一帯一路』構想に関する覚書に署名 主要国に広がる『一帯一路』」(2019年6月27日、JETRO 地域・分析レポート 楢橋広基)。

 この「一帯一路」のイタリアとの協定(2019年)の前から、例えば「中国遠洋運輸集団(コスコ・ショッピング・グループ)」が、港湾投資事業を欧州で展開してきた。「欧州におけるコスコの港湾投資はギリシャのほか、ベルギー・ゼーブルッヘ港(持ち株比率85%)、アントワープ港(25%)、スペイン・バレンシア港(51%)、ビルバオ港(40%)、伊ヴァ―ド・リーグレ港(40%)、オランダ・ロッテルダム港(35%)に広がる。港湾事業会社の招商局港口控股や青島港国際がこれに続く」(「欧州玄関港を支配する中国、トロイの木馬と化すギリシャーー一帯一路の衝撃、赤く染まる『海のシルクロード』」、2019/03/06、木村正人(国際ジャーナリスト)、「WEDGE Infinity」、wedge report)。

以上、見てきたことで、すでに明らかだろう。こうして、「一帯一路」は、西側経済秩序=世界貿易機関(WTO)に対抗する国際秩序として、世界市場の「再分割」を主張しているのだ。それは北京・中南海のスターリン主義指導部にとって、まぎれもなく「勢力圏」の主張をなさんとするもの以外ではない。

こうした「一帯一路」の、前段から今日まで、中国がいわゆる「南シナ海」(日本名)で、行ってきた、国境紛争をみることにしよう。その場合の前提だが、「列島線」問題が、まず、見てくべきこととしてあるだろう。

【第6節】「一帯一路」帝国主義の先鋒としての南シナ海侵出

●中国の太平洋戦略地図――「列島線」問題

「南シナ海争闘戦」などとの関係で、中国の戦略を大きく規定してきた、「戦略地図」を見ていこう。中国が定めた「自国の領海」とする「面」の設定の問題にほかならない。この領有権の主張は、対米軍事防衛のためであるとと同時に、アメリカ合衆国に対する太平洋権益の中国による「再分割」の主張である。

 「そこには台湾、尖閣諸島(魚釣島)、澎湖諸島、東沙諸島、西沙諸島(ベトナムも領有権を主張―引用者)、南沙諸島(中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、台湾が岩礁などを実効支配。ブルネイも領有権を主張ー引用者)など、他国が領有権を主張する島々が多数含まれています。その島々を線でつないだものが、中国が対米防衛のために制海権確保を目標とする第一列島線(九段線)であり、その形状から『中国の赤い舌』と呼ばれています」。「また、中国は軍事的防衛ラインとして、小笠原諸島からグアム、サイパン、、マリアナ諸島などを結ぶ第二列島線も設定しました」。「2017年には、習近平がトランプ大統領(当時ー引用者)に。『太平洋には米中両国を受け入れる十分な空間がある』とかたりました。中国は本気で、アメリカとの太平洋分割を視野に入れていたのかもしれません」(佐藤優『佐藤優の地政学入門』、2022年、学研プラス。50~51頁)。

 これらの計画は、周辺諸国との矛盾・軋轢・緊張・摩擦・紛争などを生み出しており、また、日米・ASEAN諸国などの「自由で開かれたインド・太平洋」を表明・支持する諸国からは、中国の一方的な領土領海の現状変更策動だとする多くの問題を生み出す原因になっている。

●中国の覇権主義的な海洋権益の主張

「中国が南シナ海の領有権に言及しはじめたのは意外と古く、1950年ころから『九段線』という独自の境界線を設定し、南シナ海のほぼ全域に主権や権益が及ぶと主張してきた。

 これに対抗しているのがベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾だ。これらの国・地域は中国同様に自らの領有権を訴え、一歩も引こうとしない。

 ベトナムは1974年と1988年に中国と武力衝突している。さらに2012年にベトナムが南沙諸島と西沙諸島を自国領とする海洋法を成立させると、中国も南海省に南沙諸島と西沙諸島を含む『三沙市』を設置するなど、両国はさまざまな駆け引きを繰り広げているのだ。

 そうしたなか、2016年にオランダ・ハーグの仲裁裁判所が重要な決定を下した。仲裁裁判所は、1994年に発効した『国連海洋法条約』に基づき、中国の南シナ海における主権主張を退けた判断をしたのである。

ところが中国は、仲裁裁判所の判決に従おうとしない。それどころか、判決を”紙くず”呼ばわりして無視したうえ、岩礁をうめたててつくった人工島に滑走路やレーダーなどを建設しはじめたのである。

 これは明らかに軍事施設で、中国の海洋進出を警戒するアメリカを刺激することになった。……2020年には中国の巡視船がベトナムの漁船に体当たりして沈没させたり、マレーシアの国営石油会社が資源開発する海域に自国の調査船を派遣するなど、挑発的な動きがますます目立つようになった。……2021年になってからも、中国の挑発行為は止まらない。フィリピンが南沙諸島で実効支配する島の軍事拠点化計画を進めていると、3月に200艘以上の中国船団が出現し、長期停泊を続けた。その船団のなかには中国海軍の軍艦も含まれていたという」(「中国が『南シナ海領有権』で米国に一歩も引かない理由とは」。DIAMOND online、2021。10.23.04:55。『世界の紛争地図 すごい読み方』、ライフサイエンス)。

 ●中国の覇権主義的海洋侵出

「中国が南シナ海で5月1日から独自に禁漁期を設定し、漁船の取り締まりを強化している。領有権を争う沿岸国のフィリピンやベトナムが反発。中国が海警局に武器使用を認めた海警法を2月に施行したこともあり、緊張の高まりが懸念される。新華社電によると中国海警局は4月30日、禁漁期の警備方針を宣言した。政府は取り締まりを活動を『亮剣2021』と名付け、外国漁船を念頭に『漁業行為の侵害は容赦なくたたく』とけん制した。フィリピン外務省は声明で主権侵害をやめるよう求めた。ベトナム外務省も『一方的な決定に反対し、断固として拒否する』と反発した」(「中国、南シナ海で独自に禁漁措置 フィリピン、ベトナム反発」、共同通信社、2021/05/2517:17)。

●南シナ海争闘戦

「南シナ海のパラセル(西沙)諸島の領有権をめぐり、中国とベトナムの緊張が再び高まっている。同諸島の周辺海域で9月11日にベトナム船が中国当局に拿捕され、乗組員9人が拘束される事件が発生。ベトナム側は抗議を続けているが、乗組員の解法には至っていないためだ。

南シナ海ではパラセル諸島やスプラトリー(南沙)小党の領有をめぐり、海洋権益の拡大を目指す姿勢を強める中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部の国が対立している。特に中国当局によるベトナム船の拿捕はこのところ頻発して」いる。「ベトナム当局者によると、中国側は『漁船が爆発物を使った漁をしていた』との理由で漁船所有者に罰金の支払いを求め、払えば乗組員と船を解放すると伝えた。ベトナム側は『漁船はベトナム領海内で通常の漁をしていた』とし、乗組員9人の即時無条件の解放を要求。同当局者は、中国側から当初受け取っていた報告書には漁船が爆発物を積載していたことに触れていなかった点を挙げ、罰金の支払い命令に対し、『理性を失っている』と批判したという」(「南シナ海 続く緊張  ベトナム船 中国、拘束一か月(2010年10月09日、朝日新聞、朝刊)」)。

そして、このような海域やASEAN諸国の領域で、合衆国と中国双方は、対抗的な軍事演習を展開してきた。最近では、2022年3月に、中国がベトナム沖の南シナ海(演習海域は一部ベトナムの排他的経済水域(EEZ)に入っているといわれる)で展開した。また合衆国h、2022年2月、タイで「コブラ・ゴールド」というアジア最大規模の軍事演習が、展開された。日本の自衛隊も参加した。

こうした政治経済地図において、このかんとくに、「一帯一路」におけるミャンマーの港湾開発が、アジアにおける「一帯一路」のひとつの核心課題として注目されている。それは、マラッカ海峡を経由することなく、インド洋に原油などを運べることが最大の利点となっているからだ。だから、ミャンマーの政権とは「一帯一路」の権益でつながる必要がある。それが非道な軍事クーデター政権であっても変わらず政策続行しているのが現実だ。 

●「一帯一路」と軍事クーデター国家の同盟……ミャンマー港湾開発

  ミャンマー西部・ラカイン州チャオピュー(インド洋に面した港町)での港湾開発での話だ。チャオピューは中国向けの原油と天然ガスのパイプラインの起点だ。パイプライン建設は2010年からだったが、漁獲量が極端に減少した。また、地元紙などによると、当初の港湾開発の事業費は、72億ドル(8062億5600万円)で、出資比率は、中国85%、ミャンマー15%だったが、2018年11月、出資比率をそれぞれ、70%と30%に変更した。4期の計画のうち、一期の16億ドルを13おくどるに縮小した。そして二期以降は需要を確認してから、すすめることになった。また、港周辺では中国主導の「経済特区」も計画。これには軍事利用も懸念されている。さらに2017年に雲南省との間で石油パイプラインが稼働。ラカイン州沖合のシュエ海洋ガス田→天然ガス、原油パイプラインの起点である。

 中国は中東・アフリカ産の原油をマラッカ海峡を通らずに、運べるようになった。このチャウピューから中国内地まで、鉄道や高速道路でつなぐ計画も進んでいる。それは、「中国ーミャンマー経済回廊」という計画だ。中国雲南省の昆明とヤンゴン並びにベンガル湾に面するラカイン州チャオピューの約1700Kmを高速道路と鉄道で結ぶものだ。この間には、山間地帯としてのアラカン山脈があり、そこを横切る。多額の資金がかかり、中国から借款をうけるミャンマーの財務負担が懸念されている。

 2015年12月、中国の国有企業・中国中信集団(CITIC)を中心としたコンソーシアムが、このチャオピューで大規模港湾と工業団地の開発権を取得した。このCITICは、ミャンマー・ポート・インベストメントと、ミャンマー政府の支援するチャオピュー経済特区管理委員会の合弁会社だ。これでもって、「チャオピュー深海湾開発」が2020年8月はじまり、合弁会社の登記は完了している。大型貨物船が出入りできる深海港の建設だ。

 まさに4300エーカー(訳1740ヘクタール)の敷地に、工業団とと深海港をつくるチャオピュー経済特区(SEZ)の一部をなす計画である。それは「一帯一路」にそった、「中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)」の主要授業とされる。2021年9月、ICTICから、中国側企業が調査開始で契約した。

(・「Sankei Biz」2019・3・5 06:55ミャンマー・中国の港湾開発で葛藤 経済発展の期待も「債務の罠」不安視 (チャウピュー  共同)。・JETRO アジア経済研究所 「世界を見る眼」「試される一帯一路『債務の罠』の克服――中国ーミャンマー経済回廊の建設状況から考える」石田正美、2019年7月。参照引用)

【第7節】「西側」の対応――「再分割」をめぐる争闘戦

●欧米日の西側帝国主義にとって「一帯一路」は不安定要因となる

 欧米日の資本主義が、中国の「一帯一路」の自分たちにとっての危険性を意思統一したということだ。

「主要7か国(G7)は、11~13日に英コーンウォールで開催する首脳会議(サミット)で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への対抗策を協議する調整に入った。複数の日米政府関係者が明らかにした。中国は、構想への参画を発展途上国や欧州に呼びかけるなど影響力を強めており、G7で中国に対する危機感が高まっている。……一帯一路は中国と欧州を、中央アジア経由の陸路とインド洋経由の海路でつなぐ構想で、習近平国家主席が2013年に提唱。甘い融資条件で沿線国にインフラ開発を促し、道路や鉄道、港湾整備などを加速化させた。ところが中国の支援で整備した港湾の債務返済に窮したスリランカが17年、この港湾の運営権を中国に譲渡するなどの問題が表面化している。G7ha、中国が一帯一路を通じ、過剰債務に陥った途上国への影響力を強め、軍事的な国外活動拠点の確保を目指しているのではないかと懸念を強めている。G7は、中国が国有企業の生産能力が高まったことを背景に、構想を辻て強引に輸出先開拓を進めているとも分析している」(『毎日新聞』「中国『一帯一路』への対抗策 G7サミットで協議へ 危機感強める」2021/06/05 19:00)としている。

●「脱中国」を西側の総意として意思統一したい合衆国

 合衆国は、対抗的「一帯一路」に対して、産業競争を意思統一した。

 「バイデン大統領は24日、安全保障上で重要な製品の供給網(サプライチェーン)に関する国家戦略策定を命じる大統領令に署名する。……半導体や電気自動車(EV)用電池、レアアース(希土類)、医療品を中心に、日本など同盟国との連携強化を図る。先端技術で覇権を争う中国からの輸入依存度を引き下げる狙いだ。……半導体では受託生産世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)が拠点を構える台湾、レアアースでは生産大手ライナス社を擁するオーストラリアをそれぞれ巻き込み、日本など同盟国と協力する構想を画く。……米国はレアアース輸入の約8割、日本は約6割を中国に依存する。中国は1月にレアアースの管理強化を発表済みで、米国は供給網の『脱中国』を急ぐ」(JIJI.COM 時事ドットコムニュース 2021年2月25日08時07分)ということだ。

●NATOは中国の「体制上の挑戦」に対抗

 2021年6月のNATOの首脳会議での記事だ。「北大西洋条約機構(NATO)は14日、首脳会議を開き、中国の強硬政策がもたらす『体制上の挑戦』に連携して対抗する方針を宣言するとともに、ロシアによる国際法の軽視に警告を発した。……また、NATOの東部境界地域におけるロシアの軍備増強や挑発的な行為が、『欧州・大西洋地域の安全をますます脅かし、NATOの境界線やそれを超えた地域での情勢不安を助長している』と主張。ジョージア、モルドバ、ウクライナの領土保全への支持を再確認し、ロシア政府に対して『各国の同意なしに駐留させていた軍隊を全三カ国から撤退させる』よう要求した」(【AFP=時事】2021/6/15)。いよいよ、西側帝国主義の対ロシア・中国争闘戦の色彩が強くなっていく。

●「東西・再分割」戦の緒戦としてのウクライナ侵略戦争

 そして、ロシアのウクライナ侵略戦争という形で、争闘戦は、激化し始めた。

 中国は、このロシアの始めた侵略戦争に対し、「侵略」「侵攻」とはいわず、「ロシアとウクライナの紛争」ということを言っている。また、「経済制裁」に反対し「対話を」と、「喧嘩両成敗」を立場とし、経済制裁はじまるやロシアからの「小麦」などの輸入を拡大している。

 時事通信は「仲裁に前向き=ウクライナ問題で軌道修正――中国外相」という見出しで、3月7日、中国の王毅外相は記者会見で、『必要な時に国際社会とともに必要な仲裁をしたい』『ウクライナに人道支援する用意がある』などとしたと、伝えている。

 記事によると、王外相は、一方で、NATOの東方拡大に反対するロシアの立場に理解を示すとともに、台湾問題は「内政問題」であり、ロシアとウクライナの問題とは「本質的に異なる。比較できない」としているという。だが、プーチンも、ウクライナ問題は、「ロシアの一体性をとりもどす」問題なのだ。「大ロシア・ベラルーシ・ウクライナの一体性」なる問題だ。実はこの問題でも、プーチン指導部と北京指導部の覇権主義の内容には、相当の相似性が存在することはあきらかだ。

また、王外相は、「インド太平洋戦略」は「インド太平洋版NATO」であり、英語圏五カ国「ファイブアイズ」、日米豪印「クアッド」、米英豪「AUKUS(オーカス)」、米と同盟国の二国間関係を含めた対中国包囲網の形成を「5432布陣」として、警戒しているとした、と報じている(時事通信社2022/03/07 18:44)。

【結語】<帝国主義―間―対立>=争闘戦が本格化か

●中国のロシア制裁「反対」貿易

 中国はロシアが、経済制裁を受け始めるや、支援を表明した。これまで病害などを理由に一部禁止していたロシア産小麦の輸入を全面解禁した。また中国への天然ガスの追加供給など、制裁での損失との相殺を狙うものと見られる。また、中国は、英仏独などにある中国企業の防衛のため、欧州とは関係を維持したい考えだという。また、SWIFTからの排除で、ロシアが、ドル建てでの送金・決済が困難になることから、自国通貨での決済を拡大する措置をロシアに対してとるという。

同時に、中国は国連のロシア制裁決議に対し「棄権」している。

3月02日(日本時間3日未明)、国連緊急特別会合が開かれた。制裁決議案に対してロシア、ベラルーシ、朝鮮、シリア、エリトリアが反対。棄権は、中国、インド、キューバ、南アフリカ、ベトナム、モザンビーク、ニカラグアなど35国となった。賛成は141か国にのぼった。

 まずインドが棄権した理由についてみることから始めよう。インドは、ロシアは武器の供給国だということがある。パキスタンにロシアは武器を売らないという契約。ロシアからの原子力潜水艦のリースなど。また、インドはパキスタンに侵攻する可能性。国連でインド制裁などの拒否権を行使してくれるのは、ロシアが頼みだ。中国とは、そういう関係ではない。その中国だが、中国は先に書いたように「制裁」に反対を表明してきた。ロシアとNATOが「平等な立場での対話」と言っている。だがそれは、ロシアのウクライナ侵略を、「侵略・侵攻」とは言わず、ロシアを擁護する立場の表明以外のものではない。また、台湾の統一をめざす中国にとって、台湾侵攻に対する国連の制裁を想定しての態度表明だと言えるだろう。

 ここで、ウクライナ問題と台湾問題の類似性について見ておこう。「本質的に違う」などと、中国当局者たちや、西側の専門家など、いろいろな立場の人たちが、「別物」といっているが、類似性は指摘しておくべきだろう。

●二月(2022年)に流出した「誤報道」プーチンの「勝利宣言」と中国の主張の類似性

2月26日午前8時(モスクワ時間)、ロシア国営メディア「ノーボスチ通信」はウェブ上で、「ロシアと新たな世界の到来」と題するウクライナ侵攻の「勝利宣言」を誤送信した。すぐ削除されたというが、読者がすでに、保管したものがあり世界中に拡散されている。

そこに表明されている内容では、プーチンは「ロシア・ベラルーシ・ウクライナの一体性の回復」ということを主張しているという「大ロシアの復興」ということだ。だが、これと、中国の台湾に対する「中華民族の一体性」の主張は類似していると考えるべきだというのが、本論論者(渋谷)の主張である。全部、「内政問題」であり、外国の主権・領土と民族自決権に損害を与えたり、それを破壊することはないという、中国当局者の見解とも一致する。

 だがそう言うのは詐欺的言説だ。中国は「一帯一路」のもと、この権益に敵対する香港(香港の自由主義は、西側と中国との区別がない。国家分裂」の機会にあふれていると北京官僚は考えている(「香港安全法」参照)。それは「一帯一路」の権益拡大の方向に敵対する・破壊するものだということだ)や、チベット、ウイグルなどの内陸部少数民族の民族自決運動(「一帯一路」の阻害・障害となる)への民族ジェノサイドなど、帝国主義的権益に敵対するものを排除・粉砕しようとしてきた。その結果、多くの人権侵害が展開されている。人権問題に国境はない。それを「内政問題だから口を出すな」などということはできない。まさに民主主義破壊の問題であり、中国共産党・中南海指導部を中心とする特権官僚層(スターリン主義官僚)の政治経済支配(専制主義・権威主義・全体主義)が生み出した問題だ。そこで階級として抑圧されている階級は労働者階級であり、農民大衆である。まさにスターリン主義官僚打倒の階級闘争の問題を核心問題として考える必要がある。

●中国のウクライナ支援物資提供の意味するもの

 こうした中、中国政府は3月09日、赤十字を通じてウクライナへ「食品や生活必需品」500万元分(約9126万円)を出荷したと発表した。報道官が記者会見で発表した。同時に、ロシアとの交易関係はこれまで通り継続するとし、 ロシアに対する石油・天然ガス輸入禁止などの経済制裁は「国際法上の根拠がなく一方的」、「アメリカを中心とするNATOが、ロシアとウクライナの関係を極めて危険なものに引き上げた」と西側帝国主義に対する批判・非難を展開した。

それは端的には「中立」を装い、何の「勢力圏」にも属していないという形をとろうとするものだ。それはまた、本論でも、最初に触れたように、中国にとってウクライナは「一帯一路」の拠点国の一つである。したがって、ウクライナへの支援はウクライナとの経済協力を継続したい中国の意思表示だということが言えるが、それは、ロシアに「一帯一路」に直接かかわるものを破壊するなという趣旨、とりわけ、ウクライナから中国まで延びる国際貨物列車『中欧班列』などを破壊するなというシグナルでもあるだろう。さらに多様なロシアとのやりとりの意味を含んでいると思われる。

●米による中国半導体制裁の恫喝

こうした中国の動きは、合衆国の中国への批判と恫喝を一層激化させてきている。

3月08日(2022年)、合衆国のレモンド米商務長官は、ロシアに対するハイテク輸出規制について、制裁逃れの中国企業にも厳罰を適用すると表明した。レモンド長官は中国の半導体製造の生産最大手の「SMIC」を名指し、同社が保有する米国製の半導体をロシアへ横流しすれば、同社は、米国製の製造装置やソフトウェアを使えないようにすると警告している。

 こうして中米貿易戦争は、帝国主義国家間の市場争闘戦へと展開しているのであり、ロシアのウクライナ侵略戦争を機動力に激化していこうとしている。そこではその侵略の経緯をも動力としつつ展開する、中国の「一帯一路」の帝国主義が、今後どのように展開してゆくのか、さらに、注視をしてゆきたいと思う。(2022/03/10)

※【続報・分析】は、この『赤いエコロジスト』では、【別の原稿】として、アップしていく予定です◆(2022/03/10)