2024年3月4日月曜日

イスラエル・ネタニヤフの「ハマス後の原則」はファシストの所業だ【連載第7回】 パレスチナ連帯! ガザ虐殺戦争をやめろ!

イスラエル・ネタニヤフの「ハマス後の原則」はファシストの所業だ 【連載第7回】パレスチナ連帯! ガザ虐殺戦争をやめろ! 渋谷要

最終更新 2024・3・04 11:04

●イスラエルによるガザ市での大虐殺(2・29)を許すな!

 パレスチナ・ガザ自治区の人口230万人の内、すでに3万人が戦闘でイスラエルに虐殺されている(2024・2・29、ガザ保健当局発表)。1月下旬にオランダ・ハーグのICJ(国際司法裁判所)は、イスラエル政府にジェノサイドの防止などを求める仮処分命令をだし、一か月間で「履行せよ」その、履行した内容を報告せよと、義務付けた。イスラエルは2月26日、ICJに命令に従っていると報告したという。だが、相変わらず、ガザ市やラファなどに対する戦闘や地上作戦準備などをつづけている。

 2月29日には、ガザ北部ガザ市で住民が人道支援物資の輸送トラックに押し寄せ、小麦粉袋に手を伸ばそうとしたすべての人々を標的に、イスラエル軍が銃撃。115人が虐殺され、760人が負傷した(2月29日、ガザ保健当局発表)。英・独などの政府当局者などもイスラエル政府に対し「説明を求める」と表明している。イスラエルは「死傷者はトラックにひかれた」とか、「暴徒化した群衆に発砲した」と、なんと、自分たちが攻撃したことではないと言い逃れをしようとしている。が、多数の死者・負傷者に銃撃痕があることは明らかだ。まさにファシスト・イスラエル国家権力の所業に他ならない。

 このガザ市での「2・29大虐殺」に対して、国連安保理で緊急非難決議をアルジェリアが準備を始めるや、合衆国が妨害したという。合衆国の権力者たちは、合衆国をはじめ欧米で拡大する「パレスチナ連帯」の民衆の運動が、自身の政権批判に転化しないように、「パレスチナへの支援の拡大」などを、表明してきたが、安保理では一貫して、イスラエルと共犯者だ。

●合衆国の立ち位置について 

 合衆国による米軍などによる空からの支援物資の投下と、安保理での停戦決議・非難決議に対するイスラエル擁護の立ち回り。こうして、合衆国のブルジョア帝国主義者は、「戦後」の政治的諸関係をさぐるような、立ち回りを演じているのだ。これは単に「中立を装う」ということではない。ポイントは、どちらかに傾倒的に立ち位置を決めれば、利害は一方向にしか組織されない、それは、損得勘定ではマイナスだということだ。だから、そうして合衆国帝国主義にとって、最も効果のある権益の創出を企図しているのである。一言で言って、イスラエルとの同盟関係は維持したい・イスラエルは今もって、合衆国のアラブ世界における「突撃隊」だ。ーーだがまた、アラブ諸国との関係では、交易上の利害が、合衆国の石油会社をはじめとして、欧米にはある。それをこの戦争を契機に、損なうベクトルは、つくれないということだ。イエメン「アンサール・アッラー」(蔑称「フーシ」派)などとの攻防に関する米軍の攻撃について、合衆国政府がその攻撃の「限定性」を強調するのも、それは、アラブの主導国との対立に転じさせたくないという外交的アピールに他ならない。

  他方、この【連載】でこれまで分析してきたように、イスラエル国家権力のファシストたちは、ガザを強奪したいのである。そして、パレスチナの住民を、シナイ半島に追放したいのだ。まさに、「集団殺戮」であり、「集団的懲罰」「強制移住」などというとんでもないジェノサイド、虐殺戦争を展開しているのである。

 そこでネタニヤフ政府は、最近「ハマス後の原則」という、ガザ虐殺戦争での、少なくともイスラエル支配階層に向けた「意思統一」を出した。それを、ここでは見て行こう。

●イスラエル国家権力の「ハマス後の原則」とは何か?

 イスラエル国家権力のネタニヤフ首相は、2月22日、次のような通達を公表した。それが「ハマス後の原則」だ。朝日新聞デジタル(2024・02・24 5時00分)では、次のように報道されている。これらは、パレスチナとの「二国家共存」の否定、「パレスチナ国家」の否定にもとづくものだ。

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■ネタニヤフ首相が示したガザの戦後統治の原則

◆イスラエルは、テロの復活を防ぐための作戦を自由に実施(これを(1)とする――引用者。以下、カッコ内数字は引用者による)

◆エジプトからの密輸を防ぐため、境界付近を閉鎖(2)

◆ガザでは治安維持に必要な範囲を超える軍事力を禁止(3)

◆可能な限り、経験のアル地元の専門家が行政と治安維持を担う(4)

◆パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の閉鎖を求める(5)

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というものだ。この五点について、現在分析できるポイントを押さえて行こう。

(1)ガザ内でイスラエル軍の「自由な作戦」。これは、ガザを軍事独裁の下におこうとする計画であることが、示されているだろう。

(2)エジプトとの間での「境界封鎖」。これは、「イスラエル諜報省」の追放計画が、ガザとエジプトの間に、パレスチナ人の立ち入り禁止の緩衝地帯などをつくる。国境付近でのパレスチナ人の活動ができないようにするなどの追放計画に合致し、シナイ半島への強制移住に関わる政策の一環をなすものといえる。【詳しくは、本連載・第五回を参照してください】

(3)「治安維持」以上の軍事力の禁止。これは、(1)との関係で、イスラエル軍の軍事警察独裁の一部として、警察治安機関を作るということである。

(4)「経験のある地元の専門家が行政」と「治安維持」を担う。これは、イスラエルに従属した地元の隷属行政を組織したいのだろう。この「地元の専門家」をめぐる解釈では、西岸の「自治政府」の関与の可能性が一部の新聞報道などでは書かれているが、これも、現在は未知数だ。パレスチナ自治政府はこの「ハマス後の原則」に、反対を表明している。イスラエル国家権力は「パレスチナ国家」を否定しているのであり、「パレスチナ国家建設」の方向にベクトルが進むことについては100%妥協しないということを「意思統一」している。そのことからいって、イスラエル国家権力に従属するものでなければ、彼らにとって、許容できないはずだ。このガザの「行政」機関は、結局、(1)(3)を前提とし、それに基づくものとなるはずだ。

(5)UNRWAの「閉鎖」については、職員にハマスの「10・7アルアクサ洪水作戦」の関係者(12人という)がいたということで(これとて、その詳しい内容については、いまだに検証できないのであるが)、イスラエルにとって政敵となっている。「政敵抹殺」の政策だが、★★ポイントは★★、この「10・7アルアクサ洪水作戦」問題で、合衆国、日本などがUNRWAへの「資金援助を一時停止」していることだ。イスラエルとしては、パレスチナに公的支援を行ってきた組織であるUNRWAを排除することを突破口に、パレスチナに対する国際社会の支援態勢それ自体を閉鎖・破壊したいのである。それは、パレスチナの「飢餓」などを結果し、パレスチナ人をシナイ半島へと追放する動力となる。

 そしてこれらのこと、すべてから、出てくるイスラエルの今日的・実戦的作戦は、「ラファに対する地上作戦を実行し、パレスチナ人をガザから追放する」ということでしかない。まさにファシストの所業である。

●エジプトが国境付近につくっている広大な「整地と壁」が意味するものはなにか「BBC NEWS IAPAN」(2024・02・24配信)「ジェイク・ホートン、ダニエル・パルンポ、BBCヴェリファイ(検証チーム)「エジプトがガザ境界近くで広大な土地を整備、周辺には壁 その目的は」によれば、ラファ検問所の近く、ガザ地区とエジプトの国境沿いに、最近、エジプトは、16平方キロメートルの土地の整備を行い、この整地に準じた「壁」を、建設しているという。

 同記事は、一部報道で「パレスチナ難民を収容するためのものだ」との報道があるが、エジプトは政府は否定している。エジプトは政府は「難民のための国境開放はない」と言明しているという。これは「こうした姿勢には理由がある。パレスチナ人の大規模移住に加担しているように見えるのを避けるためだ。さらには、経済と安全保障上の懸念もある」と同記事では分析している。ではどういう目的で。同記事では、エジプト政府によればエジプト軍がガザへの支援物資を受け入れる流通エリアの建設ということらしい。だが、支援物資をとりあつかう団体に取材しても、そういう計画を聞いたことがないという。このBBC「検証チーム」の記事は、エジプトは「最悪のシナリオ」に備えているのではないかという、「英キングス・コレッジ・ロンドン」の専門家の談を伝えている。これは、本【連載】第5回の「ダレット計画」「イスラエル諜報省の追放計画」から考えて、イスラエルのガザ住民追放に備え、エジプト国内の混乱を生じさせないための、安全保障上の政策だということができるだろう。そのいろいろな意図については、分析を開始しなければならないということだ。(つづく)