2026年4月2日木曜日

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第4回】≪続≫・米中争闘戦とドンロー主義=米「西半球」覇権戦略≪3≫≪4≫≪5≫   渋谷要

 

 

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第4回】≪続≫・米中争闘戦とドンロー主義=米「西半球」覇権戦略≪3≫≪4≫≪5≫

渋谷要

 

※前回第三回の、本節≪3≫のつづき。

 

 

最終更新2026・04・02 13:31

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本論での、「米・国家安全保障戦略2026」の訳は、「niming538の日記」2025-12-12,「米国国家安全保障戦略2025全文+翻訳(トランプによる前文付き)NSS2025」に依ります。

 

NSS(国家安全保障戦略)2025目次————

、序論アメリカ戦略とは何か

1アメリカの「戦略」はいかにして道を誤ったか

2,トランプ大統領による、必要で歓迎される是正

、アメリカ合衆国は何を望むべきか

1,   我々は全体として何を望むのか

2,   世界において、そして世界から、我々は何を望むのか

、我々が望むものを得るために、アメリカが利用可能な手段とは何か

IV. 戦略

1.   原則 「国家利益の集中的定義」「力による平和(Peace Through Strength)」「非干渉主義への基本的傾向」「柔軟な現実主義」「国家の優位性(国家中心主義)」「主権と尊重」「勢力均衡」「アメリカ労働者重視」「公正性」「能力と実力主義」

2.   優先事項 「大量移民の時代は終わった」「中核的権利および自由の保護」「負担分担と負担移転」「平和を通じた再整列「経済的安全保障――『均衡ある貿易』『重要な供給網および重要物資へのアクセス確保』『再工業化』『防衛産業基盤の再生』『エネルギ覇権』『アメリカ金融部門の覇権の維持・拡大』」

★★第2回は、ここまで★★

 

3.   地域

A、「西半球:モンロー主義に対するトランプ・コロラリー(――「参加させる」「拡大」)

★★★前回第三回は、ここまで★★★。今回第4回も、この部分を扱います】

 

B、アジア:経済の未来を勝ち取り、軍事的対立を防ぐ」(――「力の立場から主導する」「経済:究極的な利害」「軍事的脅威の抑止」)//「C、ヨーロッパの偉大さを促進すること」//「D、中東 負担を移し、平和を築く」//「E、アフリカ」。

 

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≪3≫【米中争闘戦(2)――中南米における「一帯一路」を巡る攻防★★(のつづき)★★】

 

●【台湾との断交=工業化・開発支援】

 

こうした、中国中南海の中南米に対するアプローチは、21世紀に入ってから激化してきたものだ。それは、一般的なグローバリズムによる市場進出以外に、台湾と国交を結んできた中南米諸国に対し、工業化・開発支援の見返りとして「台湾との断交」をオルグしてゆくものとしてあった。

これが、中南海にとって、もっとも、中南米地域に浸透していこうとするエネルギー、バネとして作用してきたものと考えられる。

 

とりわけ、中南海が「台湾独立勢力」と規定する民主進歩党・蔡英文政権が、2016年に発足するや, 中国の動きが活性化。

パナマ、ドミニカ共和国、エルサルバドルに巨額の支援を約束し、これらの国々の台湾との外交を断絶することに成功した。さらに、21年、ニカラグアも中国との野国交樹立と台湾との断交を宣言した。

 

「さらに2112月に実施されたホンジュラスの大統領選挙で、中国との関係を重視する左派野党連合のシオマラ・カストロ氏が当選を決めた。……カストロ氏は大統領就任後の233月台湾との断交を宣言し、中国との国交樹立に転じた。ホンジュラス政府はこれにより中国から巨額の投資、インフラ整備、経済協力がもたらされることに期待感を示した」(引用は一般社団法人IPP 平和政策研究所のサイト。「国際情勢マンスリーレポート」。「中南米巡る米中の角逐——“米国の裏庭”への進出強める中国」(2025年12月26日 平和総合研究所 上席研究員 西川佳秀)氏執筆のもの。以下、「西川氏レポート」) という。

 

こうして中南米での台湾との国交を保っている国々は、減少してきたのである。これは、反米ないしは親中国政権が、中南米で拡大することを、中国中南海指導部が、積極的に行ってきたことをしめすものであり、米帝トランプ一派にとっては、「外部勢力(たる中南海)の「西半球」侵出・秩序の破壊」以外のなにものでもないだろう。

 

●【中国の中南米開発プロジェクト】

こうした動きを、中南海は加速していく構えだ。

20255月に北京市で「中国・中南米カリブ諸国共同体(CELAC)フォーラム」 の第4回閣僚級会会合が開催された。CELACは、201112月にキューバを含む中南米・カリブ33カ国の全てが参加する対話のメカニズムとして設立された。今回の閣僚級会合には、ブラジルのルラ大統領やコロンビアのペトロ大統領など一部加盟国の首脳も出席した。

演説に立った習近平国家主席は、「関税合戦に勝者はなく、いじめや覇権主義は孤立を招くだけだ」とトランプ米政権を牽制、「一国主義と保護主義の逆流に直面する中、中南米と手を携えて共に運命共同体を構築したい」と語り掛けた。対米依存の脱却を急ぐ中国は、ブラジルの大豆など農産物の輸入を増やしているほか、電気自動車(EV)など自国製品の販路拡大も目指している」(引用、同上、西川氏レポート)。

まさに、各国の経済政策に対し不安をあおる以外ない、トランプの「相互関税」政策を批判し、そうではなくて「運命共同体を」とよびかけ、以上に明記されているような、交易関係の拡大にと組もうとアピールしている。

そして、こうしたプロジェクトは、2025年12月10日に発表された「ラテンアメリカ・カリブ諸国に対する政策文書」で、一層、系統だってうちだされている。

以下は、「ジェトロ(日本貿易振興機構)の海外ニュース  ビジネス短信」、「中国が新たな対中南米政策を公表」(調査部米州課 2025年12月12日。佐藤輝美 中国・中南米)による。

 

「中国政府は1210日、今後の中南米政策をまとめた「ラテンアメリカ・カリブ諸国に対する政策文書」を公開した」。

 

この文書では、第3部に「協力事項」というところがある。

 

「「連帯」「開発」「文明」「平和」「人的交流」の5つのプログラムに大別される。「連帯プログラム」では、政府高官同士の交流を維持し、両地域間の共通の関心事項に関するコミュニケーションを強化していきたい意向が示されている。また、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)・中国フォーラムの枠組みを活用してさまざまな分野での協力を積極的に推進し、条件が整い次第CELAC加盟国と中国の首脳会議を開催したいとも述べられている」。

 

「開発プログラム」の中では、中南米諸国の「一帯一路」へのさらなる参加を呼びかけた。

貿易・投資分野については、2国間貿易の潜在力をさらに掘り起こし、特産品、競争力のある商品、高付加価値や技術集約型製品の貿易を促進し、サービス貿易やデジタル貿易における協力を強化するとしている。自由貿易協定(FTA)やそのほかの貿易円滑化協定についても協議する。……エネルギー・資源分野としては、クリーンエネルギーや鉱物資源の環境負荷の少ない開発方法に関する協力の強化をはかり、農業協力分野では、共同で食糧安全保障を推進するとしている」。

 

「インフラについては、交通、貿易物流、貯蔵施設、情報通信技術、エネルギー・電力、水利プロジェクト、住宅・都市建設などの伝統的な分野に加え、再生可能エネルギー、スマート交通、デジタルインフラ、スマートシティなどの新興分野においても協力の意向だ」(引用終わり)というものだ。

 

これが、どれほど、米帝トランプ一派の怒りをかっているか? これら外部勢力=中国の動きに対する、トランプ一派の争闘戦テーゼ、としてのNSS2025での、基本的な指針となる文書を読んでいこう。

 

≪4≫【米中争闘戦(3)——NSS2025での、「西半球」覇権に関するテーゼ】

 

●【位置づけ】

 

まずこのNSSの、こ章のタイトルだが「A. 西半球:モンロー主義に対するトランプ・コロラリー」だ。

この「コロラリー」などの概念の整理については、本連載第三回の最初でやっている。

それを踏まえて、まずこの節の、位置づけを確認しよう。

 

「長年の放置を経てアメリカ合衆国は、西半球におけるアメリカの卓越した地位を回復し、本土と地域全体にわたる重要地理へのアクセスを守るため、モンロー主義を再主張し、これを厳格に執行する。
 我々は、西半球外の競争勢力が、この半球において、兵力やその他の脅威となる能力を配備したり、戦略的に重要な資産を所有・支配したりすることを認めない」。

 

完全に「西半球」におけるUSA独裁とでもいうべき基調が書かれている。

まさにトランプ一派のスローガンである「MAGA」(Make America Great Again……「アメリカ合衆国を再び偉大に」)と言うべきだ。

 

そこで、次に考え方が述べられる。

 

「西半球における我々の目標は、「★参加させ、拡大する★(Enlist and Expand)」という言葉に要約できる。我々は、西半球内の既存の友好国を参加させ、移民を管理し、麻薬の流通を止め、陸上および海上における安定と安全を強化する。★同時に、我々自身の国家の魅力を★、西半球における最優先の経済・安全保障パートナーとして★高めつつ★、新たなパートナーを育成・強化することで、★拡大★を図る」。

アメリカ・ファーストへの「参加」と「拡大」だ。

 

●【「参加させる」という文節を見よう――安全保障パートナーシップと西半球サプライチェーンの展開が「西半球外の外部勢力」を排除する】

 

(a)ここにはまず、USAが、西半球にある諸国と、どのように、付き合うのかという位置づけ・考え方になるものが書かれている。

 

「我々は、我々の原則および戦略と大枠で一致する地域の政府、政党、政治運動を称揚し、後押しする」。だがそれだけではない。「しかし同時に、見解は異なりながらも利害を共有し、我々と協力したい意思を持つ政府を見落としてはならない」。

つまり、これは前回第三回で読んだNSS2025中の「柔軟な現実主義」のポイントの一つに他ならない。

 

(b)そこで次に「アメリカ合衆国は、西半球における自国の軍事的プレゼンスを再検討しなければならない」として、「これは、明白に以下の四点を意味する」と提起している。

 

要点を明記するなら次の様になると思う。「近年または数十年にわたりアメリカの国家安全保障にとって相対的重要性が低下した戦域から重点を移」すこと。

 

「海上交通路を管理し、不法およびその他の望ましくない移民を阻止し、人身および麻薬売買を削減し、危機時における主要通過路を統制するため、沿岸警備隊および海軍の、より適切な配備を行うこと」

 

このため国境の確保などに必要な重点的配備を行い、「「法執行のみ」の戦略に代えて、必要な場合には致死的武力の行使も含めること」である。

 

(c)さらに経済安保についての考え方がのべられる。

 

そこでは、「この半球における重要な供給網を強化することは、依存関係を減らし、アメリカ経済の回復力を高める」とサプライチェーンの運営の重要性が言われる。そして「アメリカとパートナー諸国との間に構築される結びつきは、双方に利益をもたらすと同時に、西半球外の競争勢力が地域における影響力を拡大することを困難にする。そして、我々が商業外交を最優先とするなかにおいても、武器売却から情報共有、合同演習に至るまで、安全保障パートナーシップの強化に取り組む」。

つまり、「西半球外の競争勢力」が「影響力を拡大」することに対する、政治経済政策の考え方が述べられている。

総じて、「西半球外」の敵に対する闘い(争闘戦)を基軸とした組み立てとなっている。

 

●【拡大」という文節を見よう――外部勢力の影響力を「押し戻せ」】


(a)「現在すでに強固な関係を有する国々との連携を深めると同時に、我々は地域におけるネットワークの拡大を図らなければならない。
 我々は、他国がアメリカを「第一の選択肢となるパートナー」と見なすことを望み、また(さまざまな手段を通じて)他勢力との協力を抑制する」。

 

「アメリカと連携する他国」に対し「他国が、他勢力との協力を抑制する」というのがポイントだ。そこで、次のようなシステム、連携が必要になるという。

 

「西半球には、多くの戦略的資源が存在しており、アメリカは地域の同盟国と協力してこれらを開発し、周辺諸国と自国双方の繁栄を実現すべきである。国家安全保障会議(NSC)は直ちに、情報コミュニティの分析部門に支援された強固な省庁横断プロセスを開始し、西半球における戦略的要点および資源を特定し、その保護と地域パートナーとの共同開発を視野に入れる」。

 

(b)こうした戦略地図を作ってく上での、その前提として、次のことが、何度も強調されている。「西半球外の競争勢力」の悪質さを確認せよということだ。

 

「西半球外の競争勢力は、現在においてアメリカを経済的に不利にするのみならず、将来的に戦略的害を与え得る形で、この半球への重大な進出を果たしてきた。
これらの進出を、真剣な反撃なしに許してきたことは、近年におけるアメリカのもう一つの大きな戦略的過誤である」。

だから、その過誤を総括し、

「我々の同盟の条件、ならびにいかなる形態の支援を提供する際の条件も、軍事施設、港湾、重要インフラの支配から、広義の戦略資産の取得に至るまで、敵対的な外部勢力の影響力を縮小することを前提としなければならない」と強調している。

(c)ここで「敵対的な外部勢力」の弱点が示される。

 

「一部の外国の影響力は、特定の中南米諸国政府と特定の外国主体との政治的連携を考えれば、逆転が困難な場合もある」。

 

ここからが重要だ。

「しかし、多くの政府は、外国勢力とイデオロギー的に一致しているわけではなく、むしろ、低コストやより少ない規制上の障壁など他の理由から取引関係に引き寄せられているにすぎない。

アメリカ合衆国は、西半球において、外部勢力の影響力を★押し戻す★ことに成功してきた」。

 

では、どのように「押し戻した」のか。

 

「それは、いわゆる「低コスト」の外国援助の中に、諜報活動、サイバーセキュリティ上の脆弱性、債務の罠、その他さまざまな形で、いかに多くの隠れたコストが埋め込まれているかを、具体的に示してきたからである。
 我々は、財務および技術分野におけるアメリカの影響力を活用し、各国がそのような援助を拒否するよう促すことを含め、これらの取り組みを加速させるべきである」としている。

 

★本連載では、この「押し戻し」の具体例について後述する。

 

(d)ここでこの「敵対的な外部勢力」のシルエットが文字化される

 

「西半球において--そして世界のあらゆる場所においてアメリカ合衆国はアメリカの製品、サービス、技術が、長期的に見てはるかに優れた選択肢であることを明確にすべきである。……すべての国が直面すべき選択は、主権国家と自由経済から成るアメリカ主導の世界で生きることを望むのか、それとも、地球の反対側にある国々から影響を受ける並行的(parallel)な世界で生きることを望むのか、という点である」と。

「地球の反対側にある国々」。これは日本などのことではないだろう。明確に「中国」のことを意味しており、「国々」とは中ロのことを意味している。ここで言う「並行的な」とは、西半球に居ながら、西半球とは違う・対抗する別の世界で生きることを望むのか、という意味だろう。

 

そのため、「当該地域で、またはその地域に関わって働くすべてのアメリカ政府関係者は、外部からの有害な影響の全体像を把握すると同時に、パートナー諸国が我々の半球を守るため、圧力を加え、かつインセンティブ(行動を促す動機――引用者・渋谷)を提供することを並行して行わなければならない」と提起している。

「外部勢力有害な影響の全体像の把握」、まさに、諜報・分析などの情報分野をはじめとした機能(広義)の活性化が問われているというわけだ。

 

「アメリカ合衆国はまた、アメリカ企業に不利益をもたらす、標的型課税、不公正な規制、没収といった措置に抵抗し、これを撤回しなければならない」。

つまり、特定の組織、企業、地域を狙った攻撃的課税などに対する防衛が必要だと言っている。さらに、「我々の協定の条件は、とりわけアメリカへの依存度が高く、それゆえ我々が最大の影響力を有する国々との協定においては、アメリカ企業に対する単独供給契約(ソールソース契約)でなければならない。同時に、地域においてインフラ建設を行う外国企業を排除するため、あらゆる努力を尽くすべきである」。

つまり、トランプ一派としては中国の侵出を阻止し、アメリカ・ファーストでの契約をおこない、中国の「一帯一路」などでのインフラ建設を阻止・排除せよと提起しているのである。

 

では次に以上のような、中国「一帯一路」の拡張に対する――NSSが以上、提起しているような合衆国による外国勢力に対する「押し戻し」「排除」の実例を概観しよう。

 

≪5≫【米中争闘戦(4)―― 「一帯一路」—対―「主権国家と自由貿易」

 

●「一帯一路」の策略――「債務の罠」

本稿では、中国「一帯一路」が、「債務の罠」といわれる、略奪の政策を持って、中南米諸国に入り込んでいる問題をみていこう。

 

「中国の一帯一路構想に参加しても、想定していたような経済発展が達成できないばかりか、対中債務が増大し自国の社会インフラが中国に奪われてしまうケースや、貿易の不均衡から中国側だけが一方的に利益を得るケースが中南米諸国の不満を募らせている」(一般社団法人IPP 平和政策研究所のサイト。「国際情勢マンスリーレポート」。「中南米巡る米中の角逐——“米国の裏庭”への進出強める中国」(2025年12月26日 平和総合研究所 上席研究員 西川佳秀)氏執筆のもの――以下、「西川氏レポート」とする)。

 

「アルゼンチンのブエノスアイレス港では、中国の融資を受け中国企業によって最新のターミナルが建設されたが、開業以来寄港する船舶がほとんどなく遊休状態に陥っている。港湾当局は融資を返済することが出来ず、中国がターミナルの経営権を握ることをアルゼンチン側は懸念している」(西川氏レポート)。

 

こうした「債務の罠」は、中国が、99年間、その債務対象の経営権を握るなどの手法で、世界的に行われている。例えば、スリランカだ。ハンバントタ港という港が、債務返済不履行により、中国に99年の長期運用がみとめられた。現在、中国招南局港口(香港)が70%の株式を所有し、後の株式はスリランカ港湾局で所有する、合弁会社HIPG(ハンバントタ・インターナショナル・ポート・グループ)の運営に依っている。こうした、「債務の罠」は、中国の融資条件(高金利)やインフラ利用の利益薄などの要因によるといわれている。もともと、こうなるということが、分かったうえで、話を持ち込かけるのが「債務の罠」だ。

だが、スリランカ政府は、さらに、スリランカの中心的な大都市であるコロンボの都市開発を、中国によって、推し進めている。「成長」をアピールしたいためといわれているが、この事業によって、さらに、債務危機が加速してゆくことが懸念される。

 

※拙著では、渋谷要ブログ「赤いエコロジスト」2022・3・11。「『一帯一路』の帝国主義――米中冷戦の「初期」の分析として」「第三節 『一帯一路』の開発帝国主義―「債務の罠」=「租借地」政策など」を参照してほしい。

 

「またアルゼンチンの排他的経済水域では多数の中国漁船が連携して長期間違法操業を繰り返し、地元漁民が被害を受けている。ウルグアイやチリ、ペルーなどでも同様の被害を受けている。アルゼンチン政府が抗議しても中国政府は違法行為を否定し、事実を認めないという」)(西川氏レポート)。

 

 また例えば、ホンジュラスでも親中路線の見直しが起きている。2023年、ホンジュラスのカストロ大統領は台湾との断交を宣言。中国と国交を樹立した。この見返りとしては、大規模投資、インフラ事業関連などの事業が行われるはずだった。だが、その後2年間、ホンジュラスに中国からの大規模投資はなかった。むしろ中国の貿易ダンピングの被害国になってしまった。

 

どういうことか。

 

 「ホンジュラス経済開発省の統計によると、中国のホンジュラスへの年間輸出額は20億ドル(約650億台湾ドル)に達する一方、ホンジュラスの中国への輸出額はわずか4000万ドル(約13億台湾ドル)に過ぎず、この国は世界で対中貿易赤字が最も深刻な国の一つとなってしまった」(同上)というわけだ

 

こうしたことが、中南米諸国の中国に対する評価をおとしはじめている。そこで、合衆国側としては、そうした「債務の罠」などに、隠された、莫大なコスト危機に対し、中南米諸国に対し、親米政権を復活・強化することに舵を切らせる動きを組織しようとしているということだ。

 

●【エクアドルなどでの「保守回帰」という「押し戻し」】

 

 

上記したホンジュラスでは、2026年1月の大統領選挙で、トランプ氏が支持する右派「国民党」のナスリ・アスフラ氏が当選。アスフラ氏は、23年以降断交していた、台湾との外交関係復活を公約に掲げている。

 

また、例えばこうだ。

 

エクアドルでは「2007年から17年まで続いたコレア政権は、反米左派のベネズエラや中国に接近、特に中国からは多額の財政融資を受け、原油の9割近くを中国に輸出、資源開発にも中国資本が多く関与するようになった。その後、175月にコレア政権を引き継ぐ形で就任したモレノ元大統領は、支援者だったコレア氏に反旗を翻す形で親米路線に転換、以後、エクアドルでは親米路線が続いている。アルゼンチンのミレイ大統領(23年)やエルサルバドルのブケレ大統領(24年)に続くノボア氏(右派。エクアドル大統領、2025年再選——引用者・渋谷)の再選は、中南米地域での保守回帰の流れを太くするものと言える」(同上)。

 

こうした「押し戻し」が、展開しているのも事実である。

 

●【アメリカの「麻薬撲滅戦略」と「力による平和」】

 

さらに、トランプ一派は、中南米の拠点固めとして、反麻薬での連携を強化する政策を始めている。Reuters(2026/3/9AM7:32)「トランプ氏が中南米右派系首脳と会合 麻薬組織対策で新たに連携」([マイアミ(米フロリダ州) 7日 ロイター])では次のようである。

 

「トランプ米大統領は7日、南部フロリダ州に中南米諸国の保守・右派系首脳を招いた「米州の盾(シールド・オブ・ジ・アメリカズ)」サミットを開催し、麻薬組織への対応や治安強化などで協力する新たな枠組みを立ち上げた」。

 

アルゼンチンのミレイ大統領、チリのカスト次期大統領、エルサルバドルのブケレ大統領、ホンジュラスのアスフラ大統領、エクアドルのノボア大統領などが参加したという。

 

「これらの首脳の多くは、犯罪や移民の問題を巡る強硬姿勢がトランプ氏と共通しており、より根深い社会問題の解決よりも取り締まりを、公的部門よりも民間企業を優先している。トランプ氏は「これまで米州の指導者たちは、国境を越える犯罪組織が西半球の広大な地域を直接支配するのを許容してきたし、犯罪組織はあなた方の国の一部を支配してきた。われわれはそれを絶対に許さない」と語った。

さらにトランプ氏は、メキシコを麻薬組織の活動の中心地と名指しした」。

 

これは、本連載第二回に読んだ、 森野咲「なぜ極右の躍進は止まらないのか フランスから考える第一回「われわれは極右をどう定義するべきなのか」」(集英社新書プラス 2025.10.29)に基づけば、「極右のイデオロギー」の「三つの柱」(ネイティビズム(排外主義)+権威主義+ポピュリズム)の内の「権威主義」に対象化されるところになるのではないか、と私は考える。森野氏の、極右の「権威主義」の内容はこうだ。

 

森野氏は「権威主義」とは、「社会秩序の維持や強い国家、厳罰主義を重視し、権威に従わない者は処罰されるべきであるとする価値観である」と規定している。そしてアドルノ(フランクフルト学派)の『権威主義的パーソナリティ』の事例を上げつつポイントは「内集団においては権威的人物を賞賛し従属する一方で、外集団に対しては「道徳的権威」の名の下に制裁を加える態度に結びつく」と論じている。

 

まさに強いアメリカ=トランプ大統領という権威を称賛し、「道徳的権威」によって、反秩序=麻薬組織に制裁・厳罰を加えるということだと、考える。

まさに、「力による平和」の実戦だ。◆

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これら、米中争闘戦の中南米における展開は、「一帯一路」の拠点国家・イラン侵略戦争とともに、中国に対する――中国中南海の「拠点国家」に対する経済と政治秩序の破壊を意味し、それは「中国包囲網」形成の一環としてある。アジアと欧州では、どうか? 次回はこの点を考えて行こう。

 

【次回「連載第5回」「「西半球」以外、とりわけアジアとNATOについて――日米右派=高市一派とNSS2025」】