【連載第11回】【学習ノート】排外主義インテリジェンス、及びイスラエルの戦争シギント(信号諜報)・軍事AI「ラベンダー」について
—— 日米右派・高市一派の「新しい守り方(旧名・「新しい戦い方」)」とインテリジェンス(とくにシギント)を考える/【連載タイトル】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025 渋谷要
最終更新 2026年7月25日 0:01
【次回【連載第12回】、ブログのアップ9月10日(夏休み宿題・編)】
【※(断り書き)】この間、AI技術に関する記述を多く展開していますが、それらはあくまで、【AI技術それ自体に関する記述ではありません】。個々の制度分析、軍事分析で、どのようにAIが【つかわれたか】、ということが、分析に不可欠になっているからです。【あくまでも個々の分析対象】とした、制度・軍事・戦闘の分析に関する記述です。今後とも、その必要性でのAI分析なので、その点、誤解の無いようお願いします。
★★なお、「赤いエコロジスト」の各記事作成では、【AIを使用していません】。使用していたら、もっと、優秀なものが発表できているはずです(これは、「笑」ということで)。
———
★★★★★★★ 【この第11回の読み方について】★★★
以下の論述の前半はザックリと言って「制度設計論」です。これを【ウザイ】とおもわれるかたが、おられると思います。【まず】初めに■【A】の≪序≫を読んだ後で、■【B】≪2≫節以降を、お読みいただければ、幸いです。【そのあとで】、「前半」を読んでいただければ、と思います。
★★★★★★★
目次
■【A】「国家情報会議—国家情報局」の設置について
≪序≫ロシア航空大手・アエロフロート 在日ロシアスパイ問題が前面に――「スパイ天国―日本」報道だが、ここでの課題は、制度分析だ
≪1≫ 国家インテリジェンスの制度的枠組みの制定
≪2≫国家情報会議」の課題
≪3≫ 自衛隊「情報作戦隊」等の新設
≪4≫ 日本インテリジェンス体制の現在地
■シギントの国際的連携への係りという課題
■アトリビューション支援の課題
■巨大プラットフォーマーとの連携という課題
■【B】合衆国のインテリジェンス体制
≪1≫「国家諜報長官(DNI)」とは何か
≪2≫インテリジェンスは戦争をどう諜報しているか――合衆国のシギント
■【C―1】戦争国家イスラエルのインテリジェンスとガザ虐殺戦争
≪1≫ イスラエルのインテリジェンス・コミュニティ
≪2≫ イスラエル諜報機関の概観
≪3≫ イスラエル国防軍・特殊部隊
≪4≫ ガザ虐殺戦争におけるインテリジェンス能力と攻撃方法
■ガザの死亡者数について
■シギント組織「8200」部隊のガザでの活動
■イスラエル軍の「標的類型」と「高価値標的」について
≪5≫AI「ラベンダー」って何だ――イスラエル8200部隊は軍事AI「ラベンダー」をどのように使ったか
■「標的と住居」について――攻撃の核心問題
■【C―2】ガザ虐殺戦争の現在と、ネタニヤフ戦争の戦争犯罪の確認
≪1≫現在のガザ犠牲者に関する情報
≪2≫ICCの戦争犯罪対象情報
■【D】 帝国主義国における差別・排外主義の問題――「血債・猛省」を対自化せよ
≪1≫
米ICEの暴力行政
■「盗まれた国」の歴史を忘れるな!
■トランプによる強権指揮
■「民主党急進左派」の伸長
≪2≫高市一派による排外主義出入国管理の強化
■2026年入管法の改定での「在留資格」等の管理強化
■在留資格喪失者に対する差別主義隔離政策
■「国旗損壊罪」のナンセンスーー「公判」を維持できるのか?
■スパイ防止法で排外主義戦争国家に突入する高市一派 ◆
【次回連載第12回予告】【アップ予定】 月日。
———
■【A】「国家情報会議―国家情報局」の設置について
≪序≫ロシア航空大手・アエロフロート 在日ロシアスパイ問題が前面に――「スパイ天国―日本」報道だが、ここでの課題は、制度分析だ。
「2026年7月12日、ミューヨーク・タイムズ(電子版)で、日本でウクライナ侵略に必要なハイテク機器のロシアへの密輸を統括する露軍参謀本部情報総局(GRU)将校と名指しされた男性が、同紙の報道後に出国していたことが公安関係者への取材でわかった」と、【読売新聞オンライン(7/23(木)5:01)が報道】した。
このGRU将校は、ロシアの航空最大手アエロフロート東京支店長をつとめていたという。「ハイテク機器や工作機械を買い付け、アエロフロートと協力する東京都内の運送企業を通じて第三国に輸出したうえで、ロシアに運び出していたとされる」。「ウクライナ政府の推計として、★★ロシアのミサイルや無人機の9割に日本製部品★★が使われていると指摘。日本の技術が密輸された『証拠』をウクライナが提供し、輸出管理の徹底を求めたと(ニューヨーク・タイムスは――引用者・渋谷)報じていた」との上記、読売新聞の報道がある。
これが事実なら、ウクライナ徹底抗戦勝利のためにも、手を打つ必要はあるだろう。そしてこのように、クレムリンの「スパイ天国」に日本がなっているとするなら、当然、このクレムリンのスパイたちは、日本国内における「反クレムリン分子」の動向も探っているはずだ。
——
≪1≫国家インテリジェンスの制度的枠組みの制定
■2025年10月、自民党と日本維新の会は、①国家情報会議の設置、②国家情報局の創設、③対外情報庁の創設、④情報要員養成機関の創設、⑤インテリジェンス・スパイ関連防止法制の成立などで合意した。
①と②については、次官級の「合同情報会議」を閣僚級の「国家情報会議」に格上げする。また、「内調(内閣情報調査室)」を「国家情報局」に格上げし、「内閣情報官(次官級)を国家情報官(国家安全保障局長と同格の政務官級)に格上げする」というものだ。
2026年5月、「国家情報会議設置法」が可決・成立した。賛成は自民、維新、国民民主、公明、参政だ。
■「国家情報会議設置法」の、同会議のメンバー(第五条、第六条)は、議長を総理大臣とし、議員は、内閣官房長官、国家公安委員会委員長、法務大臣、外務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、防衛大臣を基本とし、必要に応じてその他の大臣も参加する。
また、「内閣法の一部改正」により、「内閣情報調査室」を「国家情報局」に格上げ、その調査室の「内閣情報官」を「国家情報局長」に格上げする。国家情報局は国家情報会議の事務局であり、国家安全保障会議と同格とされた。
以上が、同設置法の規定した組織の枠組みである。
≪2≫「国家情報会議」の課題
【引用論文】福好昌治(軍事ジャーナリスト)「“国家情報会議”が作られる本当の理由」、『軍事研究』2026年8月号(42~55頁)
■この中で、実践的に中心的なことがらは、これまでの「内閣情報調査室・内閣情報官」の仕事である。重要なのは、この内閣情報官が「内閣衛星情報センター」を統括するとともに、「内閣情報分析官」を組織していることだ。これは、特定の地域、または分野に関して高度な分析を担当する「分析チーム」で組織される。
「総務部門」…人事・予算などの総合的なとりまとめから特定秘密の保護に関わる課題等々。「国内部門」、「国際部門」、「経済部門」、大規模災害時などの緊急事態における情報収集・連絡などに関する「内閣情報集約センター」。
「国際テロ情報集約室(室長は内閣官房副長官、事務は室長代理:内閣情報官)」…情報活動の調整や、収集調査に関する連絡調整など。
「カウンターインテリジェンス・センター」…カウンターインテリジェンス(スパイ活動のこと――引用者・渋谷)機能の強化に関する基本方針の施行に関する連絡調査、国外の情報機関による情報収集活動から、我が国の重要な情報や職員を保護する事とされている(引用論文46頁)。
こうした各部門での「分析チーム」の重要性が、高まっていると、政府権力者たちは判断しているという事だ。
■国家情報会議の「目的」は、同法第二条に規定されている。
「重要情報活動(安全保障の確保、テロリズムの発生の防止、緊急の事態への対処その他我が国の重要な国政の運営(……)資する情報の収集調査に関わる活動をいう」。
「次条及び外国情報活動への対処(公になっていない情報のうちその漏えいが重要国政運営に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動(これと一体として行われる不正な活動を含む)であって、外国(本邦の域外にある国または地域をいう)の利益を図る目的で行われるものへの対処をいう」。等とされる事項に対処するものとして「内閣に、国家情報会議室(以下「会議」という)を置く」とされたものだ。
しかし「自民党の提言のうち、国家情報会議設置法に盛り込まれたのは、国家情報会議の設置と国家情報局の創設だけである。これだけでは組織を拡大したにすぎず、日本のインテリジェンス機能が強化されるわけではない。インテリジェンス改革の第一歩に過ぎない」と分析されている。
「自民党の提言では、対外情報収集能力の強化について、①シギント(SIGINT)(信号諜報・通信傍受―引用者・渋谷)能力の優先強化、②ヒューミント(人を媒介とした諜報)能力の強化、③オシント(公開情報の収集・整理)能力の強化、④情報活動に関する民主的管理の強化の四点を提言している」(引用論文48頁)。
そうした、とりわけシギント強化提案の実質的な制度構築には、至っていないという事だ。
さらに「自民党の提言は、カウンターインテリジェンス強化について、①外国の影響力工作に対する法的措置と、②外国諜報活動の防止に関するさらなる措置も提言している」(前掲48頁)が、これらは、同設置法には「盛り込まれていない」と指摘する。
この場合、どのような課題が、指摘されてきたかが、問題となるところだ。
次のような指摘がある。
「たとえば、2005年に外務大臣の諮問機関として『対外情報機能強化に関する懇談会』(座長・(略―引用者)・元内閣情報調査室長)が設置され、同年9月13日に「対外情報機能の強化に向けて」と題する報告書を公表している」。
その中で、次のような記述があるという。
「対外情報収集活動の中には、場合によっては、★★通常の外交活動と相容れないものがあり、そのような活動のためには特殊な教育・訓練が必要とされ、さらに職員が、特定分野に長期・継続的に携われる人事配置が必要」であるというものだ。
「情報機関の長い歴史と経験を有する英国では、秘密情報機関(SIS)を設置し、外務大臣の下に置きつつ、固有の活動を行う体制としているが、このような方式は、我が国としても参考になる」としているというものだ。
ここで「通常の外国活動とは相容れないもの」とは何か? というのがポイントだ。
「外交官の身分を持たないで、外国においてひそかに情報収集活動に従事することを指すのであろう。このような活動に従事する者は、NOC(ノン・オフィシャル・カバー)と呼ばれる。まさにスパイである」と規定している。
「アメリカ、ロシア、中国、韓国、イスラエル、イギリス、フランス等、強力な情報機関を有している国は、NOCを監視対象国に派遣している」。さらに「偽装身分としてよく使われるのは研究者、ジャーナリスト、商社員である」等の分析がつづく。
だが日本の場合、NOCには無理があるというが論者の分析だ。
例えば「NOCを調査対象国に派遣しようとする場合、身分を偽装しなければならない。偽名によるパスポートが必要になるが、外務省はそのようなパスポートを発行してくれるだろうか」などだ。
またこうも展開している。
「日本で対外情報機関というと、アメリカのCIA(中央情報局)、韓国の国家情報院、イスラエルのモサドのように、情報取集とどまらず、謀略にも従事する組織が連想されやすい。日本が対外情報機関を設置することになったとしても、謀略まがいの任務に従事させるべきではないし、能力的にもとうてい不可能である」としている。
≪3≫自衛隊「情報作戦隊」等の新設
以降(2026年6月以降)のインテリジェンス構築は、以上を「第一歩」として、「対外情報庁」新設、インテリジェンス職養成、スパイ防止法制定という、実質的制度設計をめざすものとなっていく。
★★★が、これらに先行するように自衛隊では、2026年陸上自衛隊と海上自衛隊に「情報作戦隊」等、新たな部隊を新設・新編している★★★。
■まず「自衛隊における情報の定義」という小見出しの個所では、「インテリジェンス」の定義が具体的に記述されている。
「2023年に改訂された『統合情報教範』(情報公開請求で入手)ではインフォメーションを「情報」と訳し、インテリジェンスはそのままカタカナで表記」されているという。そのインテリジェンスの定義が、書かれている。
「外国、敵対及び潜在的敵対勢力、作戦地域などに関するインフォメーションを収集、処理、総合、評価、分析、解釈して得られる『成果物(ポロダクト)』収集、処理、利用、分析及びインフォメーションまたは完成したインテリジェンスの配布に関わる組織、能力、プロセス」ということだ。
また、「情報(インフォメーション)」は「何らかの媒体を介して、受信者に伝達され、意味を成す一群のデータ。統合情報においては、以下を指す。」
「a データを理解しやすい形に加工処理したもの。
b 敵、地域に関し、資料源から得た知識のうち、インテリジェンス組織等による評価・判定等の過程を経ているものをいう。データがセンサーから収集され、理解しやすい形に加工処理されたもの」だ。
まず、こうした位置づけの下に、こうした任務を基本とする部隊として、2026年3月、「陸上自衛隊に情報作戦隊が新編され、海上自衛隊に情報作戦集団が新編された」。
情報作戦隊は、陸上総隊の隷下に朝霞駐屯地に置かれているということだ。
自衛隊の広報紙『朝雲』(2026年5月7日号)によれば「情報作戦隊」は「特殊作戦群と同じ程度の秘匿性の高い部隊」と位置付けられているという。
「主要な任務は『陸自の作戦遂行を妨害するような偽情報に関する情報の収集および対処』とされている」という。
以上の引用論文では、これは「認知戦」と言われているが、古くからある言葉では「後方戦」だという説明があり、次のように、書かれている。
「情報戦は軍事だけでなく、社会生活のあらゆる分野で、日常的におこなわれている。……政治団体や市民運動団体の宣伝煽動(プロパガンダ、あおり)も、情報戦と言える」と書かれている。
「しかし、近年、情報戦の主舞台は、SNSに移っている」とし、「情報作戦隊の主戦場は、サイバー空間になる。情報作戦隊は自衛隊サイバー防衛隊や自衛隊情報保全隊と密接に連携しながら、作戦を展開するのである」とされる。
さらに、海上自衛隊の「情報作戦集団」の組織系統図が説明されている。
ここでは機能系統関係に関してだけ、上げておこう。
「作戦情報群」——「情報収集群」「気象海洋情報隊」「第一海洋業務隊」「第一音響測定隊」。「サイバー防御群」——この「防御隊」は、「中央」、「横須賀」「呉」「佐世保」「舞鶴」「大湊」「下総」「那覇」にあるなどが示されている。
ここで、一つだけ見ておくとするなら、次のような「第一海洋業務隊」の課題だ。
「対潜戦(ASW)や潜水艦による作戦において、敵潜水艦の動向を探知する手段は音になる。しかし、潜水艦が発する音は、水温、水質、潮流、塩分濃度、海底地形、地磁気等の影響を受ける。対潜戦を効果的に遂行するためには、平素からこのような海洋環境データを収集し分析しておく必要がある。そのために使用されるのが海洋観測艦だ」ということだ。最新の観測艦「あかし」(26年3月就役)は「海洋データを収集する機能だけでなく、水中機器の施設・揚収機能も有している」ということだ。
以上のように、自衛隊における、実践的で部隊編成にこだわった、軍事インテリジェンス機能の形成が、おこなわれている。
≪4≫日本のインテリジェンス体制の現在地
【引用論文】茂田忠良(元内閣衛星情報センター次長)「『サイバー対処能力強化法』の全貌と課題」、『軍事研究』2025年8月号、92~105頁。
ここで、日本の現在のインテリジェンスの国際的水準を見ることにする。それは、欧米諸国との「集団的自衛権」に、直接関する問題を含むからである。日本の権力者たちは、そのことを、強く意識しているはずだ。
ここでは、2025年5月成立した「サイバー対処能力強化法」を論じた上記茂田氏の論文を学習する。
この法律、「サイバー対処能力強化法」自体は、2022年「安保三文書」——「国家安全保障戦略」の具体化例の一つである。
―——
2025年5月「サイバー対処能力強化法及びどう整備法案」が可決成立した。
★★★ここでは、同法の条文解釈にはかかわらない(字数の関係上、別稿に譲る。「アクセス・無害化処置」や「選別後通信情報」の使用限定の問題など諸問題がある、【と言われている】)が、ここでは、この法から見えてくる、日本のインテリジェンス体制の国際的な位置性★★★を、確認しておきたいと思う。
「この背景には、2022年12月に政府が閣議決定した『国家安全保障戦略』がある。同戦略は、サイバー空間に関して『サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる』こととし、そのため『能動的サイバー防御』を導入し、『重大なサイバー攻撃について、可能な限り未然に攻撃者のサーバなどへの侵入・無害化ができるよう、政府に必要な権限が付与されるようにする』と記載している」。本法律はその一環だとしているが、この法律が「欧米水準に達すると言えるのか」を検証するというのが、この茂田論文の趣旨と考える。
同法では、いろいろな政府による対処方法を定めている。だが、問題は、もっとサイバー対処のための「基礎的条件」に関する事柄にあると説明している。
「本法律自体の評価以前の問題として、我が国のサイバーセキュリティにおいては、米国と対比して、不足する二つの基礎的条件があることを指摘しておきたい。サイバーセキュリティに関するシギント機関の不在と巨大プラットフォーマーの不在である」。
■シギントの国際的連携への係りという課題
「(1)サイバーセキュリティに関するシギント機関の不在」という問題だ。
そこで、具体的にそれを示すため、「世界最強のインテリジェンス同盟」とされる「UKUSA」の紹介をしている。「英米両国は対日独伊戦争を遂行するため、シギントでも密接に協力した。この協力が大きな成果を上げたため、その協力関係を戦後も継続することとしたが、それが通称「UKUSA」と呼ばれるシギント同盟である。英UKと米USA両国の協定を軸として、その後カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。この五か国のシギント機関は密接に協力して、ワールドワイドに活動する世界最強のインテリジェンス同盟を構築してきたのである」。
こうしたことが「基礎的条件」の一つだ。
では、具体的にそれはどういうように役に立っているのか。
■アトリビューション支援の課題
「シギント機関による具体的なサイバーセキュリティ支援では、攻撃を受けた際の特定(アトリビューション)への貢献がある」。
「例えば、2014年に米国のソニー・ピクチァーズ・エンタテイメントが北朝鮮から大規模なサイバー攻撃を受けた際には、攻撃発覚後一か月程度でFBIが北朝鮮の犯行と断定している。このアトリビューションではNSA(米・国家安全保障庁――引用者・渋谷)が支援しており、NSAの看板プログラム『エックスキースコア』というシステムが貢献している。……かつてNSAの職員であったエドワード・スノーデンが、2013年に大量の情報を漏洩したが、漏洩資料の中に「X―Keyscore for Cybersecurity」という表題のプレゼン資料があり、サイバーセキュリティにおけるエックスキースコアの活用法を説明している」。また、スノーデン自身が、それを使ったことがあるという表記があるという。
さらに、シギント機関は、「脅威情報の事前把握」として、いろいろなハッカー通信の探知センサーを開発・使用している。例えば「イオンブルー」(カナダのシギント機関がUKUSA諸機関の協力を得て設置したものとされる。世界的に設置されている)などだ。茂田論文は「我が国のシギント機関の抜本的強化とサイバーセキュリティへの関与を議論すべき」と表明している。
■
巨大プラットフォーマーとの連携という課題
「(2)巨大プラットフォーマーの不存在」
「米国にはグーグル、アマゾンウェブサービス、マイクロソフトといった巨大プラットフォーマーがある。彼らは世界中に及ぶ彼らのプラットフォームから、日々、脅威情報などを収集している。その上でNSAと密接に協力している」。2020年につくられた「サイバーセキュリティ協働センター」がそれだという。「2023年夏の時点でIT企業など訳500社が参加している」という。
これに比して「残念ながら、日本には巨大プラットフォーマーが存在しない上、シギント機関と民間企業の密な情報交換もない。初期条件で既に大きなハンディキャップを背負っているのである。★★★法律だけを見ても、この基礎条件の違いは分からない★★★」と力説している。
■【B】合衆国のインテリジェンス体制
≪1≫「国家諜報長官(DNI)」とは何か
【引用論文】茂田忠良(元内閣衛星情報センター次長)「インテリジェンスの司令塔 『国家諜報長官』」、『軍事研究』2026年5月号、218~227頁。
上記のように日本で誕生した「国家情報局」。
「国家情報局長と対比されるべき米国の国家諜報長官(DNI)の権限似ついて論述したい」とするのが、引用論文の趣旨だ。
「国家諜報長官(…DNI)の権限に関する主たる法源は、1947年制定の国家安全保障法と1984年制定の大統領命令第12333号(EO12333)「合衆国諜報活動」である」と規定される。
「大統領命令は、……合衆国憲法第二条が定める大統領の行政権に根拠を置くものであり、行政各部を拘束するEO12333はインテリジェンス活動についての基本的行政命令であり、諜報コミュニティにとっての憲法とも呼ばれている」ものだ。
ここまでが、「国家諜報長官」の【位置付け】ということになる。
次に【国家インテリジェンス】の定義を見よう。
「国家安全保障法3条」には次のようにある。「『国家インテリジェンス』または『国家安全保障に関するインテリジェンス』とは、二以上の政府機関(agency)の所掌に関わるインテリジェンス」である。「なお、諜報源の種類、収集場所の国内外を問わず、また米国の国民・財産・利益に関する脅威、大量破壊兵器に関わるものを含むとしている。狭義の対外諜報にとどまらず、米国内におけるインテリジェンス活動や防諜活動(Counterintelligence)も含む幅広い概念である」。
本論は「国家諜報局長(DNI)」のいろいろな「情報アクセス」などをはじめとした「権限」を示しているが、最もわかりやすいものを上げてみよう。
「人事権限」だ。「EO12333」の「Part1.3(d)(e)は、DNIに諜報コミュニティを運営するための広範な人事権を与えている」。このうちの「Part1.3(d)」が、「選任についての同意対象」だ。
「次の職の選任に関しては、関係省・局の長官はDNIの同意を得るものとする。DNIが同意しない場合は、関係省・局の長官は、大統領に推薦してはならず、あるいは任命してはならない。……(任命権者は、②⑥⑧はそれぞれの長官、それ以外は大統領)」として次の部署があげられている。
「①国家安全保障庁(NSA)長官」、②「国家偵察局(NRO)長官」、③「国家地理空間諜報庁(NGA)長官」、④「国土安全保障省諜報・分析担当次官」、⑤「国務省諜報・調査(INR)担当次官」、⑥「エネルギー省諜報・防諜担当次官補」、⑦「財務省諜報・分析担当次官補」、⑧「連邦捜査局(FBI)国家安全保障部門(NSB)担当次官補」。
また「選任の際の協議対象」として、「次の職の選任に関しては、関係省長官は推薦または任命前にDNIと協議しなければならない(実質任命権者は全て大統領。但し、形式上、軍人の将官昇進は大統領、補職はそれぞれの長官)」とされ、以下があげられている。
①
「国防総省諜報・保全担当次官(USD(I&S))」、②「国防諜報庁(DIA)長官」、③「陸軍、海軍、空軍および海兵隊の諜報部門の制服組トップ」、④「沿岸警備隊諜報担当副司令官」、⑤「司法省国家安全保障担当次官補」。また、「罷免の勧告権」として「DNIは、CIA長官の罷免を大統領に勧告することができる」などとしている。
まさにこれらが、防諜コミュティの実体である。
こうして、発出されるDNIには様々な権限があるが、ここでは「秘密工作の監督権(EO Part1.3(b)(3)」として示されているものを見よう。
「DNIは、全ての進行中及び提案中の秘密工作(covert action)計画に関して、監督し大統領と国家安全保障会議に助言を提供する。
この規定の存在によって、DNIは防諜コミュティ内のどの機関が実行するにせよ、機敏な秘密工作の情報に必ずアクセスし監督することになる。これもDNI権限を補強する規定である」ということだ。
また「DNIの規則制定権」として、「諜報コミュニティ構成機関を拘束する規則を制定する権限を有している」という。
「DNIは、法3024条及びEO12333part1.3で与えられた権限を行使するために行政命令を発することができると理解されており、IC指令が多数発出されている」」ということだ。それは、50以上の事項に及ぶ。
例えば「国家諜報優先順位枠組」「諜報外交(外国政府との諜報協力)」「秘密情報の漏洩対策」「秘密区分管理及び配布統制表示制度」「防諜諸計画」等等として、展開しているということである。さらに、DNIは、「合衆国法典50篇44章(国家安全保障)の3162a条によって連邦政府の保全統括責任者に指定され、防諜コミュニティのみならず、政府全体の保全について責任と権限を有している」とされる(この行政規則はSEADと呼ばれている)。そこで例えば「国家安全保障審査指針」などの審査指針を発出しているという。
こうした、DNIの権限と、そのもとで組織されている防諜コミュニティ。これを、日本で、どのように構築するかが、高市一派としては問われていると推測する。反戦派としては、こうした戦争国家の諜報・防諜官僚組織網の形成(※これはあくまで一つの「推論」だが、国家情報局という統合行政は作ったわけだから、それに応じて、例えば必要に応じて各省庁の諜報・防諜行政部門を強化するとかが、はじまるかもしれない)を阻止することが課題だ。
★★★では次に★★★、こうした、インテリジェンス機関が指導部の一角をなして、どのような戦争に、どのように関わってきたか、また、その戦争を推進してきたか、【その事例となるもの】を見て行こう。
≪2≫インテリジェンスは戦争をどう諜報しているか――合衆国のシギント
【引用論文】茂田忠良(元内閣衛星情報センター次長)「米国『インテリジェンス』の実力」、『軍事研究』2023年12月号。54~67頁。
「2023年春、米国のインテリジェンス情報が何百件も漏洩された。……多様な諜報源の情報が含まれており、米国インテリジェンスの全体像を知るうえで貴重な資料である。特徴点を要約すると、先ずシギントの重要性である。漏洩情報には秘密区分のほか、「機微区画情報」区分(アクセス統制のための情報分類)が記載されており、その結果、諜報源が推定できる。インテリジェンスはその活動によって、ヒューミント(人的諜報)、シギント(信号諜報)、イミント(画像諜報)、マシント(計測・特徴諜報)に分類されるが、その中でもシギントの役割が大きい。今回の漏洩情報の七割程度はシギント情報と推定できるのである。また、シギント情報の多くは英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのUKUSA諸国と共有されており、UKUSAシギント同盟の重要性が理解できる」。
「なお、【】で示した(以下の文中で――引用者・渋谷)情報報告は現物を直接確認できたものであり、それ以外は漏洩情報を基にした各種報道によるものである」としている。
そうした位置づけから「2 ロシア軍の状況に関する情報」、「3 ウクライナ軍の状況に関する情報」、「4 その他の諸国に関する情報」「5おわりに」「→(1)米国のインテリジェンス力」「(2)シギントの重要性の再確認」へと展開している。
★★★ここでは、ウクライナに対する米国のシギントの位置づけを見ようと思う★★★。
「米国は基本的には強大なインテリジェンスを使ってウクライナの戦争努力を支援しているのであるが、他方、ゼレンスキー大統領、ブダノフ軍諜報局長など政府首脳の会話や通信を傍受するなどして、ウクライナ政府の動向と作戦計画に関する情報を収集している。
そして、ウクライナの作戦がロシアによる核爆弾使用などの過剰な反応をもたらす可能性がある場合には、米国は作戦の「延期」要請などの介入をしている。交戦中の支援国であっても、インテリジェンスの対象としているのである」。
以上のことがらを前提として、いくつか引用しよう。
「〇(23年――引用者・渋谷)2月中旬、ゼレンスキーはスヴィリデンコ第一副首相との会合で、ロシアからハンガリー向けの石油パイプラインを爆破してはどうかと話した。これはハンガリーの親露派のオルバン首相に対する怒りを表明したものであろう」。
「〇2月下旬、ザルジニー司令官との会談で、ロシア領内のロシア軍を攻撃できる長距離ミサイルなどの兵器がないことに懸念を表明し、★★★ロストフ市内のロシア軍をドローンで攻撃してはどうかと発言★★★した」(⇒これは、現在の、ロシア国内に対するドローン攻撃に直結する作戦の提起だったということだ――引用者・渋谷)。
「これらの情報から分かるのは、ゼレンスキー大統領はシビリアンではあるが、作戦を軍人に丸投げせずに、ウクライナ軍の作戦にも関与している姿である」。
―——
「米国はロシア軍部隊の所在や攻撃計画や攻撃目標など、作戦に使用可能な情報を日々入手しており、当然、ウクライナ軍に通報されている」。
例えば漏洩情報からは、次のようである。一つだけ引用しよう。
「【23年2月末~3月初:オデーサ、ミコラエフ攻撃計画】(シギント)によれば、ロシア国防省は、3月3日実施予定のオデーサとミコラエフに対するミサイル攻撃計画を策定した。攻撃の標的は、ミコラエフでは装甲車両の修理施設、オデーサではウクライナ製無人機Tu-141の保管と整備の担当工場、ゲバルト自走対空機関砲の保管場所、兵士約100人の所在地である」というようにで、ある。
また、米国のインテリジェンスは、「戦争当事国のロシアとウクライナだけではなく、ウクライナ戦争に係わるその他諸国の立場・動静についても有効な情報を広範に収集しており、これらの情報はこれら政府への米国政府による対応の基礎となっている」というものだ。
「国際関係におけるインテリジェンスの本質」は「戦争遂行で支援をすること、あるいは友好関係にあることは、インテリジェンスの標的としないことではないのである」ということである。
まさにそれは、同盟国間の、「報告―連絡―相談」の重要な戦略上の一環だという事になるだろう。
次にインテリジェンスにおいてシギント(信号諜報)が、戦争で如何に使用されているかを見ることにする。
★★★「ガザ虐殺戦争」におけるイスラエル軍のインテリジェンス作戦ということになる。感性的な不快感、道義的な怒り・激怒を押しとどめることはできない★★★。だが、これを書かないのは、それこそ、日和見主義だ。入植植民地主義ファシストがどのように虐殺戦争を組織したか。それを、分析することは、反ファシズム闘争における、軍事分析の基本の一つだ。
■【C―1】戦争国家イスラエルのインテリジェンスとガザ虐殺戦争
≪1≫
イスラエルのインテリジェンス・コミュニティ
【参考文献】小泉悠、小谷賢『戦闘国家』 PHP選書、2025。127~130頁)。
ここでは、指導・組織系統を箇条書きにする。
■「インテリジェンス・コミュニティ」の大枠
首相⇔(報告・指令)⇔首相府(モサド長官)=「情報担当長官会議(ヴァラシュ)」
→「外務省政治分析センター」
→「ナティーフ」
→「モサド」(対外諜報)
→「シャバク(シン・ベト)」(国内治安・防諜)
→「アマン(軍参謀本部諜報局)」(国内外の軍事情報担当)
(精鋭部隊は「8200部隊」…「通信傍受やサイバー防諜、AIを使った分析」。)
→「警察公安部」。
■この「アマン」については、その精鋭部隊「8200部隊」に関して次のような記述がある。
「2009年、世界で初めてのコンピューターウイルスによってイランの核開発施設が破壊される事件が起きました。このサイバー兵器「スタックスネット」はアメリカとイスラエルが共同開発したものですが、イスラエル側で開発に携わったのが8200部隊です」。「2015年に起きたアメリカでのテロ事件では、班員が銃撃事件後に死亡し、犯人のアイフォンがFBIに押収されます。このアイフォンはロック解除不能状態で、FBIはアップルに解除を要請するも断固拒否されてしまう。そこでFBIは、アイフォンをイスラエルのセキュリティー会社に持っていったところ、即座にロック解除に成功するわけです。このセキュリティ会社を担っていたのが、8200部隊の出身者と言われています」などだ。
―——
≪2≫イスラエル情報機関の概観
【引用論文】黒井文太郎(軍事ジャーナリスト)「イスラエル特殊部隊の全貌&ハマス裏人脈」、『軍事研究』2024年一月号、38~51頁)
■シンベト
「10月30日、イスラエル軍が『ハマスの人質となっていたイスラエル軍の女性兵士の奪還に成功したと発表したのだ。それによると、奪還は国内情報機関『シンベト』(保安庁。またの名を「シャバク」ともいう)』が情報活動によりその女性兵士の所在情報を入手、軍の特殊部隊との共同作戦で奪還に成功したというのだ」。
「シンベトについて説明すると、首相/首相府直属の情報機関で、イスラエル国内およびパレスチナ自治区(ガザ地区とヨルダン川西岸地区)での防諜・テロ対策を担当する。イスラエルの情報機関というと「モサド」が有名だが、★★★モサドは国外担当で、ガザ地区などはシンベトの担当だ★★★。今回のハマスの奇襲を事前に察知できなかった責任は第一にシンベトに責任があり、戦闘終結後に徹底調査すると約束している」。
「シンベトには『アラブ局』『』イスラエル・外人局」「」防護保安局」がある……アラブ局は日常的にパレスチナ自治区内で情報収集活動をしており、ときに強引な拘束・尋問も行う。イスラエルの軍や情報・治安部局の要員がパレスチナ人に成りすまして潜入スパイ活動を行うことを『ミスタービム(潜伏)』というが、シンベトはそれを優先的任務として行っている」。
「シンベトは重要施設警備や対テロの部門に武装部隊を送っているが、大規模ではない。西岸地区でテロ容疑者を追跡する場合、シンベトは『国境警察』隷下の対テロ特殊部隊『ヤマス』を出動させる。国境警察は警察の一部局で、国家安全保障省の傘下になり、首相直属のシンベトとは本来、指揮系統は別になるが、エルサレムを拠点とするヤマスは、シンベトの指揮下で実力執行部隊として出動することが多い」。
「シンベトの工作のなかで、重要なのが盗聴だ。……パレスチナ自治区内に潜入して盗聴器を仕掛けるといった工作では、ミスタービムの役割が重要だ。ハッキング工作でも、情報を抜き取るウイルスを標的のデバイスに感染させるには標的の交友関係や日常の行動を探るのが有効だが、そうしたところでもミスタービムが役立つ」。
「シンベトはこの10月のハマス奇襲後、その首謀者と参加者を暗殺する専門組織『ニリ』を新設したと公表している。……いわば特別捜査チームのようなものだろう。ただし、戦闘地域ではない西岸地域なら、機会があれば暗殺も実行するだろう」。
■モサド
「モサドには、外国での諜報活動を行う筆頭部局の『ツォメット(対外情報部)』、破壊工作を担当する『カエサリア(特殊工作部隊)』、通信傍受・ハッキングを担当する『ケシュト』がある。特徴的なのはカエサリアの隷下に暗殺チーム『キドン』を持つことだ」。他にも様々な部隊がある紹介がなされている。
★★以上のような軍事警察体制の下で、イスラエル国防軍の特殊部隊が説明される。
≪3≫イスラエル国防軍・特殊部隊
「まず、対テロ・ゲリラ戦に特化した強力な部隊が『サイェレット・マトカル』(参謀本部偵察部隊)」である。今回ガザでの人質奪還作戦でも主に実働するのは、この部隊と見られる。組織上、軍の情報機関である『アマン』(軍事情報部)の隷下部隊だが、実際には参謀本部の指揮下にあり、冷戦時代から数々の対テロ作戦・人質奪還作戦に投入されてきた」。「作戦に当たっては『アマン』(軍事情報部)隷下の他の部隊と連携することも多い。アマンは陸海空軍に所属しない独立機関で、情報部隊として『ハマン』(情報部隊)、通信傍受・ハッキング担当の『8200部隊』、偵察衛星・偵察機・ドローンなどの画像情報担当の『9200部隊』があり、それらも作戦時にはサイレット・マトカルを支援する」。
国防軍には、この他、特殊部隊がいくつも存在する。
「中央司令部第98空挺師団の隷下で運用される『オズ旅団』(第89コマンド旅団)だが、同旅団には、『デュブデバン』『マグラン』『エゴズ』ら独特の訓練を受けた」部隊だ。例えば「エゴズ(第621部隊)」は「少人数で行動する部隊で、敵地に長距離潜入して偵察と破壊工作をおこなう部隊である」。
「今回のガザ侵攻では、前述したサイレット・マトカルだけでなく、これらの部隊もおそらく投入されているものと推測される」・
「ガザ侵攻において、もう一つ注目される特殊部隊は戦闘工兵軍隷下の部隊だ。イスラエル軍では、地雷や仕掛け爆弾の敷設や処理、見物の爆破、瓦礫除去、橋梁の建設などを担当する工兵部隊の主力が、自ら戦闘もしながら任務をこなす戦闘工兵部隊と位置づけられている。その中で市街戦の前面に投入されるのが『ヤハロム』(特殊戦闘工兵隊)だ」。
「その隷下には、敵陣深くに潜入して偵察・破壊を実行する『ヤエル部隊』、敵の特殊な仕掛け爆弾やブービートラップ(罠)を回避する『ヤクサップ部隊』(爆弾処理隊)、地下トンネルの捜索・破壊を担当する『サム―ル部隊』(通称「ウィーゼル部隊」)、爆薬や専門器具で建物のドアや壁を壊す『ミドロン・ムシュラグ部隊』、軍用ロボットを運用する『へゼック部隊』などが編成されている」。
空軍には、「シャルダグ」(第5101部隊)がある。また、海軍の特殊部隊であるが、海軍特殊部隊の「海軍のサイェレット13はイスラエル海軍の艦艇部隊と協力し、海上での警戒と、自ら海上から侵攻に参加しているようだ」。★★たとえば「ガザ市内のシファ病院制圧の際、イスラエル軍に従軍取材して最前線からレポートしていたCNN特派員は、『前方でイスラエル海軍のネイビー・シールズが作戦中だ』と語っていた。おそらくサイェレット・13のことだろう」★★ということだ。
これまで、イスラエル軍の部隊編成を、インテリジェンス活動を中心に見てきた。
★★次に、入植植民地主義ファシストがおこなってきたガザ虐殺戦争の作戦をみていこう★★。イスラエル軍のシギント能力と攻撃方法。使われている軍事AIのシステムの名前は「ラベンダー」だ。【これまでも、だったが、特に】ここからは、怒りなしには執筆するのはむつかしいものとなる。
≪4≫ガザ虐殺戦争におけるインテリジェンス能力と攻撃方法
【引用論文】茂田忠良(元内閣衛星情報センター次長)「イスラエル軍のシギント能力と攻撃方法」、『軍事研究』2024年8月号 (68~81頁)。
※以下の記述にかんしては、「ハマスせん滅作戦」でイスラエルが取っている作戦内容という位置づけで、分析がなされている。それは、この論者の視点であり、また、戦況分析としては基本的な分析手法であろう。だからそれは、尊重されるべきであり、その線に沿って、私もこの学習ノートをつくった。
そして以上を前提として、それとは別に、★★私(渋谷)は、このガザ虐殺戦争似ついての私見では、パレスチナ人民のガザ地区からの強制移住(追い出し戦争)だと分析しているということだ。その内容は、昨年(2025年)、このブログで展開した「連載・ガザ虐殺戦争をやめろ!」に明らか★★である。
■ガザの死亡者数について
「ガザ保健省によれば、★★開戦からほぼ六か月たった2024年4月8日時点★★で、ガザ地区のパレスチナ人の死者は約3万3207人、負傷者7万5933人である。…死者のうち非戦闘員であることが明白な女性と子供の割合が約7割と非常に高い比率を占めている。……ガザ保健省はハマスの支配下にあるものの、死者の氏名を公表しており、これらの数字の信頼性は高いと評価されている」。
「国連児童問題調整事務所(OCHA)資料によれば、開戦約一か月後の11月10日現在、ガザ地区の死者数のうち一家族内で複数の死者が出ているのが1340家族、うち825家庭で6120人が死亡している。これは戦闘員が自宅にいるところを家族ごと殺害されたことを示している」。
この数字表現が、後述するイスラエルのファシストたちの、具体的シギント方法を照射するものに他ならないのだ。
さらに開戦6か月後の4月上旬の時点での、ハマス側戦闘員の死者数が6000~1万人なのに対し、イスラエル側戦闘員の死者数は259人であるとされる。
★★そこで、以上の数字から、分かることは次の様であるとされている。ここが、この記事の中心にあることだ。
「★★★イスラエル軍の損害が軽微でハマス側戦闘員の損害が多大である主要因は、イスラエル軍のインテリジェンスと闘い方による★★★と言える。」
「すなわち、高度なインテリジェンス能力と人工知能(AI)利用のデータ分析に基づいて、ここのハマス側戦闘員を特定して、これを主として航空攻撃によって殺害する戦い方である。同時に、この戦い方が民間人に甚大な損害をもたらしている」ということだ。
■シギント組織「8200」部隊のガザでの活動
「シギント組織である8200部隊がガザ地区における通話やインターネット通信のほぼ全てに監視能力を持っている」。
ガザからの「ガザ地区外との通信情報は全て、イスラエル領内の通信接続点で捕捉され、データ収集」されているとみられる。
「イスラエル当局は、ガザ地区内のスマートフォンに対して、容易にハッキングできる能力を持っている。イスラエル企業NSOグループが「ペガサス」という極めて高性能なハッキングツールを世界中に販売していたのは公知の事実であるが、このNSOグループの技術者の多くはシギント組織8200部隊のOBであり、イスラエル8200部隊は当然「ペガサスあるいはその同等品を使用できるとみて間違いない」。
「2021年における8200部隊司令官の匿名出版によれば、8200部隊はWhatsAppのグループ構成員、携帯電話の購入状態、携帯電話所有者の住所などを把握できている。また、同書によれば、携帯電話のデータから、写真や画像、通話相手、ソーシャルメディアの交友関係などのデータも収取可能である」。
■イスラエル軍の「標的類型」と「高価値標的」について
「シギント能力と戦争遂行の在り方を前提に、次にAI利用の攻撃標的の選定、随伴的損害(民間人の損害――引用者・渋谷)の許容度、そのほか具体的な攻撃方法について見て行こう」。
「イスラエル空軍によるガザ地区での攻撃対象は、概ね4類型に分類される」。
見やすいように、項目化する。
「第一類型」…「戦術標的」で「通常の軍事標的」と定義されるものだ。武装した戦闘員集団、武器庫、ロケット発射機、対戦車ミサイル発射機、発射坑、迫撃砲、指揮所、監視所など」。
「第二類型」…「地下標的」→「ハマスが市街地の地下に構築したトンネル」。
「第三類型」…「高価値標的(power targets)」→「市街地中心の高層ビル(事務所、住宅)」「大学、銀行、行政組織などの公共建築物」。
「第4類型」…「戦闘員の自宅」=「戦闘員の殺害」。
★★この場合、「ガザの民間人に多大なる死傷者を出している主因は、『第4類型』の『戦闘員の自宅』の爆撃である」と記述されている。
「ジャーナリスト、ユヴァル・アブラハムがインテリジェンス将校6人を匿名で取材して、詳細な調査報道(2024年4月3日)をしている。彼は、多数の民間人死傷者の原因について、イスラエル軍が『戦闘員の自宅』の攻撃で、特に開戦初期にAIを利用した標的結締プログラムに強く依存し、また付随的損害(民間人の損害――引用者・渋谷)の許容基準を緩和したためであるとしている。主として同人の調査報道を基にその実態を見ていこう」。
★★★ここで登場するのが、軍事AI「ラベンダー」だ★★★
≪5≫AI「ラベンダー」って何だ――イスラエル8200部隊は軍事AI「ラベンダー」をどのように使ったか
「ラベンダーとは、ガザの「戦闘員容疑者」のデータベースを作成するAIシステムである」。
「調査報道によれば、『ラベンダー』AIは、ガザ地区住民230万人に対する8200部隊の監視システムから収集した膨大なデータを基に、既知の戦闘員の通信データを訓練データとして学習し、彼らと同様の特徴(シグ二チャー)を示す者を検索抽出するのである。そして、特定人がハマスやイスラミック・ジハードの戦闘員である可能性の評価値を1~100で表示するという」。
「出版された書籍によれば、戦闘員と同じWhatsAppグループに属する者、数か月毎に携帯を交換する者、住所を頻繁に変更する者は、戦闘員可能性の評価値が高くなる。……要するに課題は、評価基準の設定と『ラベンダー』で抽出した容疑者に対してどれだけの追加的調査をして認定するか、という実際の運用方法であろう」。
しかし、これらは、ガザ戦争までは、「分析官が標的設定をするための補助手段として位置づけられて」いるものだったという。
★★だが、こうした一般的な活用から、ガザ戦争開始以降、「ラベンダー」の運用が変化してゆく。★★
「ところが、イスラエル・ガザ戦争では、ガザの一般戦闘員を大量かつ迅速に殺害することが至上命題となった」。ここから、「ラベンダー」の活用方法は、それまで以上に、過激になる。
「具体的には、開戦当初に『ラベンダー』がハマス側戦闘員として提示する人定情報から、数百のサンプルを無作為抽出して、サンプルの正確性を分析官が確認したところ、90%の正確性を確認したという。そこで、開戦約二週間後に『ラベンダー』が戦闘員容疑者として提示するものについては、分析官がその背景要員について個別に分析することなしに、戦闘員として扱うようになったという」。
具体的にはこういうことだ。
「開戦当初は、インテリジェンス部門に対してより多くの標的設定が要求されたため、評価基準の選定は下がり気味であり、戦闘員として表示する人数は増え、最多時には3万7000人のリストが作成されていた」。これは、開戦前にイスラエル軍当局が見積もっていた「3万人以上」という基準を超えており、そこからも、戦闘員ではない者も含まれてきた。
「警察官や民間防衛担当者」、「戦闘員の親族」、「戦闘員の形態を譲り受けて使用する者」などなどが含まれているという。
■「標的と住居」について――攻撃の核心問題
そこで次に「標的と住居」という節を見よう。
「戦闘員が夜間などに自宅にいるところを爆撃するのは、地下トンネルなどの詩節にいる戦闘員の攻撃と比べて、まず戦闘員の所在地店を特定することが容易であり、かつ住宅爆撃による殺害が容易であるからである」。
「『ラベンダー』AIを使用するなどして攻撃標的を選定すると、標的ファイルにリスト化される。この標的ファイルには、自宅の所在地や当該住宅での付随的損害(民間人の損害――引用者・渋谷)の見込人数の入力されている」。
「付随的損害見込は、住宅の大きさ、住民記録などから家族構成を推定するなどして設定される。そして、後述する付随的損害の許容基準にしたがって、最終的な攻撃標的の決定が行われるわけである。そして、位置評定システムに入力される」。
具体的にどのような、ことがおこなわれたかだが。
「2023年10月7日後は、まず戦闘員の中でも特殊作戦部隊員、対戦車戦闘員、イスラエル領内攻撃参加者などの重要一般戦闘員が入力された。
次に10月27日、地上軍がガザ北部に本格的に侵攻を開始すると、普通の一般戦闘員がそのまま入力されるようになり、万を超える戦闘員が入力されるようになったという」。
「位置評価システムは、対象者の自宅所在地情報がすでにデータベース化されており、数千人の対象者の現在位置をシギント情報で同時に追跡し、自宅に入った所で、攻撃担当将校に通報が届くようになっている」。
「但し、攻撃担当将校への通報と実際の攻撃との間にはどうしても時間差があるので、この間にハマス側戦闘員がいなくなって、残った家族だけが殺害されることも発生する」。
「また、現実の居住者数は、避難した数家族が寄り集まって隠れ住む場合があるので、設定家族数よりも増えてしまうこともあるが、これは考慮が意図されているという」。
ここで一つのポイントは「2023年10・7テロ」以前、イスラエル軍当局は、「ハマス高級幹部」ではなく、「一般戦闘員」に対する攻撃の場合、「付随的な民間人の死者は許容していなかった」が、10・7以降は「付随的損害を許容するようになった」ということだ。このことで、女性五や子供などの民間人に対する殺害が、けた違いに増加してきたのだ。
この論述は、2024年5月だが、この時点で、つぎのようなことが記述されている。
「ユヴァル・アブラハムの匿名取材によれば、2024年4月現在、一般戦闘員殺害のための一般住宅の爆撃は中止されているという。要因の一つは米国政府からの圧力であるが、他の要員は、ガザ地区の一般住宅の大部分はすでに損害を受けており、かつ住民の大多数が難民となってしまった現状では、軍が構築したインテリジェンスのデータベースと自動位置評定(自宅所在通報)システムの有効性が減少してしまったためという」。
「しかし他方、最近の国連資料を見ても、頻度は減少したかもしれないが、依然として一般住宅に対する爆撃による家族一緒の殺害は継続していることがうかがわれる。攻撃対象は幹部戦闘員であった可能性もあるが、一般戦闘員殺害のための一般住宅の爆撃が本当に中止されたかは不透明である」。
「なお、ハマスの高級幹部については、一人殺害のために民間人100人以上の損害も許容されており、現在でも爆殺は続いている」。として「2023年10月17日の『中部ガザ旅団』旅団長のアイマン・ナファルの殺害」など、いくつかの事例があげられている。「爆殺により民間人多数の死傷者を出している」ということだ。
※
そして本「引用論文」の論述は「民間人に甚大な損害が危惧される」でおわっている。
【C―2】 ガザ虐殺戦争の現在と、ネタニヤフ戦争の戦争犯罪の確認
≪1≫現在のガザ犠牲者に関する情報
2026年7月20日(18:03)配信の「ABEMATIMS」(発送源ANNニュース)によれば「ガザ保健当局は18日、過去48時間以内の死者が19人となり、10月の停戦発効後の死者が1144人になったと発表しました。また18日時点で2023年10月の戦闘開始時からの死者が7万3269人、負傷者は17万3811人に上ったと明らかにしています」ということだ。
「ガザ地区の報道官は19日、イスラエルに停戦合意の違反行為をやめさせるよう停戦の仲介者に要求しました」と報じている。
まさに、まだ、イスラエルのパレスチナ民衆に対する、ガザ地区からの追い出し政策は、続いているということだ。
ここで、ICC(国際刑事裁判所)の表明したイスラエル当局者に対する戦争犯罪の問題が再度、問われるだろう。
≪2≫ICCの戦争犯罪対象情報
2024年11月21日、ICC(国際刑事裁判所)は、イスラエルのネタニヤフ首相(当時)、ギャラント前国防相(当時)に、人道に対する罪と戦争犯罪の容疑で逮捕状を発行した。ICCは、ガザ地区で「戦争手段として飢餓という戦争犯罪に刑事責任を負うに足る合理的な根拠がある」とし、食糧、水、電気、医療物資の不足が、ガザで民間人の生活破壊をもたらし、死亡に追いやる事態をもたらしたとしている。
これに対し、ICCは、ハマス最高指導者のヤヒヤ・シンワル氏らにも、同等の逮捕状を請求した(→これらの★逮捕状請求は24年5月★)。
※ネタニヤフ首相とギャラント国防相に対しては、「ICCに関するローマ規程」第8条2(b)(xxv)戦闘の方法として飢餓の状態を故意に利用すること、第8条2(a)(iii)身体または健康に対して重大な傷害を加えること、第8条2(a)(i)殺人など、計7つの戦争犯罪と人道に対する罪を犯した刑事責任を負うと信じるに足る合理的な根拠がある」とした。
他方、ハマスのシンワル氏(★24年10月にイスラエル国家権力に殺害される――引用者・渋谷★)、ディアブ氏、ハニヤ氏の3人に対しては、「同規程第7条1(b)絶滅させる行為、第7条1(a)殺人および第8条2(c)(i)生命および身体に対し害を加えること、第8条2(c)(iii)人質をとることなど、計8つの戦争犯罪と人道に対する罪を犯した刑事責任を負うと信じるに足る合理的な根拠がある」とした。(「国際刑事裁判所、ネタニヤフ首相やハマス幹部計5人の逮捕状請求を発表」JETRO(日本貿易振興機構(ジェトロ)「ビジネス短信」2024年05月21日)
ICCには、独自の警察執行機関がない。このため、ICCに関するローマ規程締約国124か国・地域の協力に依存している。
この決定をめぐっては、オランダ、アイルランド、カナダ、南アフリカ共和国などが強力の表明することをしめしている(2024年11月現在)。
またこれに対し、イスラエル政府は、「ICCの決定は虚偽で不条理」とした、反論を表明した。さらに、当時の民主党バイデン政権も、「イスラエルの安全保障擁護」の立場から、「イスラエルとハマスに同等性はない」と主張、このICC決定に対し、反論している。
★★★ニューヨーク市のマブダ二市長は2026年9月に、ネタニヤフ首相が、ニューヨークである国連総会に音連れた場合、「ICCがあるオランダ・ハーグに送られるべきだ」と主張している★★★。
ただ、合衆国は、ICCの加盟国ではなく、逮捕状を執行する義務はない。
これは、以下に記述する、「ICE問題」と同じ、合衆国の戦争と排外主義に関する政策の問題になるだろう。
■【D】帝国主義国における差別・排外主義の問題――「血債・猛省」を対自化せよ
こうした差別・排外主義の問題は、日米の国内にも存在する。そういうものとして、ガザ虐殺戦争を、自らの国政にもある問題として内在化することが必要だ。
≪1≫米ICEの暴力行政
2026年、合衆国ではいわゆる「不法移民」摘発・身柄拘束・本国送還を国家暴力でおしすすめる、ICE(移民税関捜査局)や国境警備隊の、棒量的な摘発活動に対して、市民の怒りが爆発している。
ICEの予算は、年間約100億ドル(約1兆5000億円)だが、向こう4年間で訳750億ドルが追加されるという。また、人員は1万人から2万2000人に倍増されている。
そうした中、2026年1月、ミネソタ州ミネアポリスで、国境警備隊の捜査官に集中治療室看護師の男性が射殺された。また、その二週間前にも、ICEによる「不法移民」大規模摘発の活動が行われていた中で、アメリカ市民の女性、レネー・ニコル・グッドさん(37歳)がICEの捜査官に銃撃を受け殺害された。
ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長は「(ICEは)彼らは正当防衛だったかのように見せかけている、私自身その映像を見ましたが、皆さんにはっきり伝えたい。それは全くのでたらめです、ICE,ミネソタから出ていけ!」
「亡くなったグッドさんはアメリカ市民で6歳から15歳までの3人の子供の母親。最近ミネソタに越してきたということです」。
(FCI NY 2026/01/09→これは、日本で言うと、合衆国でやっているフジテレビのニュースだ)。
こうした中で、全米で、「NO ICE」の抗議行動が、展開された。
例えば、1月10日、ロサンゼルス、フィラデルフィア、ニューヨーク、首都ワシントンなどの主要都市で大規模なデモが行われた。また、オレゴン州ポートランド、カリフォルニア州サクラメント、マサシュウセッツ州ボストン、コロラド州デンバー、ノースカロライナ州ダーラムなどでもデモが行われるなど、全米1000以上の規模で行われた(2026.01,11Sun posted at 13:30 JST)。
―——
ロッカーのブルーススプリングスティーンは、「Streets Of Minneapolis」という、抵抗の歌を発表した。そして、「iTunesトップソングチャートで首位を獲得している。これは同プラットフォームにおける米国でのシングル曲売上ランキングだ。スプリングスティーンの楽曲は瞬く間に首位に躍り出て、ホット100で2週連続首位を獲得しているブルーノ・マーズの『I Just Might』に取って代わった」(Forbes 2016・02・03 16:30)。
この歌詞では「キング・トランプ」と大統領を批判しており、まさに「NO KING」(合衆国に王様はいらない)の表明となっている。そして、ICEらの移民取り締まり弾圧の犠牲となった、アレックス・プレティとレニー・グッドを追悼している。
だが、もう一つ、記憶にとどめておくことがあるだろう。
■「盗まれた国」の歴史を忘れるな!
それは、合衆国の歌手、ビリー・アイリッシュが、2026年のグラミー賞受賞コメント中にICEの執行に反対し、次のように発言したことだ。
※この賞は、ビリー・アイリッシュの大ヒットアルバム『HIT ME HARD AND SOFT』に収録の「ワイルドフラワー」が、第68回グラミー賞で、最優秀楽曲賞を受賞したものだ。
★★★「盗まれたこの国では不法な人なんていません。今何をして、何を言うべきか難しいですが、ただ、この部屋にいる皆さんが重要なこととして声をあげて、戦い、抗議し、行動を起こし続けてくれたらと思います」(universal music japan 2026.02.02)★★★。
これには満場の拍手が寄せられていた。
★★★「盗まれた国」とは、先住民を押しやり、植民地主義者が獲得した土地のことだ★★★。その歴史を忘却するな、とアイリッシュは表明している。
これは、戦後日本の反戦闘争では、「70年7・7華僑青年闘争委員会告発」を想起させ、その告発を受けて、新左翼運動で、様々に意思統一することになる「日本帝国主義抑圧民族の、アジア人民に対する★★血債・猛省★★」思想(大日本帝国によるアジア侵略戦争・植民地主義の歴史に対する日本国家の戦争責任—日本人民のアジア人民に対する「帝国主義抑圧民族としての」自己批判の思想)につながるものだと思う。
■トランプによる強権指揮
だが、トランプは2月18日、永住権(グリーンカード)の取得を待つ合法的な移民に対し、再審査を目的とした拘束権限を移民当局に与えた。
「連邦裁判所に提出された2月18日付のメモでは、「難民は米国入国から一年後、『検査と審査』のために当局の管理下に戻らなければならない」。「この拘束・検査要件は、一年後の再審査を確実にするものであり、入国後の審査を他の入国申請者と同等にする。公共の安全を促進するのが狙いだ」としている。
このことは、「永住権の未取得は国外追放の『根拠』や拘束の『適切な根拠』にはならないとしていた2010年の指針からの大きな転換となる」というものだ・
トランプ大統領の下、移民・関税捜査局(ICE)による拘束者数は、今月(2月——引用者・渋谷)、約6万8000人に達した。昨年の就任から約75%増加している。ミネソタ州では、永住権を持つ約5600人の合法的難民を対象とした政権の方針に対し、連邦地裁が1月に維持的な差し止めを命じている。
同地裁のジョン・タンハイム判事は、★★追加審査のために難民を逮捕した★★ことは複数の連邦法に抵触する可能性が高いと指摘した」(【ワシントン 18日ロイター】、2026年2月19日、午後4:01「トランプ政権 ICEの難民拘束権限を拡大」)。
合衆国では、トランプ一派による、以上のような排外主義入国管理政策に対する市民の抗議と抵抗が、広がっている。
この移民弾圧—排外主義は、アメリカ・ファーストのドンロー主義の一側面だが、その政策の誤りを示しており、合衆国内に反トランプの大衆的流動性をつくりだしてしまった。
トランプ一派がその、大衆的流動性を押しとどめ、消去しようとして打ち出した政策が、イラン侵略戦争である。流れを変えようという政策だ。
こうしたトランプ一派の政治の、その対極に、ニューヨーク市長マムダニ市長の誕生、6月下旬の連邦下院選挙の民主党予備選では、マムダニ氏が支持した左派候補3名の市内での勝利など、「民主党急進左派=民主社会主義者」という人たちの、諸議会における勢力が伸長する状勢がつくりだされている。
(※そこには、「生活費対策」(マムダニ市長の公約と現状に則しては、賃貸住宅の引き上げ率ゼロ、市営食料品店、二歳児向け無料保育、富裕層の高額なセカンドハウスへの課税など――無料バス導入については目途が立っていないなど)への支持がある)。(読売新聞オンライン 2026/07/04 07:14「急進左派のマムダニNY市長半年、生活費下げに一定の成果…富裕層向け課税で家賃凍結や市営食料品店設置」)
では日本ではどうか?
≪2≫
高市一派による排外主義出入国管理の強化
■2026年入管法の改正での「在留資格」などの管理強化
現在、日本政府は「不法滞在者ゼロプラン――協力推進パッケージ」という政策を展開中だ。
「出入国在留管理庁」のホームページでは、「不法残留者」は2026年1月で、約6万8000人としている。これは、2025年中に「退去強制手続」「出国命令手続」等の退去強制政策で約1万7000人が減少したが、同時に、「短期滞在者」などから、約1万3000人発生しているということなどが明記されているものだ。
政策として「入国管理」「在留資格・難民審査」「出国・送還」などでの諸政策を実施してゆくとしている。
こうした中、「在留資格」などの手数料上昇などの問題が起こっている。
入管法の改定では、外国人の在留資格に関する手数料の上限を、現在の「1万円」から「更新・変更は最大10万円」に、「永住許可は最大30万円」に、引き上げられた。これは「法令」の最高額であり、この限度に基づく「政令として」、政府方針としては「在留期間3か月以下で約1万円、5年で約7万円、永住許可で約20万円」を見込んでいると言われている。
★★この場合のポイントは、①在留申請は、長くなるほど、手数料が高くなる。②
「永住許可」は不許可リスクが高いという事だ。
「永住許可」申請の場合は、手数料だけから言えば、「永住」と「帰化」の違いを見るならば、「帰化」の方が、圧倒的に容易に安価になる。「永住許可の場合とは違い、「帰化申請」には、国に支払う印紙代などの申請手数料は発生しないからだ。
どうしても、日本のいろいろな業種で働きたい、あるいは、経営を維持したいと考えるなら、長期的に見て、「帰化」を選択するのが、妥当だと判断しても不思議ではない。
だが、★★その申請の場合、永住申請の厳格化として、在留期間5年必須化、帰化のための実質的な住居要件10年化、などの要件を満たしていなければならず★★、容易に取得できるものではない。不許可リスクが高い。つまり、政府の入管行政は、外国人の長期定住・国籍取得のハードルを高く設定する方向で、正確展開しているという事である。
このベクトルは違う角度から見れば、日本の市民社会において、★★★外国人は監視対象であるという位置づけに、ますます国家権力がシフト★★★してゆくことをしめしている。
また、「在留資格がなくなった」外国人に対する入管施設への収容政策で、多くの外国人が、施設内での人権無視のあつかいから、死亡する事件が発生している。この間、大きく取り上げられた事件では、2021年3月におきた、名古屋入管でのスリランカ人女性・ウィシュマさん(33歳)の死亡事故だ。これは、「送還可能になるまで」の間、長期収容される期間の中で発生したものだが、同様の事故・事件は多く、問題となってきた。
入管体制の差別行政には、こうした、「在留資格を無くした」外国人に対する排外主義的な施策などが前提にあることだ。
(※この問題は別稿で、個別に分析する予定だ)。
こうしたことは他方で、日本人と日本に在留や帰化をしようとする人に、「愛国心」の強制をうながすことにもなりかねない。「愛国心」は「内心の自由」の問題であり、「強制する」ものではない。
■「国旗損壊罪」のナンセンスーー「公判」を維持できるのか?
2026年の「第221回国会」では、「国旗損壊罪」(「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」)が可決成立した。自民、維新の与党と国民民主、参政の4党共同提出というものだ。
その「第2条」では次のように規定されている。
「人に著しく不快、嫌悪の情を推させる方法」で公然と国旗を損壊、除去、汚損した場合2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金に処する」というものだ。
では、どのように、その「方法」とやらを判断、認識するのか?
第2条2項ではこうだ。「前項の方法に該当するかどうかの判断は、行為の外形、首位の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して行うものとする。
そして第3条では「この法律の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する克人の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」とある。
これでは、それが、どのような行為なのか、具体的に断定する形が決まっているわけではない。
【一言で言って、ある「事件」が、この国旗損壊罪で、裁判となったとき、★検察は「公判を維持できるのか?」★】という問題である。
ザックリ言って、「どういう行為であれば維持でき、どういう行為であればできないか、損壊罪の要件を満たすか否か、(「維持できる・できない」の線引きとしての「行為認定の問題」)」という問題がある。→「それが条文には何も書かれていない」→「検事の恣意的な判断での起訴はダメ」→「廃案」に、となる以外ないものだ。
つまり法的形式性が、整っていないのである。
1999年成立の「国旗国歌法」には、「罪状」は付いていない。
■スパイ防止法制定で排外主義戦争国家に突入する高市一派
以上のような、入管行政をつうじた同化・排外主義と、ジャパン・ファーストな「愛国主義」の強要などが、市民社会の底流とされつつ、排外主義戦争国家にむけた国家改造法案が、制定されようとしている。
まさに本論■【A】で示したように、2026年国会で成立した「国家情報会議—国家情報局」の創設、を土台として、●「対外情報庁の創設」、●「情報要員養成機関の創設」、●「インテリジェンス・スパイ関連防止法制」の成立などが、目論まれているのだ。
こうした動きは、やがて、インテリジェンス機関を動力とした、戦争国家に戦後国家を変貌させてゆく可能性がある。
★★★合衆国やイスラエルのようなシギント国家に変貌する可能性も否定できない。その大きなメルクマールとなるのが、憲法9条改憲である★★★。
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【次回連載第12回予告】「トランプ一派と欧州議会主流派の距離——「連合国(UN)」として反ファシズムの指標をどこに置くか」(仮題)。【アップ予定】9月10日(夏休み宿題・編として)。