【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第5回】米中争闘戦のアジアーインド・太平洋地域における戦略地図と日米右派・高市一派≪はじめに≫≪1≫≪2≫≪3≫≪4≫
渋谷要
最終更新2026・04・15 21:40
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※本論での、「米・国家安全保障戦略2025」の訳は、「niming538の日記」2025-12-12,「米国国家安全保障戦略2025全文+翻訳(トランプによる前文付き)NSS2025」に依ります。
NSS(国家安全保障戦略)2025目次————
Ⅰ、序論―アメリカ戦略とは何か
1アメリカの「戦略」はいかにして道を誤ったか
2,トランプ大統領による、必要で歓迎される是正
Ⅱ、アメリカ合衆国は何を望むべきか
1, 我々は全体として何を望むのか
2, 世界において、そして世界から、我々は何を望むのか
Ⅲ、我々が望むものを得るために、アメリカが利用可能な手段とは何か
IV. 戦略
1. 原則 「国家利益の集中的定義」「力による平和(Peace Through Strength)」「非干渉主義への基本的傾向」「柔軟な現実主義」「国家の優位性(国家中心主義)」「主権と尊重」「勢力均衡」「アメリカ労働者重視」「公正性」「能力と実力主義」
2. 優先事項 「大量移民の時代は終わった」「中核的権利および自由の保護」「負担分担と負担移転」「平和を通じた再整列「経済的安全保障――『均衡ある貿易』『重要な供給網および重要物資へのアクセス確保』『再工業化』『防衛産業基盤の再生』『エネルギ―覇権』『アメリカ金融部門の覇権の維持・拡大』」
【★★以上、第2回★★】
3. 地域
「A、「西半球:モンロー主義に対するトランプ・コロラリー(――「参加させる」「拡大」)
【★★★以上、第3回、第4回★★★】
「B、アジア:経済の未来を勝ち取り、軍事的対立を防ぐ」(――「力の立場から主導する」「経済:究極的な利害」「軍事的脅威の抑止」)(★★★【今回】第5回、【次回】第6回★★★)
//「C、ヨーロッパの偉大さを促進すること」//「D、中東 負担を移し、平和を築く」//「E、アフリカ」。
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≪はじめに≫ イラン侵略戦争の戦況について/ホルムズ海峡封鎖作戦(中国に対するエネルギー封鎖であり、米中争闘戦の直接対決の意味を持つ)
米とイランの停戦協議(日本時間2026/04/12)だが、トランプ大統領は4月12日、自身のSNSに、「協議は順調に進み大半の論点については合意に至った」。だが、「核問題については合意が得られなかった」と投稿した。
そして「アメリカ海軍がホルムズ海峡への出入りを試みるあらゆる船舶に対する封鎖措置を開始する」と表明、「この封鎖には他の国々も参加することになるだろう」と主張している。
その理由として「私は海軍に対して、イランに通航料を支払ったすべての船舶を捜索し拿捕するよう命じた。違法な通航料を支払う者に公海上での安全な航行など決して許されない」ということだ。
同時にトランプ大統領は、「ホルムズ海峡でイランが敷設した機雷の破壊を始める」として、これに対してもしイラン側が攻撃を行えば徹底的に反撃すると警告している。
このことは、一つのことを意味している。中国への船舶・タンカーの輸送を止めろという事だ。米中争闘戦の現実だ。この「米中争闘戦」の現実から、以下の分析は、出発する。
(※ ここで、断り書きを言っておく必要がありそうだ。「赤いエコロジスト」は、中国共産党を、全体主義スターリニスト、広義には全体主義ファシストと規定してきた。一言で言うと、「赤いエコロジスト」にとって中国共産党・中南海指導部は、絶対的に非妥協な批判の対象だ)
≪1≫対中ディールの戦略的位置づけ――「アメリカ・ファースト」の経済戦略の考え方
●【30年以上にわたる「対中政策」の陥穽と、貿易不均衡の相互主義的再調整】
NSSのタイトル見出し「B.アジア:経済の未来を勝ち取り、軍事的対立を防ぐ」の冒頭、「力の立場から主導する」と言う節では、次の様である。
「トランプ大統領は、中国に関する、30年以上にわたる誤ったアメリカの前提認識を、単独で覆した。すなわち、市場を中国に開放し、アメリカ企業の対中投資を奨励し、製造業を中国に外注すれば、中国をいわゆる「ルールに基づく国際秩序」に組み込める、という考えである。これは実現しなかった」。
「中国は富み、強大となり、その富と力を自らの大きな利益のために利用した。アメリカのエリート層は、共和・民主両党にまたがる4代の政権にわたって、中国の戦略を進める意図的協力者であったか、あるいは現実を直視しない状態にあった」。こうしたことが「前提」となっている。
つづく「経済:究極的な利益」の項目では、「1979年に中国経済が世界に再開放されて以降、米中両国の商業関係は、根本的に不均衡な状態にあり、現在もそのままである」とされ、まさに、「成熟し裕福な経済と、世界で最も貧しい国の一つとの関係として始まったものは、ほぼ対等な関係へと変質した。にもかかわらず、ごく最近まで、アメリカの姿勢はそうした過去の前提認識に依拠したままであった」。
その結果、
「中国は、2017年に始まったアメリカの関税政策の転換に適応した。その一環として、中国は供給網に対する支配を強化し、特に世界の低・中所得国(すなわち、一人当たりGDP13,800ドル以下)において支配力を高めた。
これらの国々は、今後数十年にわたる最大級の経済的主戦場の一部である」。
つまり、これらの国々においては、中国の価値増殖(広義)が、アメリカを圧倒している。
「今後、我々は米中間の経済関係を再調整し、相互主義と公正性を優先して、アメリカの経済的自立を回復する。対中貿易は、均衡あるものとし……北京との間で真に相互に有利な経済関係を持続できれば、2025年時点で30兆ドル規模の経済は、2030年代には40兆ドルへと向かうはずであり、世界有数の経済大国としての地位を維持する上で、羨望すべき立場を確保できる」。
そこで重要なのは安全保障だ。
「重要なのは、これがインド太平洋における戦争を防ぐための、強力かつ継続的な抑止への注力と並行して進められなければならないという点である。
この二つを組み合わせたアプローチは、好循環を生み出し得る」。
さらに「アメリカ合衆国は、条約同盟国およびパートナー諸国と協力しなければならない」とされる。
「これらの国々は、アメリカの30兆ドル規模の国家経済に、さらに35兆ドルの経済力を加える存在であり、合計すれば世界経済の半分以上を構成する。……我々は、インドとの商業関係(およびその他の関係)を引き続き改善し、オーストラリア、日本、アメリカ合衆国との継続的な四か国協力(いわゆる「クアッド」)を通じて、ニューデリーがインド太平洋の安全保障に貢献するよう促す必要がある。
さらに、いかなる単一の競争国家による支配も防ぐという我々の共通利益に沿うよう、同盟国およびパートナー諸国の行動を整合させるための取り組みも行う」という。
●【「柔軟な現実主義」とディール(協商・取引)が「対中政策」の基本だ――2026NDSでの主張と方針】
さらに、「NSS2025」につづき、2026年1月に発表された、「国家防衛戦略(2026NDS)」では次のようである
(※ 国家防衛戦略2026年4月12日2026NDS」 ——U.S.Department of War 2026/1).(訳は「「milterm(安全保障、軍事及び軍事技術動向)」2026年1月26日、最終更新日時2026年1月27日 軍治」より) 。
2026NDSは、最初に「国防総省上級幹部、戦闘軍指揮官、防衛機関及び国防総省現地活動責任者宛の覚書 件名 2026年国家防衛戦略」 署名「米国防長官 ピーター・ブライアン・へグセス」と明記されたものだ。
その「中華人民共和国(PRC)」に関する項目では、次のように述べられている。
「あらゆる指標で、中国はすでに米国に次ぐ世界第二位の強国であり、19世紀以来、米国にとって最も強力な国家である。そして、中国が非常に重大な国内の経済的・人口統計的・社会的課題に直面しているとはいえ、その実力は増大しているという事実がある。
北京は近年、国内の優先事項を犠牲にして、すでに人民解放軍に莫大な資金を投じてきた。それでも中国は、もしそう選択すれば、さらに軍事費を増やす余裕がある-そして効果的にそうできることを示してきた。実際、西太平洋での作戦を想定した部隊から、はるかに遠方の目標を攻撃可能な部隊に至るまで、中国の歴史的な軍事増強の速度、規模、質はそれ自体が物語っている。
これは米国の国益にとって重要である。国家安全保障戦略(NSS)が認めるように、インド太平洋地域はまもなく世界経済の半分以上を占めるようになるからだ」。
※「インド太平洋地域は、購買力平価(PPP)ベースで世界GDPのほぼ半分を、名目GDPベースでも約3分の1をすでに生み出している。
その比重は、21世紀を通じて確実に拡大する。これは、インド太平洋がすでに、そして今後も、次の世紀における主要な経済・地政学的な主戦場の一つであり続けることを意味する」(NSS2025、「3.地域」「B、アジア」の「力の立場から主導する」の項目から)。
「したがって、米国国民の安全保障、自由、繁栄は、インド太平洋地域において強固な立場から貿易・関与を行う能力に直接結びついている。……だからこそ、国家安全保障戦略(NSS)は国防総省に対し、インド太平洋地域において軍事力の優位な均衡を維持するよう指示している。★★★中国を支配し、屈辱を与え、締め上げる目的のためではない。むしろ、我々の到達目標はそれよりもはるかに限定的で合理的なものだ。単に、中国も他のいかなる国も、我々や同盟国を支配できないようにすることである★★★。これには政権交代やその他の存亡をかけた闘争は必要ない。
むしろ、★★★アメリカにとって有利でありながら中国も受け入れ、その下で共存できる条件による、まともな平和は実現可能である★★★」。
まさに「柔軟な現実主義」とディール(取引=協商)が、対中政策の基本という事になる。だからかどうか。この「防衛戦略」には、台湾有事の記述が皆無となっている。そこで、台湾有事などのインド・太平洋での問題が、書かれているNSSに戻ろう。
≪2≫米中争闘戦の前提図――アジア太平洋を巡る「戦略ライン」
NSSの「3.地域」「B、アジア」での「軍事的脅威の抑止」の項目は次の様に展開している。
「長期的には、アメリカの経済的および技術的卓越性を維持することが、大規模な軍事衝突を抑止し、防止するための、最も確実な手段である」。
●【作戦地図と「列島線」など――中国人民解放軍における作戦地図】
NSS2025は言う。
「有利な通常戦力バランスの維持は、戦略的競争の不可欠な構成要素である。
台湾には、当然ながら多くの注目が集まっている。
それは一部には、台湾が半導体生産で支配的地位を占めていることによるが、主として、台湾が★★第二列島線(伊豆諸島―小笠原諸島―グアム・サイパンーパプアニューギニア ーー引用者・渋谷)★★への直接的アクセスを提供し、北東アジアと東南アジアを二つの異なる戦域に分断する位置にあるからである」。
ここで「第二列島線」という言葉が出てくる。これは次に出てくる「第一列島線」とともに、アジアにおける米中争闘戦の重要な用語であり、この「列島線」のもとに、いろいろな戦略的な軍事体系や作戦目標が設定されている。中国の「九段(十段)線」という作戦地図とあわせて、まず、こうした戦略地図に関する用語を、整理しておこう。
この「列島線」概念は、本来、合衆国が「中国封じ込め」のために設定した戦略ラインのことだったが、現在は、中国中南海も、使用している戦略ラインであり、対米防衛ラインといっていいだろう。つまり米中の以下の★「列島線」をめぐる攻防★が問題の軸になっているという事だ。
■【第一列島線】は、九州⇒沖縄⇒台湾⇒フィリピン⇒ボルネオ島にいたる戦略ラインだ。この領域は、まさに「台湾有事」の海域である。それは南シナ海・東シナ海・日本海ということになるが、「台湾有事」の際には、中国としては、この海域に米軍の艦船―空母や潜水艦を、侵入させないという事が課題となる。したがって、「制海権」の掌握と恒久的保持ということが、課題となっているところだ。
ひとつの問題は、中国人民解放軍は、そのため、この海域の防衛を、「島嶼線」を軸に設定している。が、これが、日本―台湾―フィリピンーインドネシアの領海―領土に抵触している。そして、スプラトリー諸島(南沙諸島)の各島の領有・実効支配に関する衝突、尖閣諸島問題、東シナ海ガス田開発問題などを起こす問題となっている。
なお、中国は、このラインを「中国近海」と規定している。「近海」防衛の目的は、それらの「海域に存在する中国固有の領土及び海洋権益の保全」だ。また、この「近海」防衛のため、第二列島線では、軍事作戦をおこなえるものとしている。(※文末注①「琉球は中国領か」があります)
■【第二列島線】は、伊豆諸島⇒小笠原諸島⇒グアム・サイパン⇒パプアニューギニアに至る戦略ラインだ。第二列島線は「台湾有事」との関係では、中国軍が米海軍の増援を阻止・妨害する海域と設定されている。これと連動するものとして、インド洋における中国海軍基地が、例えばミャンマー国軍との軍事協力により、ミャンマーの港湾(大ココ島)を使っている。こうした、海軍基地の拡張も注視する必要があるだろう。
※【第三列島線】としてハワイ⇒南太平洋の島嶼国サモア⇒ニュージーランドという戦略ラインがあるが、この解説については、本論では割愛する。
■【「九(十)段線」問題――国際法上の根拠はない】
これらと合わせて、「九段(十段)線」問題を見て行こう。
2023年8月中国は「23年標準国土地図」を発表した。ここでは南シナ海のほぼ全域の領有を主張するものとなっている「九段線」をさらに、「十段線」に拡張している。
つまり、従来の「九段線」(ベトナムーマレーシアーフィリピンと、南シナ海をグルッと回るように戦略ラインを設定しているもの、これは中国の領海を主張するものだが、2016年、ハーグの常設仲裁裁判所(国際司法裁判所とは別)は国際法上、法的根拠がないとの判断を示している/フィリピンの申し立てによるー※参照)。
この線をさらに拡張し、台湾の東部海域を囲った線を足して「十段線」として示している。「台湾有事」との関係で、台湾の領有権を主張するものにほかならないだろう。
※「南沙諸島などで中国が人工島などを造成している場所についても判断を下した。スカボロー、クアテロン、ファイアリークロスなどの各礁を「島」ではなく「岩」と認定。排他的経済水域(EEZ)は設けられないとした。さらにスービ、ミスチーフ、セカンドトーマスなどの各礁は、満潮時に水没する「低潮高地」(岩礁)だとして、EEZだけでなく、領海も設定できないとした」(日本経済新聞「南シナ海 中国の『九段線』に法的根拠なし 初の国際司法判断」2016/7/12 18:13より)。
≪3≫「台湾有事」——合衆国の戦略は「戦略的あいまいさ」政策
●【中国の台湾侵略の現実性について】
中国中南海は、「台湾の平和統一」をあくまで基本としつつ(対話での親中政党による政権交代・掌握などを媒介に)、米軍の「軍事演習」や、台湾への武器支援などに対処・対抗するために、対米戦略を強めている。
中国は、「台湾による正式な政府による独立の表明」、「台湾で内乱状態が起こったとき」「台湾が核兵器を保有したとき」、「台湾の内政に関する外国軍の介入」などで、台湾への人民解放軍の軍事侵攻を仮定の話として、表明してきている。例えば米軍を公然と台湾に配備すれば、中南海に対する挑発行為になるということだ。
こうした中で、この地域の安定をまずは、図るという事が、合衆国の権力者たちにおいても、前提となってきた。例えば、NSS2025では次のようである。
●【NSSでの「台湾有事」の想定——「あいまいさ」を外交の基本とした、米軍の布陣の考え方】
NSS2025は、次の様に展開している。
「世界の海上輸送量の3分の1が南シナ海を年間通過していることを考えれば、これはアメリカ経済にとって重大な意味を持つ。
したがって、理想的には軍事的優越を維持することによって、台湾をめぐる紛争を抑止することは最優先事項である。我々はまた、台湾に関する長年の宣言的政策を維持する。すなわち、アメリカ合衆国は、台湾海峡における現状を一方的に変更するいかなる行為も支持しない、という立場である」というのが、基本的な立場とされる。
この場合ポイントとしておさえておくべきは、合衆国は「戦略的あいまいさ」と呼ばれる外交方針を崩してはいないということだ。ホワイトハウスは、中国中南海政府を「一つの中国」政府とみとめており、台湾とは「断交」している。そして、「台湾有事」の際にも、米軍を派兵するかどうかという点も、「あいまい」にしている。だが、現在の台湾海峡の状態を★一方的に変更することに反対★だとの立場から、いろいろな外交を繰り広げているというわけだ。
例えば、「あいまいさ」ではなく、「台湾独立支持—援軍OK(これはアメリカ側からする「一方的な現状変更」と中共中南海に受け取られるメッセージだろう)」などということを鮮明化すれば、トランプは習近平たちと、大国間のボス交政治をおこなえなくなるだろう。それは、トランプ一派にとって、避けるべきリスクとなる。
●【第一列島線をめぐる問題】
そう言うことを踏まえつつ、戦略配置が問題となる。
NSS2025は言う。
「我々は、第一列島線のいかなる場所においても侵略を拒止できる軍事力を構築する。しかし、アメリカ軍がこれを単独で行うことはできないし、また行うべきでもない。
同盟国は、集団防衛のために、支出を増やし--そしてそれ以上に、実際の行動を--大幅に強化しなければならない。
アメリカの外交努力は、第一列島線の同盟国およびパートナーに対し、アメリカ軍が港湾その他の施設により広範にアクセスできるよう求め、自国防衛への支出を増やさせ、そして最も重要な点として、侵略抑止を目的とする能力への投資を迫ることに集中すべきである。
これにより、第一列島線沿いの海上安全保障問題が相互に連結されると同時に、台湾を奪取しようとするいかなる試み、あるいは当該島の防衛を不可能にするほど我々に不利な戦力均衡を実現しようとする試みを阻止する、米国および同盟国の能力が強化される」。
これが布陣の基本となる。
●【同盟国への軍事費分担責任要求】
「トランプ大統領が日本および韓国に対し負担分担の増大を強く求めてきたことを踏まえ、我々は両国に対し、防衛費の増額を促さなければならない。
その際の焦点は、敵対勢力を抑止し、第一列島線を防衛するために必要な能力--新たな能力を含む--に置かれる。
我々はまた、西太平洋における軍事プレゼンスを強化・堅固化する。
一方で、台湾およびオーストラリアとの関係においては、防衛支出の増加を求める断固たる言辞を維持する」。
「紛争を防止するためには、インド太平洋における警戒的態勢、防衛産業基盤の再生、我々自身ならびに同盟国・パートナーによる軍事投資の拡大、そして長期的な経済・技術競争に勝利することが必要である」。
このように、親米のインド・太平洋諸国の連携をアピールしている。
そして、こうしたNSSでの対アジア諸国に対する、「ステップ・アップ」(2026・3、ホワイトハウスでの日米首脳会談で、トランプ大統領が高市首相に述べた言葉)を提起しているのである。
●【米中争闘戦の今日的・帝国主義的特徴と高市一派】
★★こうして見てくると、米中争闘戦は★★、現在、中国の世界戦略地図を、米帝が解体しようと、ベネズエラ強襲・強奪戦争など南米、グリーンランド強奪政策、イラン侵略戦争、パレスチナ虐殺戦争の中東などで、主要には「一帯一路」の拠点国家や「反米国家」の解体を主目的に展開しているという事ができる。
そして、中国の存在するアジアでは、できるだけ、★ドンパチを避け、プレッシャーの体系のみを形成★するということに集中しているという作戦地図が見えてくるだろう。
こうした戦略は、かつて、「米ソ冷戦」時代においては、米ソの「相互依存・相互反発」の関係といわれたものに相即する。合衆国の権力者たちは、ソ連の「平和共存」政策を利用しながら、新植民地主義で、ソ連東欧圏を包囲し、ソ連東欧圏の経済的危機を増幅していった。
一方、ウクライナ戦線は、トランプとしては、着地点の設定に時間をかけているというところだ。はやく、ウクライナ当局、クレムリンなどと、いろいろな協商がしたいのである。トランプにとって、「ウクライナの領土交渉」は計算外だと考えた方がいいだろう。どういうことか。ウクライナは、クレムリンが侵略戦争を起こすまで、「一帯一路」の拠点国家だったのだ(※渋谷要ブログ「赤いエコロジスト」2022年3月11日、「『一帯一路』の帝国主義――米中冷戦の『初期』の分析として」参照)。それをクレムリンが、破壊した。それには中南海とクレムリンの何らかの契約があって可能となったと推測する余地がある話だ。そして、トランプは、バイデンがウクライナを支援したことを前提条件として、ウクライナに「和平案」提案と「鉱物資源協定」の締結を実施。これはウクライナという「一帯一路」の拠点国家を、中国から奪い、アメリカ寄りにしたという成果を形成した。そして、次の局面として、クレムリンとボス交をやり、ウクライナ支援は欧州のNATOが中心にやれという政策を形成しつつあるのだ。もちろん、ウクライナにおける「鉱物資源協定」で、クレムリンと山分けの話は、死んではいない。推測だが、クレムリンは、この協商計算に同意していると思われる。クレムリンは領土問題にトランプは関心がないという事はわかっている。少なくとも、トランプはクレムリンの同意を望んでいる。だから、ウクライナ問題のベクトルは、トランプにとって、「一帯一路」の拠点国家を破壊した、ということで、中国包囲網形成に、資する成功を収めているのである。だが、着地点は、まだ、未定だ。
以上の過程の中で、ウクライナの対露徹底抗戦は、困難を強いられているといえる。
そういう帝国主義ブルジョアジーの政策の作戦地図がトランプ一派の世界戦略地図なのだ。そして、この戦略地図の一端をアジアで積極的に担おうとしてきたのが、日米右派=高市一派だ。
≪4≫日米右派・高市一派の軍拡路線
●【「台湾有事」のシミュレーション】
ひとつのシミュレーションから始めよう。
「台湾支援のために、アメリカ軍を派遣するとしても、ウクライナ戦争と同様に、台湾への支援を武器供与、情報提供、訓練支援にとどめるケースはありえるだろうか。情報提供と訓練支援は可能であるが、問題は武器供与である。ウクライナの場合は、ポーランドと国境を接していたために、ポーランドに兵站拠点を置いて、陸路でウクライナに武器を供与できた。
しかし、台湾は島国なので、陸路での武器供与は不可能である。海上輸送か空輸になるが、台湾東部・北部周辺の航空優勢を確保しないと、空輸は困難である。海上輸送になると、先島諸島か沖縄本島に兵站拠点を置くことになる。そこからアメリカ軍の補給艦で台湾の港に武器、弾薬、燃料、食糧等を輸送しようとした場合、台湾東岸周辺海域で、中国海軍の艦船が待ち受けている。中国空軍の戦闘機部隊が展開している可能性もある。中国軍を撃破しないかぎり、台湾に武器、弾薬、燃料、食糧等を輸送することはできない。つまり、ウクライナ戦争のように、台湾への支援を武器供与にとどめることは不可能ということだ」(201~202頁)。
(福好昌治(軍事ジャーナリスト)「クアッドとオーカスは台湾有事に役立つのか?」『軍事研究』2023年7月号)
そこで、こういう想定でこうなった場合においては、日本の「存立危機事態」か、否か、が問題となるだろう。ここで、想起するべきは、NSS2025が、次のようにのべていたことと直結する話だ。
「その際(防衛費増額――引用者・渋谷)の焦点は、敵対勢力を抑止し、第一列島線を防衛するために必要な能力--新たな能力を含む--に置かれる」。
このことは、「防衛費」に限らず、「同盟国の責任」という概念におおきく包摂されたものだと考える必要があるだろう。
2025年11月07日、衆議院予算委員会で、高市首相は、有事問題に関する野党の★次の様な★質問に対して、「台湾有事=存立危機事態」との認識を示す、★★次のような★★発言をおこなった。まさに「日米右派・高市一派」のポイントをなすものだ。【この項つづく】
(※文末注①……【琉球は中国領か】 これは「釣魚島・尖閣列島」問題に端的だが。中国中南海の全体主義スターリニストの中には、現在の沖縄である、かつての「琉球王朝」が、中国が明―清朝の時代、清朝に貢納していた国家であったことから、沖縄は中国領だとする見解がある(インターネットで検索をかければ、ザーと出てくることだ)。ポイントは、これは、★清朝を宗主国★とする「冊封国」という従属国の規定である。つまり資本主義以前の古典的な、植民地主義の一形態なのだ。そして、琉球王国自体は、独立の国家を形成していた。つまり、宗主国の支配の下に、貢納制を前提に、いろいろな独立の共同体国家が存在するのが「アジア的国家」の特徴である(※マルクス「資本主義的生産に先行する諸形態」=通称・「グルントリッセ」(「経済学批判要綱」)中の、「フォルメン」と言われる論考、を参照せよ)。この貢納国家での琉球と清朝のやり取りは、1609年の薩摩藩による琉球侵攻(「掟十五条」により、琉球には外交権、貿易権に制限が加えられた)が起こり「日清両属」となっても消えず、さらに1873年、「琉球藩」となり、清への貢納が、1875年、明治政府によって禁止されても、琉球支配層の抵抗と清朝の抗議がつづくものとなっていた。そして1879年、沖縄県が設置され(琉球処分)、貢納関係は最終的に廃止された。なお、琉球全域が日本の領土になるのは、日清戦争での日本の戦勝によってである。
【ポイントはこの国家間の「貢納」制度は、宗主国への貢納である】という点である。これは、支配―被支配の関係としての植民地的従属を意味する、ということだ。★★「そういう形で植民地主義的支配の対象となった国・領域を、自国領土として主張するのか?」★★ということだ――※私自身は、「マルクス主義の綱領問題」という位置づけで言うならば、「日本国の一部としての琉球・沖縄自治政府樹立」という考えだ。)
★★★(次回連載・第6回予告 「米中争闘戦のアジアーインド・太平洋地域における戦略地図と日米右派・高市一派」≪4≫のつづきから)★★★