2026年5月3日日曜日

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第7回】米中争闘戦のアジアーインド・太平洋地域における戦略地図と日米右派・高市一派  ≪5≫安保三文書改訂問題と武器輸出問題  渋谷要

 

 

 

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第7回】米中争闘戦のアジアーインド・太平洋地域における戦略地図と日米右派・高市一派≪5≫安保三文書改訂問題と武器輸出問題

渋谷要

 

最終更新2026・5・04 15:10

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本論での、「米・国家安全保障戦略2025」の訳は、「niming538の日記」2025-12-12,「米国国家安全保障戦略2025全文+翻訳(トランプによる前文付き)NSS2025」に依ります。

 

NSS(国家安全保障戦略)2025目次————

、序論アメリカ戦略とは何か

、アメリカ合衆国は何を望むべきか

、我々が望むものを得るために、アメリカが利用可能な手段とは何か

IV. 戦略

1.   原則 2.   優先事項【★★以上、第2回★★

 3.   地域

A、「西半球:モンロー主義に対するトランプ・コロラリー(――「参加させる」「拡大」)

★★★以上、第3回、第4回★★★

 B、アジア:経済の未来を勝ち取り、軍事的対立を防ぐ」(――「力の立場から主導する」「経済:究極的な利害」「軍事的脅威の抑止」)(★★★【第5回】、【前回第6回】【今回第7回】★★★

 //「C、ヨーロッパの偉大さを促進すること」//「D、中東 負担を移し、平和を築く」//「E、アフリカ」。

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≪5≫【安保三文書改訂と武器輸出問題―――日本、米国製ドローン大量生産のプロジェクト……右派改憲に先行する「戦後国家」の破壊】

 

●【安保三文書改訂問題――「新しい戦い方(AI、ドローンなど)」が改定内容の一つに】

 

現在日本では、スタンド・オフ・ミサイル配備(長射程ミサイル⇒※)が進められている。また、これを一環として日米IAMD構想(統合)防空ミサイル防衛がすすめられ、2014年には、ハワイの米軍司令部に「太平洋IAMDセンター」が設置された。こうした、日米ミサイル一体化計画や、さらに航空自衛隊の航空中自衛隊への法改正。さらに沖縄・南西諸島軍事基地化がすすめられている。

 

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(※)「スタンド・オフ防衛能力の強化」……「令和7年版 防衛白書」「第Ⅲ部第1章第2節1 スタンド・オフ防衛能力」……「1基本的考え方 スタンド・オフ防衛能力とは、侵攻してくる艦艇や上陸部隊などに対して、その脅威圏の外から対処する能力である。長射程化され、迎撃を回避できる高い残存性をもつスタンド・オフ・ミサイルなどにより、脅威圏の外から攻撃することで、自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国に対する攻撃を効果的に阻止することができる。また、スタンド・オフ防衛能力は反撃能力にも活用されるものである。」

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(なお、IAMD構想と安保三文書に関しては拙論では、「日米安保軍の単一軍化をめざす日米IAMD構想(「——反撃能力」の概念と安保三文書)に関するノート」/本ブログ「赤いエコロジスト」2023/02/28を、参照のこと)

 

こうした戦争国家化を支える「日本版軍産複合体」の展開は、すでに、「防衛産業」では「防衛備品・設備」など、「機器」「車両」「武器」などの製造・受注・販売などの市場運営として展開されてきた。これに、後述するように、「武器輸出問題」、いわゆる「五類型」撤廃(⇒殺傷兵器輸出認可など)が加われば、その市場展開、生産―開発態勢は急速に向上することが予測される。これは同盟諸国の共同軍化の基礎の一つであると同時に、技術と市場全体の軍事化などに展開してゆくものだ。

 

さらに、4月27日(2026年)の、政府による★★「安保三文書」に関する改定★★の「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」の初会合では、★★「新しい戦い方」(AI、ドローン戦争などが基軸となる)★★、「継戦能力」創造・保持、「経済安保」の三点が、課題として挙げられたようだ。

 

これら三つに、「経済の軍事化」という概念を設定することで、戦争国家化の戦略地図が浮かび上がる構図が、見えてくるのではないか。また「非核三原則見直し」「原子力潜水艦導入」「対中政策」などが、課題としてあげられているという。

 

さらに、4月15日、高市首相とポーランド共和国のドナルド・トゥスク首相との会談(総理官邸)では、「ウクライナ支援で一致」。4月18日、小泉防衛大臣が、オーストラリアのマールズ副首相兼国防大臣と会談(メルボルン)し、オーストラリア海軍の艦船共同開発で合意した。海上自衛隊の最新鋭護衛艦「FFM」(もがみ型)能力向上型をベースにするものだという。日豪は、合衆国と同盟関係にある。共同開発によって軍事的連携を強化する狙いだ。

 

●【イスラエル製ドローンを購入するな!】

 

 このような武器取引の問題では、2024年、日本国内で、防衛省が「無人アセット(ドローンや無人潜水艇などのこと)防衛能力」の強化(※)のため、小型攻撃用ドローンを310機導入する、その場合、候補の一つとしてイスラエル製ドローンを導入候補機に含むとの情報が浮かび上がった、そして、防衛省は一般競争入札(2026年2月17日)の予告をおこなった。その策動に反対し、防衛省前で、抗議行動と、ハンガーストライキが、闘われた。結果、イスラエル製は入札に参加しないことになった(オーストラリアのディフェンド・テックス社が落札)。

イスラエルは、ガザで国際法違反の占領を行い、ガザでのジェノサイドを強行してきた。そして、ガザを攻撃ドローンの実験場としてきたのであった。実際にジェノサイドに使われたイスラエル製兵器を入札することは、虐殺への加担以外のなにものでもないだろう。それはイスラエル軍需企業の利益となるばかりでなく、ガザ虐殺者イスラエル製の兵器を購入するルートを容認することになる。

 そこで、防衛大学校卒業生らを中心に、闘いが取り組まれた。防衛省前抗議行動―ハンガーストライキの闘いだ。●2・17入札についてイスラエル製ドローンの採用をやめろ。●すべてのイスラエル製装備品の取得検討を中止せよ。取得済みの装備品に関して、イスラエル企業を排除せよ●防衛装備庁に「ビジネスと人権」監査部署を新設し、以後の防衛装備品調達に当たっては戦争犯罪や人権侵害、国際法違反への加担を防ぐため厳正な審査を行うこと。等々の「要求項目」(※この文では、文章として省略している部分がある)を発表した。前述したように2・17入札においては、イスラエル製の採用は、「不参加」という形で、外れた形となった。

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(※「無人アセット防衛能力」……「令和7年版 防衛白書 第Ⅲ部第1章第2節「3 無人アセット防衛力の強化」「1基本的考え方……「無人アセット(装備品)は、有人の装備品と比べて安価であることが多く、また、危険な環境下や長時間連続で運用することができる。さらに、AIArtificial Intelligence)と組み合わせて運用することにより、無人アセットを、同時に、かつ、大量に運用できるほか、運用する要員の養成も容易であるといった特性がある。

こうした特性を踏まえ、これまで有人の装備品が担っていた業務の効率化や、無人アセットによって新たに可能となるオペレーションに無人アセットを活用することで、任務に従事する隊員の危険や負担をできる限り減らしつつ、陸上、水上、水中、空中において、非対称的な優勢を確保することができることから、無人アセットを幅広い任務に効果的に活用していく」。

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こういう中で始動し始めたのが、日本によるこの米国製の殺傷型攻撃ドローンの生産である。

 

●【日米共同で米国製殺傷型攻撃ドローンの生産】

 

安保三文書改訂の内容は、すでに、実践としてはじまっている。それがAI.ドローンを使用した「新しい戦い方」だ。つまり、三文書改訂とは、“改訂を通して政策を開始する”の【ではなく】、現在の三文書には集約できない、【新しい課題、事業をやることで、それを、文書で追認】するという、ものにほかならない。

 

前提としては、高市内閣は、閣議と国家安全保障会議(NSC)の決定として、武器輸出原則の「5類型」を撤廃する方針を決定した(2026/4/21)。この脈絡において、以下のプロジェクトが展開されようとしているということである。

 

日米デュアルユース(軍民両用)協力での一番初めの計画として、殺傷型攻撃ドローンの生産が持ち上がっている。このドローン兵器は、実践に使われ、また、様々な第三国に輸出される可能性がある。このデュアルユースでの協力連携の構築は、この間、高市内閣が、防衛装備輸出原則「五類型」を廃止し、殺傷兵器の輸出を解禁した脈絡の中で、起こってきたことだ。

 

ドローン兵器は、全体主義ファシスト・クレムリンのウクライナ侵略戦争と、これに対するウクライナの徹底抗戦のなかで、兵器生産・技術革新がおこなわれ、ウクライナにとっては徹底抗戦の継戦能力を維持するものへと展開しており、まさにドローン戦争という局面を作り出している。

 

この事業には日米両国のドローン生産企業の約50社が、技術者、生産設備、技術開発などで連携するという。世界的に見れば、中国がこのドローン市場に大きな市場を開拓している。これに対抗した、軍事製品のサプライチェーン(供給網)を構築・拡大する計画だ。

 

所轄担当省庁としては、日本側は経済産業省、防衛省、合衆国は、国防総省、在日米国大使館が担当することになっている。

この脈絡の中で、例えば、AIの軍事技術への組織化に重要な役割を果たしてきたパランティア・テクノロジーズのピーター・ティール会長が、3月5日に、首相官邸で高市首相と会談するなど、協力体制が本格化している。(※国会答弁では高市首相は、パランティアとの技術協力について否定している)。

 

 「パランティアは優れた戦闘力と装備を備えていると証明された」。トランプ米大統領は10日、自身のソーシャルメディアへの投稿で、同社を名指しで称賛した。対イラン軍事作戦が展開されるなか、「敵(イラン)に聞いてみろ!」と続けた。

 実際、米軍にとってパランティアは欠かせない存在と言える。米国防総省の軍用AI政策「プロジェクト・メイブン」で基幹システムを提供・運営。米新興会社アンソロピックのAI技術と組み合わせ、これまでバラバラだった膨大な収集データを網羅的に分析し、どの標的を攻撃すべきか瞬時に導き出す仕組みだ」(毎日新聞2026/3/5 12:00「高市首相にも接触 イラン攻撃で米軍が頼るデータ解析企業の正体」)。

こうした、軍拡の技術的高度化が、これからの課題となっているのである。それはもうすでに、事業として実践されているものだ。

 

ここで、武器輸出に関する政府方針の変遷について見て行こう。

 

●【「殺傷兵器」輸出解禁への道――その歴史的出発点】

 

1945年、大日本帝国は、連合国に敗北した。連合国として日本を管理した合衆国は「大日本帝国」の【徹底した武装解除】にとりかかった。

 

その一つが、ファシスト国家「大日本帝国」の武装解除の最高法規である「憲法九条」である。★★★★だから、これは、日本側か、占領軍側(これは連合国の側、現在の「国際秩序」の側という事だ)か、という論争があるが、そんなことはどうでもいい。★★★誰が作ろうが関係なく★★★★、【大日本帝国というファシスト国家の武装解除としての意味と意義を待つ】ものに、変わりはない。その場合、「戦力不保持」「交戦権否認」「国際紛争解決手段としての武力行使の放棄」がその内容となる。

 

★★★そもそも以上の前提は、日本が戦後、国際連合(連合国=UN)に加盟するのは1956年だ、という事が決定的な話の元になっていなければならない。★★★

 

国連総会、1956年12月18日、日本の加盟を可決だ。もちろん、国連憲章の「敵国条項」の対象の国としての日本国の国際社会での位置関係は、変わらない。いつまた、ファシスト国家になるかわからない国なのだ。つまり、「憲法九条」は、「大日本帝国=ファシスト国家の復活を許さない」という「国際社会」の共通した意志のもとに、確認されてきたということだ。右も左も関係なく――このことをどう考えるかは別に――このことを、絶対に忘れてはいけない(【文末注】参照)。

 

国連憲章第53条は、安全保障理事会の許可なく、「敵国」の侵略行為があれば、それを排除できるとしている⇒今日、中国、ロシア、朝鮮というスターリン主義党国家権力起因の現代ファシスト国家権力——いずれも第二次大戦の戦勝国——が、現在の高市一派批判として、「日本の再軍備」を批判しているのは、この脈絡での話だ。

 

それは国内的には、戦後の日本国家を、平和と民主主義の国家として形成していこうとする、様々な人々(左翼や平和主義者だけではない。中道、保守系列の人々も含めての話だ)の【様々な舞台設定】を準備した。この場合、防衛問題は、「憲法九条」の政府解釈―内閣法制局解釈を基軸として言えば、「専守防衛」という軸で、国会論戦などが、おこなわれていくことになる。

 

●【日本の再軍備——日米安保体制の形成】

 

★★★だが、この歴史的出発点をなす時期は、同時に、「大日本帝国」というファシスト国家を解体したアメリカ帝国主義のヘゲモニーで、日本が、再武装してゆく過程であった★★★。ここで武器輸出問題をおおきく規定する安保(軍事同盟)の問題を振り返ろう。(※なお、日本国憲法制定の前日に、最後の「天皇の勅令」としてだされた「外国人登録令」をはじめとする戦後排外主義の問題は、本論別章で扱うものとする)。

 

憲法九条は、「戦力不保持」を明記していながら、自衛隊の合憲化のための解釈改憲になぜ無力だったのか。まさに法制定(1947年5・3)時は「国家正当防衛権の如きことを認むることが有害であると思う」とする1946年6月衆議院本会議での吉田首相の言明に象徴されているように、「9条」は「侵略戦争」に限らず、「自衛戦争」もまた否定するものとして解釈された。

だが、1945年以降の、朝鮮民族解放闘争の前進、中国革命勝利(1949年)などを受け、アジアに東西冷戦の戦争地図が形成されてゆく。合衆国の権力者たちはこれに対し、日本を「反共の防壁にする」(ロイヤル陸軍長官演説/48年1月6日)ことをめざし、日本帝国主義の復活を援助する政策を取り始めた。50年1月1日、マッカーサーは年頭の辞で「日本国憲法は自己防衛権を否定せず」と声明し、ここに〈九条は、自衛権を認めており、それに対応する国家組織が建設されてよい〉とする、いわゆる九条の空洞化が開始されることになったのである。

 

50年朝鮮戦争の勃発と前後して米帝は、朝鮮侵略戦争のために日本政府に協力を要請し、8月、警察予備隊令を公布した。さらに、52年、日米講和条約と同時に日米安保条約を発効し、日本帝国主義の復活、日米同盟の形成へと向かうのであるが、この過程を通じて九条は変更されてゆく。

 

警察予備隊から保安隊(52年発足)への改組が議論されていた52年3月の参議院予算委員会では、「自衛のための戦力は合憲」(吉田首相)と言う説が、また、保安隊から自衛隊(54年発足)への改組が議論されていた衆議院予算委員会では、「戦力なき軍隊」(吉田首相)が、さらに、これらをふまえて「自衛に必要な最小限の実力は合憲」とする自衛力論(内閣法制局)が説かれはじめた。

 

自衛隊発足時の参議院における「自衛隊の海外派兵禁止」決議をふまえつつ日帝は、自衛隊が「国民を守るためだけのもの」であると正当化し、自衛隊合憲論をアピールし、自衛隊建設に反対する人民の反戦の闘いをかわそうとしたのである。かかる「九条解釈」を積み上げていくことにより、1978年、有事の際の日米共同作戦を想定する「日米ガイドライン安保」へと至り、集団的自衛権――同盟国の攻守同盟――が展開されている。このようにして日帝は、九条があるにもかかわらず、自衛隊を増強してきたばかりか、三矢作戦計画などの有事立法研究——その有事作戦によって、治安出動で反政府勢力をせん滅・鎮圧などという許すまじき作戦計画・演習を展開してきたのであった。

これらが、1990年代⇒2000年代にかけての、PKO法⇒安保法制=集団的自衛権法制化へと至る日本再軍備の初期の経緯である。

 

●【武器輸出問題―― 一国国防武器から集団的自衛権のための同盟国―間―共有武器の必要性へ】

 

以上のような安保体制の変遷のなかで、その一つの舞台に、「武器輸出」問題があったということだ。

 

【武器輸出三原則(1967)】

東西冷戦の真ただ中、「武器輸出三原則」(1967年、佐藤内閣) が成立した。これは、日本における「国防のための」防衛産業が、拡大したことと対応している。そこで、交易にルールを明記するという必要があったのである。

「以下の国に対しては武器を輸出しない」というもので、●「共産国」,●「国連決議により、武器等の輸出が禁止されている国」、●「国際紛争当事国またはそのおそれのある国」に対して、禁輸を命じたものだ。

 

これに加え1973年には、「政府統一見解」(1973年、三木内閣)として「上記以外にも武器輸出を慎む」とし、「事実上の全面禁輸」が確認された。これは「武器技術、武器の国際共同開発、投資、軍事施設工事請負もこれに準じる」というものだ。

さらに1981年「武器輸出問題等に関する決議」(「武器輸出について、厳正かつ慎重な態度を持って対処する」では、この方向が徹底されることになる。

 

【武器輸出原則の例外化】

だが、1983年「武器輸出原則の例外化」が提起される。これは当時首相であった中曽根首相の軍拡路線の一つだ。1983年(中曽根内閣)=日米防衛協力の分野で、米国側から技術交流の要請が始まり、「対米国」について、三原則の「例外として対処」することになったのだ(「対米武器輸出供与」)。例えば1983年1月28日、参議院本会議で、中曽根首相(当時)は、「(武器輸出三原則は)日米安保に効果的運用のために必要な調整を禁じるものではない」と発言し、例外化が開始された。1983~2013年までの間に、21件実施されているという。例えば2013年(安倍内閣時)には「F35(ステルス多用途戦闘機)の製造等に係る国内企業の参画」がある。

 

【中曽根の軍拡政治】

この1983年、中曽根首相は、日米韓の軍事一体化のために、1月から目まぐるしく政治日程を組織している。【1・11】中曽根首相、訪韓、全斗煥大統領と会談し「日韓新時代」を声明した。【1・14】政府、米の要請により武器技術の供与を決定。【1・18】中曽根訪米、レーガン大統領に「日米は運命共同体」と声明。【1・19】「日本列島不沈空母化・四海峡封鎖」の中曽根発言問題化。【1・24】中曽根施政方針演説「戦後史の大きな転換点」。【3・12】日米防衛協力小委員会、シーレーンに関する日米共同作戦研究の開始を確認。【4・12】中曽根、ヤスクニ春季例大祭への参拝に際し、「内閣総理大臣たる中曽根康弘」を強調。【5・24】政府、行政改革大綱決定。

【6・14】首相の私的諮問機関「文化と教育に関する懇話会」発足。【10・26】天皇在位50年記念事業の一つとして、立川「国営昭和記念公園」開園(立川に地域戒厳令)。【11・9】レーガン来日、天皇・裕仁と会見。中曽根と会談し、相互防衛確認。【11・14】自民党政調会内閣部会靖国小委員会、公式参拝を「合憲」とする見解まとめる。

さらに1984年には、【3.31】★★★ 自衛隊中央指揮所の運用がはじまった。これは、83年11月の★国家行政組織法改訂★により、行政機構の内部部局の編成は、法律事項から政令事項に改訂されたため、★★国会決議を経ずに「政令」で★★設置されたものだ★★★。 また、【8・6】自民党安保調査会・法令整備小委員会で「スパイ防止法案第3次案」が作成された。(これは、1985年6・6議員立法として「国家機密法」を衆院に提出されたが、12・21廃案となっている)。さらに【11・21】中曽根、「日米共同作戦計画案」を了承(内容非公開)したというニュースがあった。

本論では日帝支配層のスケジュールの概観は、以上にとどめるが、こうした、政治日程、政治判断の構築と合わせて、武器輸出の政策が展開してきたということである。

 

【「防衛装備移転三原則——「5類型」とその廃止】

 

輸出緩和における規制ルールとしての★★「5類型」の新設★★――装備輸出緩和への転換は、2014年以降、安倍政権のもとで★★「防衛装備移転三原則」(2014年)★★の制定などとして本格化する。

このことは、集団的自衛権(安保法制——2016年制定)との関連を指摘するべきだろう。同盟国間での、武器・兵器の共有を通じた、共同作戦・連絡通信の円滑さなどの軍の一体化の前提の一つに、装備の共有があるからだ。だから、この三原則が今回、以下のように、変更された(「5類型」撤廃 =殺傷兵器の限定国への輸出)ことは、段階的に実現する計画としてあった、と分析しても何らおかしくはないだろう。

 

内容は次の様である。

●①「移転を求めない」⇒「締結した条約などの義務に違反する場合」「国連安保理決議に違反する場合」「紛争当事国への移転となる場合」。

 

●②「移転を認める」⇒「平和貢献・国際協力に資する場合」「日本の安全保障に資する場合」。

 

●③「移転先による適正管理の確保」⇒「目的外使用や第三国移転の際は日本の事前同意を義務付け」。

 

これにより、②のように「条件付きで」防衛装備輸出を認めることができるようになった。⇒そこで、輸出に関しては「規制」ルールが設けられた。

 

これが★★輸出に関する「5類型」★★といわれるものだ。

 

「救難・輸送・警戒・監視・掃海」である。これにより、殺傷力のある護衛艦、空母などの艦船、ミサイル、防空システム、戦闘機の輸出はできないことになっていた。

 

●【閣議と国家安全保障会議(NSC)による「5類型」の撤廃——「防衛装備移転三原則」の「一部改正」(「令和8年4月21日」)という法的位置づけ】

 

以上の五類型が今回、「撤廃」された。「防衛装備移転三原則」がすべて廃止されたわけではない。

 

だがこれで、≪殺傷兵器などをふくむ完全装備品の輸出≫ができることになったのである。もっとも、●「三原則」によって紛争当事国への防衛装備の移転は「禁止」されている。これは変わらない。問題は、「5類型」を廃止し、「非武器」と「武器」に分け、【殺傷力のある「武器」も、以下に示すような限定された諸国に移転できるようになった】、というものだ。

 

●輸出対象国は、防衛装備品技術移転協定の締結国・17か国(合衆国、イギリス、豪州、インド、フィリピン、フランス、ドイツ、マレーシア、イタリア、インドネシア、ベトナム、タイ、スウェーデン、シンガポール、UAE,モンゴル、バングラディシュ)に限定。

 

●武器(殺傷兵器)に関しては国家安全保障会議(NSC)の会合での審査を通過したもの(速やかに国会に通知するとされている)。⇒★★★※「5類型」廃止に伴い、「防衛装備移転三原則」に、2026年4月21日、「特に自衛隊法(昭和29年法律165号)上の武器(弾薬を含む。)に該当する完成品について」国家安全保障会議(NSC)の審査で承認された場合、「国会への通知および情報公開」をする【等】の、改正加筆部分が入ったということだ。★★★

 

こうした、同盟国間の武器輸出・兵器交易の緩和・全面化は、継戦能力を高めるとともに、同盟国軍の一体化を、技術面からも強化し、共同作戦などでの連携が効率よく一つの軍隊として動ける態勢をつくるうえで必要なものと、されている。以降、いろいろな国への護衛艦などの艦船などの供与など、様々な交流が展開されるという事になるだろう。

 

まさに★憲法改悪に先行する「戦後国家」の破壊にほかならない。★ ◆

 

★★【連載第8回】予告……自民党の改憲問題について、高市一派の改憲内容に関するイデオロギーを分析する。 「高市改憲論の中心命題はどこにあるか?――憲法第97条削除と「人権」条項に対する破壊●

 

【文末注】 国連「(旧)敵国条項」と「反撃能力」の同盟国間での共有の意味

  

国連憲章「敵国条項」と「反撃能力」

 国連憲章で「敵国条項」といわれているものは、以下である。

・第53条【地域的取極(とりきめ——引用者)・機関による強制行動】1 安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の(「参考 第52条」参照」――引用者)地域的取極又は地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。

 

2本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。

 

(参考)第52条【地域的取極と地方的紛争の解決】この憲章のいかなる規定も、国際の平和及び安全の維持に関する事項で地域的行動に適当なものを処理するための地域的取極又は地域的機関が存在することを妨げるものではない。但し、この取極又は機関及びその行動が国際連合の目的及び原則と一致することを条件とする。

1 前記の取極を締結し、又は前記の機関を組織する国際連合加盟国は、地方的紛争を安全保障理事会に付託する前に、この地域的取極又は地域的機関によってこの紛争を平和的に解決するようにあらゆる努力をしなければならない。

2 安全保障理事会は、関係国の発意に基くものであるか安全保障理事会からの付託によるものであるかを問わず、前記の地域的取極又は地域的機関による地方的紛争の平和的解決の発達を奨励しなければならない」。

 

・第77条【信託統治制度の種類】1 信託統治制度は、次の種類の地域で信託統治協定によってこの制度の下におかれるものに適用する。現に委任統治の下にある地域。第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域、施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域。2前期の種類のうちのいずれの地域がいかなる条件で信託統治制度の下におかれるかについては、今後の協定で定める」と規定されている。

 

・第107条【敵国に対してとった行動の効力】 この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。

以上の三条が、「(旧)敵国条項」といわれるものだ。

 

 「敵国」とは第2次世界戦争において、「連合国」の敵国であった「枢軸国」のことでありドイツ、日本などが、それだ。

 

★★★★その敵国が、第二次世界戦争によって確定した事項を、無効にし、または排除した場合、国際連合加盟国や地域安全保障機構は、安保理の承認がなくても、無効・排除した敵国に対して、軍事的制裁を科すことが容認され、その行為は制止できないと解釈されるものだ★★★★。

 

現在問題になっている「反撃能力」に照らし合わせて考えるなら、「敵国条項」の存在は、「敵国」が、連合国側の国家と対等に交戦し合う資格を認めていないそこから言えることだが、だから、「敵国」の「反撃能力」は、否定されると解するのが自然だ。そこでこの「敵国条項」が「死文化」しているか、どうかが問題となる。

 この間、ロシアが日本に対してとった以下の対応も、この問題を根拠にしたものだ。例えば朝日新聞デジタル2019222202分配信の記事によれば次のようである。

ロシアの「ラブロフ外相は21日、ドイツ・ミュンヘンで16日に行った河野太郎外相との外相会談で、国連憲章に「(第二次大戦での)戦勝国の行いは議論の対象とはならない」との記述があると主張し、北方領土のロシアの主権を認めるよう迫ったことを明らかにした。インタファクス通信などによると、モスクワでのビジネス関係者らとの会合で述べた。ラブロフ氏は従来、「旧敵国条項」といわれる国連憲章107条には「第2次大戦の結果は変更できないと記されている」と主張している。外相会談でもこの条項に言及しつつ、河野氏にロシア側の原則的な立場を伝えたとみられる」。

まさに、これだと、2019年現在も、この「敵国条項」は「死文化」していないということになる。だから、この問題の歴史的経緯と、国連憲章における条文項目「削除」の手続きについて、確認することが大切だ。

「敵国条項」は「死文化」したとはいえない

この場合「「国連憲章」109条【再審議のための全体会議】2 全体会議の三分の二の多数によって勧告されるこの憲章の変更は、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の三分の二によって各自の憲法上の手続きに従って批准されたときに効力を生じる」ということがポイントだ。「全体会議」(1995年国連総会)では、死文化は採決されているが、「三分の二の国の批准」という事実は2023年の今日においても、日本国家は確認できていない。従って「死文化」はしていないと見るのが妥当だ。こうした歴史的経緯に対して日米IAMD構想は「反撃能力」=交戦能力を日本に付与するという意味をもっている。

 

★★★

 

 

2026年4月22日水曜日

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第6回】米中争闘戦のアジアーインド・太平洋地域における戦略地図と日米右派・高市一派≪はじめに≫≪4・前回からのつづき≫    渋谷要

 

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渋谷要 

 

最終更新2026・04・23 21:15

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※本論での、「米・国家安全保障戦略2025」の訳は、「niming538の日記」2025-12-12,「米国国家安全保障戦略2025全文+翻訳(トランプによる前文付き)NSS2025」に依ります。

 

NSS(国家安全保障戦略)2025目次————

Ⅰ、序論―アメリカ戦略とは何か

1アメリカの「戦略」はいかにして道を誤ったか

2,トランプ大統領による、必要で歓迎される是正

Ⅱ、アメリカ合衆国は何を望むべきか

1,   我々は全体として何を望むのか

2,   世界において、そして世界から、我々は何を望むのか

Ⅲ、我々が望むものを得るために、アメリカが利用可能な手段とは何か

IV. 戦略

1.   原則 「国家利益の集中的定義」「力による平和(Peace Through Strength)」「非干渉主義への基本的傾向」「柔軟な現実主義」「国家の優位性(国家中心主義)」「主権と尊重」「勢力均衡」「アメリカ労働者重視」「公正性」「能力と実力主義」

2.   優先事項 「大量移民の時代は終わった」「中核的権利および自由の保護」「負担分担と負担移転」「平和を通じた再整列「経済的安全保障――『均衡ある貿易』『重要な供給網および重要物資へのアクセス確保』『再工業化』『防衛産業基盤の再生』『エネルギ―覇権』『アメリカ金融部門の覇権の維持・拡大』」

【★★以上、第2回★★】

 

3.   地域

A、「西半球:モンロー主義に対するトランプ・コロラリー(――「参加させる」「拡大」)

【★★★以上、第3回、第4回★★★】

 

B、アジア:経済の未来を勝ち取り、軍事的対立を防ぐ」(――「力の立場から主導する」「経済:究極的な利害」「軍事的脅威の抑止」)(★★★【前回第5回】、【今回第6回】【次回第7回】★★★)

 

//「C、ヨーロッパの偉大さを促進すること」//「D、中東 負担を移し、平和を築く」//「E、アフリカ」。

 

―———

≪はじめに≫【日本をイラン侵略戦争の出撃基地にするな】

 

今回は、「日米右派・高市一派」の軍拡路線に関する「法制的立ち位置」を確認するものだ。その場合、「集団的自衛権」についての考え方が問題となる。

そうしたことを具体的に考えてゆく為にも、今現在、日米安保軍が、どのような共同を実践としておこなっているか? その一端を見ることから始めよう。それがこの≪はじめに≫でかいていることだ。

現在、自衛隊は出兵していない。2026年3月の日米首脳会談では、「停戦」となるまで(「交戦状態」が完全に終結するまでという意味だろう)」、それまでは、自衛隊のホルムズ海峡などへの出兵はないということで、トランプとの合意を取り付けた。(――この問題は【連載次回】で展開する)、だがそれとは別に、日本は「イラン侵略戦争出撃基地化」とでもいうべき状況にある。

 

 合衆国中央軍は、4月20日、沖縄(「キャンプ・ハンセン」を拠点とする)に駐留する海兵隊即応部隊「第31海兵遠征部隊」が、アラビア海で、イランの貨物船を拿捕したと発表した。イランの貨物船が6時間にわたる警告にしたがわなかったというのが、直接の理由だ。同部隊は3月27日に、米海軍の強襲揚陸艦「トリポリ」(米海軍佐世保基地を母港とする)とともに中東に到着、拿捕などの任務に着手している。さらに、沖縄・嘉手納基地に駐留する第18航空団から、米国とイスラエルのイラン空爆作戦のために派兵がなされているという。

(参照:※TBS NEWS2026年4月20日(参照:PBC 琉球放送より)タイトル「イランの港湾封鎖で米軍が貨物船に砲撃、沖縄駐留の米海兵隊即応部隊「第31海兵遠征部隊」が拿捕 米軍が映像公開」など)

 こうした現実は、他の日本の米軍基地においても、展開していくと考える必要があるだろう。

 この連載の「後の回で欧州」をとり上げるとき具体的に(手続きの問題も含めて)触れるが、欧州では、イタリアのメローニ政権をはじめとして、米軍がイラン出撃のために国内の基地を使うことを拒否するという政府が名乗りを上げ始めている。こうしたNATOの一部とは、逆の現象が日米安保軍でおこっているということだ。

2026年3月の日米首脳会談で、トランプ大統領が、高市首相に「ステップアップ」といい、「日本はNATOとは違う」と言った一つの意味(数個の意味があると思われるが――このことは【連載次回】に記述する)がここにあるだろう。

 こうした事実の背景・前提にある、高市一派の、「集団的自衛権」(日米同盟)の組み立て方の【法的根拠】をなす、その法制的立ち位置について、今回は、考えていきたいと思う。

 

 

 

≪4≫日米右派・高市一派の軍拡路線――その【法制的立ち位置】について

 

●【「台湾有事」のシミュレーション】(この「●」節は、前回の「連載第5回」、既出のもの)

 

ひとつのシミュレーションから始めよう。

 

「台湾支援のために、アメリカ軍を派遣するとしても、ウクライナ戦争と同様に、台湾への支援を武器供与、情報提供、訓練支援にとどめるケースはありえるだろうか。情報提供と訓練支援は可能であるが、問題は武器供与である。ウクライナの場合は、ポーランドと国境を接していたために、ポーランドに兵站拠点を置いて、陸路でウクライナに武器を供与できた。

しかし、台湾は島国なので、陸路での武器供与は不可能である。海上輸送か空輸になるが、台湾東部・北部周辺の航空優勢を確保しないと、空輸は困難である。海上輸送になると、先島諸島か沖縄本島に兵站拠点を置くことになる。そこからアメリカ軍の補給艦で台湾の港に武器、弾薬、燃料、食糧等を輸送しようとした場合、台湾東岸周辺海域で、中国海軍の艦船が待ち受けている。中国空軍の戦闘機部隊が展開している可能性もある。中国軍を撃破しないかぎり、台湾に武器、弾薬、燃料、食糧等を輸送することはできない。つまり、ウクライナ戦争のように、台湾への支援を武器供与にとどめることは不可能ということだ」(201~202頁)。

 (福好昌治(軍事ジャーナリスト)「クアッドとオーカスは台湾有事に役立つのか?」『軍事研究』2023年7月号)

 

 そこで、こういう想定でこうなった場合においては、日本の「存立危機事態」か、否か、が問題となるだろう。ここで、想起するべきは、NSS2025が、次のようにのべていたことと直結する話だ。

 

「その際(防衛費増額――引用者・渋谷)の焦点は、敵対勢力を抑止し、第一列島線を防衛するために必要な能力--新たな能力を含む--に置かれる」。

 

このことは、「防衛費」に限らず、「同盟国の責任」という概念におおきく包摂されたものだと考える必要があるだろう。

2025年11月07日、衆議院予算委員会で、高市首相は、有事問題に関する野党の次の様な質問に対して、「台湾有事=存立危機事態」との認識を示す、★★次のような★★発言をおこなった。まさに「日米右派・高市一派」のポイントをなすものだ。

 

★★★ここから【連載第6回】新稿です★★★

 

●【「2025年11月07日、国会衆議院 会議録」より――「集団的自衛権」による日米安保軍のレベルアップ、そして軍拡路線のステップアップを象徴する高市首相の「台湾有事」発言】●

 

★★★中国では、「高市政権=日本軍国主義の再来・復活」などといった批判が、おこっている。中国政府は、高市首相の以下に見てゆくような「台湾有事発言」の撤回をもとめている。これに対し高市首相は、撤回に応じる気配はない。そして、これが、米中争闘戦の、アジアにおける合衆国の同盟国・日本の権力者の高市一派としてのスタンスにほかならない。

 まさに、中国当局の、「日本への観光旅行をやめろ」という中国民衆へのアピールも、そういう事のあらわれだ。

 まさに、こうした関係が、現在の日中関係の基本となりつつある。

 

かかる国会でのやり取りは、日本の対中関係、アジアでの、日本の米中争闘戦に対するかかわり方、を考えるうえで、前提をなすものにほかならない。

 【以上の位置づけ】から、本連載第6回は、この問題を、扱うものとする。

 

―——

2025年11月07日の国会質疑では、立憲民主党・岡田克也委員(当時)の質疑において、外交政策についての首相の姿勢に関する質問のあと、次に、有事法制での「存立危機事態」の認定についての質問となった。

 まず、この岡田委員と高市首相のやり取りを見る前に、★★このやり取りの前提となる「武力行使の新三要件」と有事「事態」の三つの規定を確認★★しておこう。

 

●≪武力行使の新三要件≫

 

≪まず、「武力行使の三要件」≫だが、★★2015年制定された「平和安全法制整備法」★★の内の★★自衛隊法及び事態対処法★★に「過不足なく書き込まれている」とされるもので、これは、2014年7月01日の閣議決定によるものを、基にしているものだ。

 

「集団的自衛権」の規定では、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態や国際社会の平和及び安全を脅かす事態」において,他国軍隊に対する支援活動が可能になった。 その場合、 「集団的自衛権」の行使が容認されるのは,「新三要件」という「厳格な要件が満たされる」場合に限られるとされ、 自衛の措置としての「武力の行使」のための「新三要件」を規定することとなった。

 

「(1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと,★★又は我が国と密接な関係 にある他国に対する武力攻撃が発生し★★(ここが、「集団的自衛権」の行使として新三要件」として対象化されているところだ)、これにより、我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な 危険があること。

 (2)これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な 手段がないこと。

 (3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」。ということである。

 

★★この「新三要件」と、安保法制の有事の「事態」との対応関係を質問したのが、ここで見る国会での岡田委員の質問ということになる。★★

 

【次に、法律として定められた有事の三つの「事態」を確認】する。その内の「武力攻撃事態」と「存立危機事態」の区別と連関が、岡田委員と高市答弁のやり取りの契機となったものだ。★★

 

●≪「有事」に関する三つの「事態」―「重要影響事態」「武力攻撃事態」「存立危機事態」≫

 

★★まず、その三つの「事態」を概観しよう。★★二つの法律が重要だ。

 

重要影響事態安全確保法(これは「周辺事態安全確保法」から「我が国周辺」という地理的概念を消去したものだ。2015年成立。★この法律では「武力行使不可」★)。

 

第一条 この法律は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態(以下★★「重要影響事態」★★という。)に際し、合衆国軍隊等に対する後方支援活動等を行うことにより、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)の効果的な運用に寄与することを中核とする重要影響事態に対処する外国との連携を強化し、我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

   

武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(「事態対処法」)(⇒2003年に施行された「武力攻撃事態対処法」に、2015年、集団的自衛権の行使を可能とする「存立危機事態」が新設された)

(定義)

第二条 この法律(第一号に掲げる用語にあっては、第四号及び第八号ハ(1)を除く。)において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。

 ★★武力攻撃事態★★ 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。

 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。

 

 ★★存立危機事態★★ 我が国と【密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し】、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。……

 

八(この8の「イーロ」は省略します)

 

ハ(イ―ローハの「ハ」) 存立危機事態を終結させるためにその推移に応じて実施する次に掲げる措置

 

ハー(1) 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であって、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるもの(以下「存立危機武力攻撃」という。)を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動。……

 

第三条  武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処においては、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊密に協力するほか、関係する外国との協力を緊密にしつつ、国際連合を始めとする国際社会の理解及び協調的行動が得られるようにしなければならない」。

―——★★★―――

 

★★ここで以下、問題となることは、武力行使不可の「重要影響事態」ではなく、「武力攻撃事態」と「存立危機事態」との関係だ★★。

 

★以上を確認したうえで、岡田委員と高市首相の質疑をみてゆこう★。やり取りは長いので、省略することをお許し願いたい(衆議院のホームページで全文読めるものです)。

 

―——

 

●≪「存立危機事態」の法解釈の非限定性≫

 

「○岡田(克)委員 新しい外交を切り開きたいという総理の思いは分かります。だけれども、前任者たちに対する敬意というものもしっかり持ちながらやっていただきたいというふうに思います。

 さて、二番目の存立危機事態について、少し時間をかけて議論したいというふうに思っています。
 実は、十年前にこの法律ができたときに、私は野党の代表でした。そのときの私の思いを申し上げますと、従来の個別的自衛権では対応できない事例があるということは認識していました。
 例えば、もう既に米軍が戦っているときに、米軍と自衛隊が共同で対処している、それで、米艦が攻撃されたときに、自衛隊は、日本自身は武力攻撃を受けていないという段階で、それを放置するというわけにはいきませんから、これをどういうふうに説明すべきか。一つは、個別的自衛権の解釈を拡張するという考え方。もう一つは、集団的自衛権を制限して認めるという考え方。両様あり得るなというふうに思っておりました。自民党の中には、全面的な集団的自衛権を認めるべきだという議論もかなりあったと思うんです。

 そういう中で★★安倍さんが出してきたのが、この存立危機事態という考え方★★でした。我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態ということであります」。

「我々は、★★★この概念がかなり曖昧であると★★★。例えば、我が国の存立が脅かされる、これはどういう意味だろうか。それから、国民の基本的権利が根底から覆される明白な危険、これも非常に抽象的な概念ですね。だから、★★武力攻撃事態みたいに我が国が攻撃されたというものと比べるとかなり抽象的な概念★★

ですから、これで果たして★★限定になっているんだろうか★★と」。

 

―——―

≪渋谷≫ここで、岡田委員は、「存立危機事態」は、解釈が広範で、限定されないものになる論脈をつくっていると指摘している。権力者の解釈によって、どうとでも意味づけできるものであり、限定をはっきりさせた法文ではないということだ。

 

 

●≪「武力行使三要件」に限定した高市発言の言い方に注意せよ≫

 


〇「岡田(克)委員「そこで、総理にまず確認したいのは、この存立危機事態、いわゆる限定した集団的自衛権の行使ですね、これ以外の集団的自衛権の行使、つまり、限定のない集団的自衛権の行使は違憲である、これは従来の政府の考え方だったと思いますが、そういう考え方は維持されていますか。

高市内閣総理大臣 憲法上、我が国による武力の行使が許容されるのは、いわゆる三要件を満たす場合の自衛の措置としての武力の行使に限られます。そして、この三要件は国際的に見ても他に例のない極めて厳しい基準でありまして、その時々の内閣が恣意的に解釈できるようなものではないと思っております。

 先ほど来、存立危機事態における武力の行使についてお話がございましたが、これも、限定された集団的自衛権の行使、すなわち、あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない必要最小限度の自衛の措置としての武力の行使に限られていて、集団的自衛権の行使一般を認めるものではなく、他国を防衛すること自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められないという政府の見解に変更はございません」。
———

≪渋谷≫以上では、高市首相は、「武力行使三要件」にあわせた、「集団的自衛権」の行使についての法解釈をのべているといえる。だが、★すでにこの三要件は「集団的自衛権」に対応して、上記に記したように「新三要件」に書き換えられている★点に注意するべきだ。

―———
(中略)

 

●≪「台湾有事」の想定では、何が考えられるか≫

―———

≪渋谷≫そこで、具体的なケーススタディで、どのように考えられるかが、課題となる。

―——―
「○岡田(克)委員  例えば、失礼ですが、高市総理、一年前の総裁選挙でこう述べておられるんですよ。中国による台湾の海上封鎖が発生した場合を問われて、存立危機事態になるかもしれないと発言されました。

 私も、絶対ないと言うつもりはないんです。だけれども、これはどういう場合に存立危機事態になるというふうにお考えだったんですか。お聞かせください」。

―——

≪渋谷≫どのように「存立危機事態」という概念を、どのような個別の事象に対して、適用できると、考えたのか、という質問だろう。

―———

 

高市内閣総理大臣 台湾をめぐる問題というのは、対話により平和的に解決することを期待するというのが従来からの一貫した立場でございます。

 

――――

≪渋谷≫これは、日本政府の立場の表明であり、中国中南海も基本は「平和統一」を目標にしていることの、確認ではない点に、注意する必要がある。中南海は、本連載第5回でのべたように、平和統一に対する例外規定として、武力統一の契機についてのポイントをいくつか挙げている。対中外交的には、「台湾有事」を質疑に出す場合、そのことを、まず確認する必要が、あったはずだ。

 

★★さらに★★★、このやり取りでは、中国中南海が「台湾問題は、中国の内政だ。外国は干渉するな」と言っていることについても、対応する必要があっただろう。少なくとも「中国の言う通り内政に関わることだが、この問題では、地政学上、多くのシミュレーションが、日本の有事に関わる可能性がある問題だとしている」ことぐらいは、外交的発言の問題として、言っておく必要はあったと考える。

―——―

 

(中略)

 

〇高市総理大臣「その上で、一般論として申し上げますけれども★★、今、岡田委員も、絶対にないとは言えないとおっしゃっておられました。いかなる事態が存立危機事態に該当するかというのは、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、全ての情報を総合して判断しなければならないと考えております★★。

 存立危機事態の定義については、ここで申し述べますと時間を取りますが、事態対処法第二条第四項にあるとおりでございます」。

―——

 ≪渋谷≫以下は、そこで、「海上封鎖」という事象(高市氏自身が、過去に語ったもの)では、どうかと岡田委員は問うている。

―———

 

●≪想定の中の「海上封鎖」をめぐって――同盟国に対する同盟軍支援の範囲が限定されていないという問題≫

―——

≪渋谷≫★★★この場合ポイントは、岡田委員の質問趣旨は、「存立危機事態」の行政権者による実践的・実務的解釈が、「武力行使三原則」の国防上の最低限度の必要によるという法的基準から、大きく乖離してゆく場合があるのではないか、ということだ、と考える。★★★
————


「○岡田(克)委員 海上封鎖をした場合、存立危機事態になるかもしれないというふうにおっしゃっているわけですね。
 例えば、台湾とフィリピンの間のバシー海峡、これを封鎖されたという場合に、でも、それは迂回すれば、何日間か余分にかかるかもしれませんが、別に日本に対してエネルギーや食料が途絶えるということは基本的にありませんよね。だから、どういう場合に存立危機事態になるのかということをお聞きしたいんですが、いかがですか。

 

高市内閣総理大臣 これはやはり他国に、台湾でしたら他の地域と申し上げた方がいいかもしれませんが、あのときはたしか台湾有事に関する議論であったと思います。その台湾に対して武力攻撃が発生する、海上封鎖というのも、戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて対応した場合には、武力行使が生じ得る話でございます。
 ★★例えば、その海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかのほかの武力行使が行われる、こういった事態も想定されることでございますので★★、そのときに生じた事態、いかなる事態が生じたかということの情報を総合的に判断しなければならないと思っております。
 単に民間の船を並べてそこを通りにくくするといったこと、それはそういった存立危機事態には当たらないんだと思いますけれども、実際に、これがいわゆる戦争という状況の中での海上封鎖であり、またドローンも飛び、いろいろな状況が起きた場合、これはまた別の見方ができると考えます。

岡田(克)委員 ★★★今の答弁では、とても存立危機事態について限定的に考えるということにはならないですよね。非常に幅広い裁量の余地を政府に与えてしまうことになる★★★。だから、私は懸念するわけですよ。

もちろん、日本の艦船が攻撃を受ければ、これは武力行使を受けたということになって、存立危機事態の問題ではなく、武力攻撃事態ということになるんだと思います。そういう場合があると思いますけれども、★★★日本の艦船が攻撃を受けていないときに、少し回り道をしなければいけなくなるという状況の中で存立危機事態になるということは、私はなかなか想定し難いんですよね★★★。そういうことを余り軽々しく言うべきじゃないと思うんですよ」。

―—―

≪渋谷≫ここに、「集団的自衛権」(同盟国との攻守同盟)」の解釈の範囲、位置づけをめぐる、政治的立場での解釈の違いの問題があらわれているということだ。「どこからが、同盟軍支援の対象となりうるか?」 支援の法的根拠、あるいは法治国家としての法規的資格の問題がある、ということだ。
——―

(中略)

 

〇高市内閣総理大臣 「先ほど有事という言葉がございました。それはいろいろな形がありましょう。

 ★★例えば、台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか★★。それは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それから偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それはいろいろなケースが考えられると思いますよ。だけれども、★★★それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースである★★★と私は考えます。
 

 実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府が全ての情報を総合して判断するということでございます。実に武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態に当たる可能性が高いというものでございます。法律の条文どおりであるかと思っております」。

岡田(克)委員 ちょっと最後の表現がよく分からなかったんです。武力攻撃が発生したら存立危機事態に当たる。どういう意味ですか。武力攻撃が誰に発生することを言っておられるんですか。

―———

≪渋谷≫高市首相は、同盟国(の艦船など)が、攻撃を受けたら、という解釈だ。高市は「台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか」と、前提をつけて質問に応じている。これは、「国際秩序の現状変更」に反対するという事だろう。だが本連載第5回でのべたように、ホワイトハウスも、「あいまい戦略」で、煙幕を張っているストーリーを、国会で日本の首相が、一つのリアルなケースとして挙げ、それに対して、日本政府の方針(「存立危機事態に当たる可能性が高い」と高市が言う言葉に則していうのなら)としての可能性の一つを、公言するというこということになっているのである。
————

(中略)


高市内閣総理大臣 武力攻撃が発生をして、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合という条文どおりでございます。

岡田(克)委員 だから、我が国の存立が脅かされるかどうか、それから国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるかどうか、その判断の問題ですね。★★それを、いろいろな要素を勘案して考えなきゃいけないという総理の答弁では、【規範としての、条文としての意味】がない★★んじゃないかと思うんですよ。もっと明確でなければ、★★★結局どれだけのこともできてしまうということになりかねないと思うんですね★★★」。◆会議録からの引用、終わり◆


———―

 

●≪高市首相の「台湾有事」発言は日本国家権力の「集団的自衛権」行使と日米共同軍の法制的立脚点を示している≫

 

これらが、「高市首相「台湾有事」発言」の、やり取りである。これを読んだ、渋谷の意見だが。

①まず法解釈として、この高市首相の発言では「集団的自衛権」の解釈は、無限に広がっていくということだ。高市一派にとっての同盟国・同盟軍である合衆国トランプ一派と米軍を強く意識したものだ。

②「集団的自衛権」を持つこと自体が、こういう無原則な広がりを戦時法制に持たせるという事である。だから、わたしは「集団的自衛権」に反対する。

③「台湾有事」がケーススタディとなり、少なくとも中国中南海の立場(基本は「平和統一」だ)が、この質疑で確認されていない時点で、これらの高市首相の発言は、対中外交を実践的に放棄した発言となっている。いやそればかりではない。それは、「対中争闘戦」としての意味を持つ程の危険なものだ、と考えた方がいい。しかも、前提として、首相が国会(国権の最高機関)の質疑で、法的根拠(★以上の様な内容で、高市首相が法解釈するということだが★、いずれにしろ、これが、公的な「首相判断」には変わりない)にもとづく発言【として】言うというとんでもない話となっているのである。この三点は、指摘しておきたい。

 

★★まさに、こうした「存立危機事態」の規定に典型的にみられるのが、高市軍拡路線の基本にあることだ★★。そして、この対中スタンスこそ、トランプ一派が世界戦略地図として実践している「米中争闘戦」への参戦、まさに高市一派の日米安保軍(日米共同軍)としての問題意識を、見事に表明するものとなっているのである。

 

★以上が、高市一派の軍拡の【法制的立脚点】の中心にあることだ。★

 

次に、こうした軍拡路線の様々に特徴的な政策を見て行こう。 【日本国内の軍備増強】と【安保三文書改訂問題】、さらに【インテリジェンス政策】【改憲問題】などにその大きな特徴があると考える。また、そこでは【経済安保ーサプライチェーン問題】などが重要な課題になってくるだろう。次にこれらの政策をみていこう【つづく】。

 

2026年4月15日水曜日

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第5回】米中争闘戦のアジアーインド・太平洋における戦略地図と日米右派・高市一派≪はじめに≫≪1≫≪2≫≪3≫≪4≫ 渋谷要

 

 

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第5回】米中争闘戦のアジアーインド・太平洋地域における戦略地図と日米右派・高市一派≪はじめに≫≪1≫≪2≫≪3≫≪4≫

渋谷要 

 

最終更新2026・04・18 14:39

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本論での、「米・国家安全保障戦略2025」の訳は、「niming538の日記」2025-12-12,「米国国家安全保障戦略2025全文+翻訳(トランプによる前文付き)NSS2025」に依ります。

 

NSS(国家安全保障戦略)2025目次————

、序論アメリカ戦略とは何か

1アメリカの「戦略」はいかにして道を誤ったか

2,トランプ大統領による、必要で歓迎される是正

、アメリカ合衆国は何を望むべきか

1,   我々は全体として何を望むのか

2,   世界において、そして世界から、我々は何を望むのか

、我々が望むものを得るために、アメリカが利用可能な手段とは何か

IV. 戦略

1.   原則 「国家利益の集中的定義」「力による平和(Peace Through Strength)」「非干渉主義への基本的傾向」「柔軟な現実主義」「国家の優位性(国家中心主義)」「主権と尊重」「勢力均衡」「アメリカ労働者重視」「公正性」「能力と実力主義」

2.   優先事項 「大量移民の時代は終わった」「中核的権利および自由の保護」「負担分担と負担移転」「平和を通じた再整列「経済的安全保障――『均衡ある貿易』『重要な供給網および重要物資へのアクセス確保』『再工業化』『防衛産業基盤の再生』『エネルギ覇権』『アメリカ金融部門の覇権の維持・拡大』」

★★以上、第2回★★

 

3.   地域

A、「西半球:モンロー主義に対するトランプ・コロラリー(――「参加させる」「拡大」)

★★★以上、第3回、第4回★★★】

 

B、アジア:経済の未来を勝ち取り、軍事的対立を防ぐ」(――「力の立場から主導する」「経済:究極的な利害」「軍事的脅威の抑止」)(★★★【今回】第5回、【次回】第6回★★★)

 

//「C、ヨーロッパの偉大さを促進すること」//「D、中東 負担を移し、平和を築く」//「E、アフリカ」。

 

―———

 

 ≪はじめに≫ イラン侵略戦争の戦況について/ホルムズ海峡封鎖作戦(中国に対するエネルギー封鎖であり、米中争闘戦の直接対決の意味を持つ)

 

 米とイランの停戦協議(日本時間2026/04/12)だが、トランプ大統領は4月12日、自身のSNSに、「協議は順調に進み大半の論点については合意に至った」。だが、「核問題については合意が得られなかった」と投稿した。

そして「アメリカ海軍がホルムズ海峡への出入りを試みるあらゆる船舶に対する封鎖措置を開始する」と表明、「この封鎖には他の国々も参加することになるだろう」と主張している。

その理由として「私は海軍に対して、イランに通航料を支払ったすべての船舶を捜索し拿捕するよう命じた。違法な通航料を支払う者に公海上での安全な航行など決して許されない」ということだ。 同時にトランプ大統領は、「ホルムズ海峡でイランが敷設した機雷の破壊を始める」として、これに対してもしイラン側が攻撃を行えば徹底的に反撃すると警告している。

このことは、一つのことを意味している。中国への船舶・タンカーの輸送を止めろという事だ。米中争闘戦の現実だ。この「米中争闘戦」の現実から、以下の分析は、出発する。

(※ ここで、断り書きを言っておく必要がありそうだ。「赤いエコロジスト」は、中国共産党を、全体主義スターリニスト、広義には全体主義ファシストと規定してきた。一言で言うと、「赤いエコロジスト」にとって中国共産党・中南海指導部は、絶対的に非妥協な批判の対象だ)

 

≪1≫対中ディールの戦略的位置づけ――「アメリカ・ファースト」の経済戦略の考え方

 

●【30年以上にわたる「対中政策」の陥穽と、貿易不均衡の相互主義的再調整】

 

NSSのタイトル見出し「B.アジア:経済の未来を勝ち取り、軍事的対立を防ぐ」の冒頭、「力の立場から主導する」と言う節では、次の様である。

 

「トランプ大統領は、中国に関する、30年以上にわたる誤ったアメリカの前提認識を、単独で覆した。すなわち、市場を中国に開放し、アメリカ企業の対中投資を奨励し、製造業を中国に外注すれば、中国をいわゆる「ルールに基づく国際秩序」に組み込める、という考えである。これは実現しなかった」。

「中国は富み、強大となり、その富と力を自らの大きな利益のために利用した。アメリカのエリート層は、共和・民主両党にまたがる4代の政権にわたって、中国の戦略を進める意図的協力者であったか、あるいは現実を直視しない状態にあった」。こうしたことが「前提」となっている。

 

つづく「経済:究極的な利益」の項目では、「1979年に中国経済が世界に再開放されて以降、米中両国の商業関係は、根本的に不均衡な状態にあり、現在もそのままである」とされ、まさに、「成熟し裕福な経済と、世界で最も貧しい国の一つとの関係として始まったものは、ほぼ対等な関係へと変質した。にもかかわらず、ごく最近まで、アメリカの姿勢はそうした過去の前提認識に依拠したままであった」。

 

その結果、

 

「中国は、2017年に始まったアメリカの関税政策の転換に適応した。その一環として、中国は供給網に対する支配を強化し、特に世界の低・中所得国(すなわち、一人当たりGDP13,800ドル以下)において支配力を高めた。
これらの国々は、今後数十年にわたる最大級の経済的主戦場の一部である」。

 つまり、これらの国々においては、中国の価値増殖(広義)が、アメリカを圧倒している。

 

「今後、我々は米中間の経済関係を再調整し、相互主義と公正性を優先して、アメリカの経済的自立を回復する。対中貿易は、均衡あるものとし……北京との間で真に相互に有利な経済関係を持続できれば、2025年時点で30兆ドル規模の経済は、2030年代には40兆ドルへと向かうはずであり、世界有数の経済大国としての地位を維持する上で、羨望すべき立場を確保できる」。

そこで重要なのは安全保障だ。

 

「重要なのは、これがインド太平洋における戦争を防ぐための、強力かつ継続的な抑止への注力と並行して進められなければならないという点である。
この二つを組み合わせたアプローチは、好循環を生み出し得る」。

 

さらに「アメリカ合衆国は、条約同盟国およびパートナー諸国と協力しなければならない」とされる。

 

「これらの国々は、アメリカの30兆ドル規模の国家経済に、さらに35兆ドルの経済力を加える存在であり、合計すれば世界経済の半分以上を構成する。……我々は、インドとの商業関係(およびその他の関係)を引き続き改善し、オーストラリア、日本、アメリカ合衆国との継続的な四か国協力(いわゆる「クアッド」)を通じて、ニューデリーがインド太平洋の安全保障に貢献するよう促す必要がある。
 さらに、いかなる単一の競争国家による支配も防ぐという我々の共通利益に沿うよう、同盟国およびパートナー諸国の行動を整合させるための取り組みも行う」という。

 

●【「柔軟な現実主義」とディール(協商・取引)が「対中政策」の基本だ――2026NDSでの主張と方針】

 

さらに、「NSS2025」につづき、2026年1月に発表された、「国家防衛戦略(2026NDS)」では次のようである

(※ 国家防衛戦略2026年4月12日2026NDS」 ——U.S.Department of War 2026/1).(訳は「「milterm(安全保障、軍事及び軍事技術動向)」2026年1月26日、最終更新日時2026年1月27日 軍治」より) 。

  2026NDSは、最初に「国防総省上級幹部、戦闘軍指揮官、防衛機関及び国防総省現地活動責任者宛の覚書 件名 2026年国家防衛戦略」 署名「米国防長官 ピーター・ブライアン・へグセス」と明記されたものだ。

 

その「中華人民共和国(PRC)」に関する項目では、次のように述べられている。

 

「あらゆる指標で、中国はすでに米国に次ぐ世界第二位の強国であり、19世紀以来、米国にとって最も強力な国家である。そして、中国が非常に重大な国内の経済的・人口統計的・社会的課題に直面しているとはいえ、その実力は増大しているという事実がある。

北京は近年、国内の優先事項を犠牲にして、すでに人民解放軍に莫大な資金を投じてきた。それでも中国は、もしそう選択すれば、さらに軍事費を増やす余裕がある-そして効果的にそうできることを示してきた。実際、西太平洋での作戦を想定した部隊から、はるかに遠方の目標を攻撃可能な部隊に至るまで、中国の歴史的な軍事増強の速度、規模、質はそれ自体が物語っている。

これは米国の国益にとって重要である。国家安全保障戦略(NSS)が認めるように、インド太平洋地域はまもなく世界経済の半分以上を占めるようになるからだ」。  

 

※「インド太平洋地域は、購買力平価(PPP)ベースで世界GDPのほぼ半分を、名目GDPベースでも約3分の1をすでに生み出している。
その比重は、21世紀を通じて確実に拡大する。これは、インド太平洋がすでに、そして今後も、次の世紀における主要な経済・地政学的な主戦場の一つであり続けることを意味する」(NSS2025、「3.地域」「B、アジア」の「力の立場から主導する」の項目から)。

 

「したがって、米国国民の安全保障、自由、繁栄は、インド太平洋地域において強固な立場から貿易・関与を行う能力に直接結びついている。……だからこそ、国家安全保障戦略(NSS)は国防総省に対し、インド太平洋地域において軍事力の優位な均衡を維持するよう指示している。★★★中国を支配し、屈辱を与え、締め上げる目的のためではない。むしろ、我々の到達目標はそれよりもはるかに限定的で合理的なものだ。単に、中国も他のいかなる国も、我々や同盟国を支配できないようにすることである★★★。これには政権交代やその他の存亡をかけた闘争は必要ない。

むしろ、★★★アメリカにとって有利でありながら中国も受け入れ、その下で共存できる条件による、まともな平和は実現可能である★★★」。

まさに「柔軟な現実主義」とディール(取引=協商)が、対中政策の基本という事になる。だからかどうか。この「防衛戦略」には、台湾有事の記述が皆無となっている。そこで、台湾有事などのインド・太平洋での問題が、書かれているNSSに戻ろう。

 

≪2≫米中争闘戦の前提図――アジア太平洋を巡る「戦略ライン」

 

NSSの「3.地域」「B、アジア」での「軍事的脅威の抑止」の項目は次の様に展開している。

「長期的には、アメリカの経済的および技術的卓越性を維持することが、大規模な軍事衝突を抑止し、防止するための、最も確実な手段である」。

 

●【作戦地図と「列島線」など――中国人民解放軍における作戦地図】

 

NSS2025は言う。

「有利な通常戦力バランスの維持は、戦略的競争の不可欠な構成要素である。
台湾には、当然ながら多くの注目が集まっている。
 それは一部には、台湾が半導体生産で支配的地位を占めていることによるが、主として、台湾が★★第二列島線(伊豆諸島―小笠原諸島―グアム・サイパンーパプアニューギニア ーー引用者・渋谷)★★への直接的アクセスを提供し、北東アジアと東南アジアを二つの異なる戦域に分断する位置にあるからである」。

 

ここで「第二列島線」という言葉が出てくる。これは次に出てくる「第一列島線」とともに、アジアにおける米中争闘戦の重要な用語であり、この「列島線」のもとに、いろいろな戦略的な軍事体系や作戦目標が設定されている。中国の「九段(十段)線」という作戦地図とあわせて、まず、こうした戦略地図に関する用語を、整理しておこう。

この「列島線」概念は、本来、合衆国が「中国封じ込め」のために設定した戦略ラインのことだったが、現在は、中国中南海も、使用している戦略ラインであり、対米防衛ラインといっていいだろう。つまり米中の以下の★「列島線」をめぐる攻防★が問題の軸になっているという事だ。

 

■【第一列島線】は、九州⇒沖縄⇒台湾⇒フィリピン⇒ボルネオ島にいたる戦略ラインだ。この領域は、まさに「台湾有事」の海域である。それは南シナ海・東シナ海・日本海ということになるが、「台湾有事」の際には、中国としては、この海域に米軍の艦船―空母や潜水艦を、侵入させないという事が課題となる。したがって、「制海権」の掌握と恒久的保持ということが、課題となっているところだ。

 ひとつの問題は、中国人民解放軍は、そのため、この海域の防衛を、「島嶼線」を軸に設定している。が、これが、日本―台湾―フィリピンーインドネシアの領海―領土に抵触している。そして、スプラトリー諸島(南沙諸島)の各島の領有・実効支配に関する衝突、尖閣諸島問題、東シナ海ガス田開発問題などを起こす問題となっている。

なお、中国は、このラインを「中国近海」と規定している。「近海」防衛の目的は、それらの「海域に存在する中国固有の領土及び海洋権益の保全」だ。また、この「近海」防衛のため、第二列島線では、軍事作戦をおこなえるものとしている。(※文末注①「琉球は中国領か」があります)

 

■【第二列島線】は、伊豆諸島⇒小笠原諸島⇒グアム・サイパン⇒パプアニューギニアに至る戦略ラインだ。第二列島線は「台湾有事」との関係では、中国軍が米海軍の増援を阻止・妨害する海域と設定されている。これと連動するものとして、インド洋における中国海軍基地が、例えばミャンマー国軍との軍事協力により、ミャンマーの港湾(大ココ島)を使っている。こうした、海軍基地の拡張も注視する必要があるだろう。

※【第三列島線】としてハワイ⇒南太平洋の島嶼国サモア⇒ニュージーランドという戦略ラインがあるが、この解説については、本論では割愛する。

 

■【「九(十)段線」問題――国際法上の根拠はない】

 

これらと合わせて、「九段(十段)線」問題を見て行こう。

20238月中国は「23年標準国土地図」を発表した。ここでは南シナ海のほぼ全域の領有を主張するものとなっている「九段線」をさらに、「十段線」に拡張している。

この「九段線」は、ベトナムーマレーシアーフィリピンと、南シナ海をグルッと回るように戦略ラインを設定しているもので、中国の領海を主張するものだ。だがこれは、2016年、ハーグの常設仲裁裁判所(国際司法裁判所とは別)が国際法上、法的根拠がないとの判断を示した(フィリピンの申し立てによるー※参照)ものである。

中国中南海は、この線をさらに拡張し、台湾の東部海域を囲った線を足して「十段線」として示したのだ。「台湾有事」との関係で、台湾の領有権を主張するものにほかならないだろう。

※「南沙諸島などで中国が人工島などを造成している場所についても判断を下した。スカボロー、クアテロン、ファイアリークロスなどの各礁を「島」ではなく「岩」と認定。排他的経済水域(EEZ)は設けられないとした。さらにスービ、ミスチーフ、セカンドトーマスなどの各礁は、満潮時に水没する「低潮高地」(岩礁)だとして、EEZだけでなく、領海も設定できないとした」(日本経済新聞「南シナ海 中国の『九段線』に法的根拠なし 初の国際司法判断」2016/7/12 18:13より)。

 

≪3≫「台湾有事」——合衆国の戦略は「戦略的あいまいさ」政策

 

●【中国の台湾侵略の現実性について】

 

中国中南海は、「台湾の平和統一」をあくまで基本としつつ(対話での親中政党による政権交代・掌握などを媒介に)、米軍の「軍事演習」や、台湾への武器支援などに対処・対抗するために、対米戦略を強めている。

 中国は、「台湾による正式な政府による独立の表明」、「台湾で内乱状態が起こったとき」「台湾が核兵器を保有したとき」、「台湾の内政に関する外国軍の介入」などで、台湾への人民解放軍の軍事侵攻を仮定の話として、表明してきている。例えば米軍を公然と台湾に配備すれば、中南海に対する挑発行為になるということだ。

 こうした中で、この地域の安定をまずは、図るという事が、合衆国の権力者たちにおいても、前提となってきた。例えば、NSS2025では次のようである。 

 

 ●【NSSでの「台湾有事」の想定——「あいまいさ」を外交の基本とした、米軍の布陣の考え方】


NSS
2025は、次の様に展開している。

「世界の海上輸送量の3分の1が南シナ海を年間通過していることを考えれば、これはアメリカ経済にとって重大な意味を持つ。
 したがって、理想的には軍事的優越を維持することによって、台湾をめぐる紛争を抑止することは最優先事項である。我々はまた、台湾に関する長年の宣言的政策を維持する。すなわち、アメリカ合衆国は、台湾海峡における現状を一方的に変更するいかなる行為も支持しない、という立場である」というのが、基本的な立場とされる。

この場合ポイントとしておさえておくべきは、合衆国は「戦略的あいまいさ」と呼ばれる外交方針を崩してはいないということだ。ホワイトハウスは、中国中南海政府を「一つの中国」政府とみとめており、台湾とは「断交」している。そして、「台湾有事」の際にも、米軍を派兵するかどうかという点も、「あいまい」にしている。だが、現在の台湾海峡の状態を★一方的に変更することに反対★だとの立場から、いろいろな外交を繰り広げているというわけだ。

例えば、「あいまいさ」ではなく、「台湾独立支持—援軍OK(これはアメリカ側からする「一方的な現状変更」と中共中南海に受け取られるメッセージだろう)」などということを鮮明化すれば、トランプは習近平たちと、大国間のボス交政治をおこなえなくなるだろう。それは、トランプ一派にとって、避けるべきリスクとなる。

 

●【第一列島線をめぐる問題】

そう言うことを踏まえつつ、戦略配置が問題となる。

NSS2025は言う。

「我々は、第一列島線のいかなる場所においても侵略を拒止できる軍事力を構築する。しかし、アメリカ軍がこれを単独で行うことはできないし、また行うべきでもない。

同盟国は、集団防衛のために、支出を増やし--そしてそれ以上に、実際の行動を--大幅に強化しなければならない。

アメリカの外交努力は、第一列島線の同盟国およびパートナーに対し、アメリカ軍が港湾その他の施設により広範にアクセスできるよう求め、自国防衛への支出を増やさせ、そして最も重要な点として、侵略抑止を目的とする能力への投資を迫ることに集中すべきである。
 これにより、第一列島線沿いの海上安全保障問題が相互に連結されると同時に、台湾を奪取しようとするいかなる試み、あるいは当該島の防衛を不可能にするほど我々に不利な戦力均衡を実現しようとする試みを阻止する、米国および同盟国の能力が強化される」。

これが布陣の基本となる。

 

●【同盟国への軍事費分担責任要求】

 NSS2025では。

「トランプ大統領が日本および韓国に対し負担分担の増大を強く求めてきたことを踏まえ、我々は両国に対し、防衛費の増額を促さなければならない。
 その際の焦点は、敵対勢力を抑止し、第一列島線を防衛するために必要な能力--新たな能力を含む--に置かれる。

我々はまた、西太平洋における軍事プレゼンスを強化・堅固化する。
一方で、台湾およびオーストラリアとの関係においては、防衛支出の増加を求める断固たる言辞を維持する」。

 

「紛争を防止するためには、インド太平洋における警戒的態勢、防衛産業基盤の再生、我々自身ならびに同盟国・パートナーによる軍事投資の拡大、そして長期的な経済・技術競争に勝利することが必要である」。

このように、親米のインド・太平洋諸国の連携をアピールしている。

 そして、こうしたNSSでの対アジア諸国に対する、「ステップ・アップ」(2026・3、ホワイトハウスでの日米首脳会談で、トランプ大統領が高市首相に述べた言葉)を提起しているのである。

 

●【米中争闘戦の今日的・帝国主義的特徴と高市一派】

 

★★こうして見てくると、米中争闘戦は★★、現在、中国の世界戦略地図を、米帝が解体しようと、ベネズエラ強襲・強奪戦争など南米、グリーンランド強奪政策、イラン侵略戦争、パレスチナ虐殺戦争の中東などで、主要には「一帯一路」の拠点国家や「反米国家」の解体を主目的に展開しているという事ができる。

そして、中国の存在するアジアでは、できるだけ、★ドンパチを避け、プレッシャーの体系のみを形成★するということに集中しているという作戦地図が見えてくるだろう。

 

こうした戦略は、かつて、「米ソ冷戦」時代においては、米ソの「相互依存・相互反発」の関係といわれたものに相即する。合衆国の権力者たちは、ソ連の「平和共存」政策を利用しながら、新植民地主義で、ソ連東欧圏を包囲し、ソ連東欧圏の経済的危機を増幅していった。

 

一方、ウクライナ戦線は、トランプとしては、着地点の設定に時間をかけているというところだ。はやく、ウクライナ当局、クレムリンなどと、いろいろな協商がしたいのである。トランプにとって、「ウクライナの領土交渉」は計算外だと考えた方がいいだろう。どういうことか。ウクライナは、クレムリンが侵略戦争を起こすまで、「一帯一路」の拠点国家だったのだ(※渋谷要ブログ「赤いエコロジスト」2022年3月11日、「『一帯一路』の帝国主義――米中冷戦の『初期』の分析として」参照)。それをクレムリンが、破壊した。それには中南海とクレムリンの何らかの契約があって可能となったと推測する余地がある話だ。そして、トランプは、バイデンがウクライナを支援したことを前提条件として、ウクライナに「和平案」提案と「鉱物資源協定」の締結を実施。これはウクライナという「一帯一路」の拠点国家を、中国から奪い、アメリカ寄りにしたという成果を形成した。そして、次の局面として、クレムリンとボス交をやり、ウクライナ支援は欧州のNATOが中心にやれという政策を形成しつつあるのだ。もちろん、ウクライナにおける「鉱物資源協定」で、クレムリンと山分けの話は、死んではいない。推測だが、クレムリンは、この協商計算に同意していると思われる。クレムリンは領土問題にトランプは関心がないという事はわかっている。少なくとも、トランプはクレムリンの同意を望んでいる。だから、ウクライナ問題のベクトルは、トランプにとって、「一帯一路」の拠点国家を破壊した、ということで、中国包囲網形成に、資する成功を収めているのである。だが、着地点は、まだ、未定だ。

以上の過程の中で、ウクライナの対露徹底抗戦は、困難を強いられているといえる。

そういう帝国主義ブルジョアジーの政策の作戦地図がトランプ一派の世界戦略地図なのだ。そして、この戦略地図の一端をアジアで積極的に担おうとしてきたのが、日米右派=高市一派だ。

 

≪4≫日米右派・高市一派の軍拡路線

 

●【「台湾有事」のシミュレーション】

 

ひとつのシミュレーションから始めよう。

 

「台湾支援のために、アメリカ軍を派遣するとしても、ウクライナ戦争と同様に、台湾への支援を武器供与、情報提供、訓練支援にとどめるケースはありえるだろうか。情報提供と訓練支援は可能であるが、問題は武器供与である。ウクライナの場合は、ポーランドと国境を接していたために、ポーランドに兵站拠点を置いて、陸路でウクライナに武器を供与できた。

しかし、台湾は島国なので、陸路での武器供与は不可能である。海上輸送か空輸になるが、台湾東部・北部周辺の航空優勢を確保しないと、空輸は困難である。海上輸送になると、先島諸島か沖縄本島に兵站拠点を置くことになる。そこからアメリカ軍の補給艦で台湾の港に武器、弾薬、燃料、食糧等を輸送しようとした場合、台湾東岸周辺海域で、中国海軍の艦船が待ち受けている。中国空軍の戦闘機部隊が展開している可能性もある。中国軍を撃破しないかぎり、台湾に武器、弾薬、燃料、食糧等を輸送することはできない。つまり、ウクライナ戦争のように、台湾への支援を武器供与にとどめることは不可能ということだ」(201~202頁)。

 (福好昌治(軍事ジャーナリスト)「クアッドとオーカスは台湾有事に役立つのか?」『軍事研究』2023年7月号)

 

 そこで、こういう想定でこうなった場合においては、日本の「存立危機事態」か、否か、が問題となるだろう。ここで、想起するべきは、NSS2025が、次のようにのべていたことと直結する話だ。

 

「その際(防衛費増額――引用者・渋谷)の焦点は、敵対勢力を抑止し、第一列島線を防衛するために必要な能力--新たな能力を含む--に置かれる」。

 

このことは、「防衛費」に限らず、「同盟国の責任」という概念におおきく包摂されたものだと考える必要があるだろう。

2025年11月07日、衆議院予算委員会で、高市首相は、有事問題に関する野党の★次の様な★質問に対して、「台湾有事=存立危機事態」との認識を示す、★★次のような★★発言をおこなった。まさに「日米右派・高市一派」のポイントをなすものだ。【この項つづく】

 

(※文末注①……【琉球は中国領か】 これは「釣魚島・尖閣列島」問題に端的だが。中国中南海の全体主義スターリニストの中には、現在の沖縄である、かつての「琉球王朝」が、中国が明―清朝の時代、清朝に貢納していた国家であったことから、沖縄は中国領だとする見解がある(インターネットで検索をかければ、ザーと出てくることだ)。ポイントは、これは、★清朝を宗主国★とする「冊封国」という従属国の規定である。つまり資本主義以前の古典的な、植民地主義の一形態なのだ。そして、琉球王国自体は、独立の国家を形成していた。つまり、宗主国の支配の下に、貢納制を前提に、いろいろな独立の共同体国家が存在するのが「アジア的国家」の特徴である(※マルクス「資本主義的生産に先行する諸形態」=通称・「グルントリッセ」(「経済学批判要綱」)中の、「フォルメン」と言われる論考、を参照せよ)。この貢納国家での琉球と清朝のやり取りは、1609年の薩摩藩による琉球侵攻(「掟十五条」により、琉球には外交権、貿易権に制限が加えられた)が起こり「日清両属」となっても消えず、さらに1873年、「琉球藩」となり、清への貢納が、1875年、明治政府によって禁止されても、琉球支配層の抵抗と清朝の抗議がつづくものとなっていた。そして1879年、沖縄県が設置され(琉球処分)、貢納関係は最終的に廃止された。なお、琉球全域が日本の領土になるのは、日清戦争での日本の戦勝によってである。

【ポイントはこの国家間の「貢納」制度は、宗主国への貢納である】という点である。これは、支配―被支配の関係としての植民地的従属を意味する、ということだ。★★「そういう形で植民地主義的支配の対象となった国・領域を、自国領土として主張するのか?」★★ということだ――※私自身は、「マルクス主義の綱領問題」という位置づけで言うならば、「日本国の一部としての琉球・沖縄自治政府樹立」という考えだ。)

 ※文末注②……【「アジア的国家」概念をめぐって】拙著・拙論では、この文脈に直接関係するものとしては、●(1)「共同体論とスターリン主義 単線的発展史観とアジア的問題」(『ロシア・マルクス主義と自由』所収 2007年、社会評論社)がある。節を紹介する。「『資本主義的生産に先行する諸形態』のとらえ方」「『アジア的』問題――スターリンによる『アジア的形態』の否定」「ロシアの土地共有制を評価したマルクスーー『発展段階』以外のモチーフ」。ここでは、サイードの「オリエンタリズム批判」との関係での「東洋的専制」「東洋的生産様式」(サイードによって、オリエンタリズムのディスクールとされる)のとらえ方の問題にも言及している。●(2)近代資本主義が農耕共同体を必然的に解体するというカウツキー主義を批判したものに「ロシア農耕共同体と世界資本主義」(『世界資本主義と共同体』所収   2014年、社会評論社)がある。

この(2)の方は、この「赤いエコロジスト」(2022・4・09アップ)に収録されています。

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★★★(次回連載・第6回予告 「米中争闘戦のアジアーインド・太平洋地域における戦略地図と日米右派・高市一派」≪4≫のつづきから)★★★