2026年6月8日月曜日

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第9回】【学習ノート】パランティアの「オントロジー」について――日米右派・高市一派の「新しい戦い方」(その一つAI)の核心を究明する 渋谷要

 

【連載】イラン侵略戦争とNSS(米・国家安全保障戦略)2025【第9回】【学習ノート】パランティアの「オントロジー」について――日米右派・高市一派の「新しい戦い方」(その一つAI)の核心を究明する  渋谷要

 

※今回【第9回】は、専門的な技術分野にかかわる考察になるため、★★★各引用論文からの【学習ノート】という位置づけです。

 

 

【目次】

 

はじめに

 

A】位置づけと問題意識

 

≪1≫軍事AIの技術高速化と戦争における構造の大転換

 

≪2≫【位置づけー総合的視座の獲得のためのノート≫パランティアのメイブン・スマート・システム(MSS)の展開】

●【イラン侵略戦争でのトランプの祝福】 

●【ドローン映像の自動解析から作戦案のシミュレーションへの技術の進化――メイブン・スマート・システムの成り立ち】

●【社内での「軍事利用」反対運動でグーグルが事業から撤退→パランティアへ】

●【「PoR」指定とは「国家予算に恒久的に組み込まれた正式な装備品」のことだ】

●【情報分析の高速化こそが価値(実績)となるものだ】

●【そこで「オントロジー」が、その核心技術として登場する】

●【日本との関係】

 

B】設計思想と実践の事例としてのイラン侵略戦争

 

≪1≫「オントロジー」は、通常どのように、設計されたものか

 

≪2≫「オントロジー」はホルムズ危機では、どのように作動するか

 

≪3≫イラク侵略戦争の開戦における「サイレント・ホーリー・シティ作戦」(ハメネイ師せん滅戦闘)の様相

 

―――

 

≪はじめに≫

4月27日(2026年)の、政府による★★「安保三文書」に関する改定★★の「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」の初会合が開かれた。会議では、★★「新しい戦い方」(AI、ドローン戦争などが基軸となる)★★、「継戦能力」創造・保持、「経済安保」の三点が、課題として挙げられたようだ。

そこで【後述するように】、2026年3月来日した、「オントロジー」システムを開発した、パランティア会長、ピーター・ティール氏が高市首相と会見したということを、想起する必要があるのではないか、と考えるものである。

 

★★技術的には、最大のポイントは、これから見るように、これらの課題のすべてが、AIの高度化・高速化をポイントにしているということである★★。

 

 ——―

 【A  位置づけと問題意識

 

≪1≫軍事AIの技術高速化と戦争における構造の大転換

 

●「米国の防衛モデル転換と日本防衛産業の未来:ソフトウェア定義戦争における「秒単位」のキルチェーン」(「経営者が読むNVIDIAのフィジカルAIADAS業界日報by今泉大輔」2026/03/14:「パランティアのオントロジーとアンドゥリルのARが形にした圧倒的なAI戦争。ウクライナや中東で現在交戦中」2026/03/14。のアドレス中での、追記の文章→2026/3/23のセミナーのレポート文)

 

(注 今回は、上のタイトル中にある「ARAugmented Reality)=拡張現実」に関しては省略する――渋谷)

 

「序論:物理的破壊からアルゴリズムの支配へ」より引用する。

 

「現代の安全保障環境において、勝利を規定する変数は、戦車の装甲厚やミサイルの射程といった物理的なスペックから、それらを制御するアルゴリズム(計算手順・計算方法——引用者・渋谷)の処理速度へと決定的に移行した。★★★米国防総省が強力に推進する『ソフトウェア定義戦争(SoftwareDefined)』は、第一次世界大戦の『工業化時代の軍事モデル』を完全に過去のものとし、戦場を巨大なデータ処理プラットフォームへと変貌★★★させている。

 日本国内の多くのビジネスパーソンや政策決定者は、依然として防衛を『ハードウェアの調達』という枠組みでとらえているが、米国の最前線では、パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)の★★「オントロジー」★★が現実世界をデータとして再構築し、アンドゥリル・インダストリーズ(Anduril Industries)の「ラティス(Lattice)」が最前線の兵士の視界をデジタル情報で埋め尽くしている。かつて「分」単位で数えられた敵の発見から破壊までの時間(キルチェーン)は、今や「秒」単位へと圧縮された」。  

 

 これが、現代の戦争の技術論的基調だという事だ。「戦場を巨大なデータ処理プラットフォームへと変貌させている」というのが、ポイントだ。

 

★★そこで、もう一点、重要な提起をこのレポートは述べている★★と考える。

 

このレポートの「第8章:日本の防衛産業への警告:ソフトウェア主導への転換」というところだ。

 

「ソフトウェア定義戦争においては、機体の性能がどれほど優れていても、共通作戦図(COP)」に接続できず、AIによる高速なキルウェブの一部として機能しない装備品は、戦場での生存権を持たない」……「米国がパランティアのオントロジー(後述する――引用者・渋谷)やアンドゥリルのラティスを標準機版(POR: Program of Record)として採用し始めたことは、同盟国である日本にとっても死活問題である。米軍のAI主導キルウェブに参加できない(データをリアルタイムで交換できない)装備品は、共同作戦において『見えない存在』となり、結果として味方からの誤射のリスクや作戦からの除外を招くことになる」。

 

つまり、ソフトウェアの一体化なくして、集団的自衛権の行使はおろか、それに至らないような共同作戦・演習なども、意味をなさないといことになる、ということである。

 

★★★それでか、どうか高市首相は「危機管理投資・成長投資」として、重点17分野を指定したが、その中でAI、サイバーセキュリティ、防衛産業などを内包した戦略を立てている。そして、★★★2026年3月には、以下の論点となる、パランティアの会長であるピーター・ティール氏が来日し、高市首相と会談している★★★。

 

後述するように、米軍にとってパランティアは欠かせない存在となっている。米国防総省の軍用AI政策「プロジェクト・メイブン」で基幹システムを提供・運営。米新興会社アンソロピックのAI技術と組み合わせ、これまでバラバラだった膨大な収集データを網羅的に分析し、どの標的を攻撃すべきか瞬時に導き出す仕組みを作った。

 

このことは、高市首相の掲げる「安保(戦略)三文書」改訂に際しての「新しい戦い方」(AI、ドローン、継戦能力、経済安保)の政策や「インテリジェンス」の運営と、関係があるという以外ないだろう。

ここでは、現在、最高水準のレベルを形成する、以下のAIを搭載した「メ―ブン・スマート・システム」と、戦闘技術高度化の具体例という課題が設定されているという事だ。

 

≪2≫【位置づけー総合的視座の獲得のためのノート≫パランティアのメイブン・スマート・システム(MSS)の展開】

 

●【イラン侵略戦争でのトランプの祝福】 

【ワシントン=共同】「(共同通信 4/11(土)6:56配信)

「トランプ米大統領は10日、自身のSNSで、人工知能(AI)を組み込んだ米軍の分析システムを開発したデータ解析大手「パランティア・テクノロジーズ」を称賛した。対イラン軍事作戦を念頭に、同社が「極めて高い戦闘遂行能力を備えていることを証明した。敵に聞いてみればいい」と投稿した。

米メディアによると、米軍はパランティアと協力して開発し、AIを搭載した「メイブン・スマート・システム(MSS)」を使用。衛星や偵察機などから収集した膨大な機密データを統合して分析し、攻撃目標の選定や優先順位の判断に活用している」。

 

●【ドローン映像の自動解析から作戦案のシミュレーションへの技術の進化――メイブン・スマート・システムの成り立ち】●

 

「メイブン・スマート・システム」は、人工衛星やドローン、レーダーなどの異なる情報源から得られる膨大なデータを統合し、人工知能でもって、例えば、敵の車両や兵器庫というような標的を自動的に検知するソフトウェアだ。

このメイブン・スマート・システムは、2017年にドローン映像の自動解析を目的として始まった。今では、大規模言語モデルを組み込み自動言語による質問への応答や作戦案のシミュレーションが可能な水準へと高度化している。

 

★★★そして、この高度化の核心をなすのが「オントロジー」というシステである★★★。

 

 後述するように、例えばこのシステムにより、標的特定時間を12時間から1分未満に短縮することができるようになったという。このシステムの成り立ちを見て行こう。

 

以下の、説明を読もう。

 

●引用はALT(「オルタナティブ・ブログ」)「パランティアのメイブン・スマート・システムが米国防総省に正式採用された背景を徹底解説」(『経営者が読むNVIDIAのフィジカルAI/ADAS業界日報by今泉大輔』、2026/03/21)より●

 

「米国防総省(Pentagon)が、パランティア・テクノロジーズのAI指揮統制システム「メイブン・スマート・システム(Maven Smart System:以下MSS)」を、正式な「プログラム・オブ・レコード(Program of Record:政府公認の正式な事業計画)」として採用することを決定しました」。

 

●【社内での「軍事利用」反対運動でグーグルが事業から撤退→パランティアへ】

 

1. 「プロジェクト・メイブン」の数奇な歴史:グーグルの撤退からパランティアの勝利へ

今回の正式採用に至るまでには、シリコンバレーの倫理観と国防の必要性が衝突した複雑な歴史があります。

「プロジェクト・メイブン」は2017年、ドローンが撮影する膨大な映像データをAIで自動解析し、標的を特定することを目的に開始されました。当初、このプロジェクトを主導していたのはグーグル(Google)でした。

 

しかし、★★★2018年に自社の技術が軍事利用されることに反対する社員による大規模な抗議活動が発生し、グーグルは同プロジェクトの契約更新を断念★★★しました。

 

この「空白」を埋めたのがパランティアでした。最高経営責任者(CEO)のアレックス・カープ氏は、★★「西側民主主義を守るために技術を提供するのは企業の責務である」という確固たる信念★★を掲げ、グーグルが手放したバトンを受け取りました。パランティア内部で「トロン(Tron)」と呼ばれていたこのプロジェクトは、数年の歳月を経て、世界で最も洗練されたAI戦場解析システムへと進化したのです」。

 

●【「PoR」指定とは「国家予算に恒久的に組み込まれた正式な装備品」のことだ】

 

2. なぜ「プログラム・オブ・レコード(PoR)」が重要なのか★★★この第2節を、一般記事化する★★★

 

今回、MSSが「プログラム・オブ・レコード(PoR)」に指定されたことは、パランティアにとって極めて大きな意味を持ちます。防衛産業におけるPoRとは、単なる「試用」や「短期契約」ではなく、「国家予算に恒久的に組み込まれた正式な装備品」としての地位を確立したことを意味します」。

 

これには「三つのメリット」があると言っている。

 

「1 長期的かつ安定的な資金提供: 単発の予算ではなく、国防予算のベースラインとして毎年巨額の資金が自動的に割り当てられます。パランティアの軍事部門における契約価値はすでに13億ドル(約2,000億円)規模に達していますが、今回の指定により、さらに数十億ドル規模の長期的な成長が保証されました。

2 全軍への導入効率化: これまでは部隊ごとに個別導入の検討が必要でしたが、PoR化により、陸・海・空・宇宙・海兵隊の全5軍において、標準装備として導入が加速します。

3 米陸軍による契約管理: 今後は米陸軍がパランティアとの将来的な契約を主導することになり、組織的なバックアップ体制が一段と強固になります。ということだ。

 

●【情報分析の高速化こそが勝ち(実績)となるものだ】

 

3. 実績が証明する圧倒的なスピード:12時間から1分未満へ

国防総省がこれほどまでにパランティアを信頼する理由は、その圧倒的な「実績」にあります。

 

MSSは、衛星、ドローン、レーダー、センサー、そして人間による諜報報告など、あらゆるソースからのデータをリアルタイムで統合・解析します。

 

特筆すべきは、★★直近のイランとの紛争における実績です。米軍は過去3週間で数千回の標的攻撃を行いましたが、その中心的な役割を果たしたのがMSSでした★★。

 

かつて、複数のデータソースを統合して攻撃目標を特定し、意思決定を下すプロセスには「12時間」を要していました。しかし、MSSの導入により、このプロセスは1分未満」まで短縮されました。かつて2,000人の兵士で行っていた分析作業を、わずか20人で、しかもより高い精度で実行できるようになったのです」。

 

●【そこで「オントロジー」が、その核心技術として登場する】

 

4. 核心技術:意思決定を支える「オントロジー(Ontology)」の正体

 

「なぜ、パランティアのAIだけがこれほどの実績を残せるのでしょうか。その鍵は、同社独自の概念である「オントロジー」にあります。

 

過去の投稿でも触れましたが、オントロジーとは組織の「デジタル上の共通言語」です。

 

★★★従来のデータベースがデータを単なる「行と列」の数字として扱うのに対し、オントロジーはそれらを「航空機」「部隊」「燃料」「地形」といった現実世界の「実体(オブジェクト)」として定義し、その相互関係をデジタル上に再現します★★★。

 

例えば、★★ドローンが「敵の車両」を検知した際、オントロジーはその車両がどの拠点に属し、どのサプライチェーンに関連しているか★★を即座に紐付けます。

 

AIAIP)はこのオントロジーを参照することで、単なる計算ではなく、組織の論理に基づいた「意味のある推論」を行うことができるのです。

 

★★★戦場という極限の状況下で、バラバラのデータソースを一瞬で「共通の状況把握(Common Operating Picture)」へと変換できる能力こそが、パランティアの絶対的な優位性です」。★★★

 

●【日本との関係】

 

6. 日本市場への波及:SOMPO、富士通、そして防衛の未来

このニュースは、日本のビジネス・防衛環境にも多大な影響を及ぼします。

 

日米共同演習への導入:★★★MSS2026年後半に日本で開催される日米共同指揮所演習「ヤマサクラ(Yama Sakura)」で、大規模な実戦デビューを飾る予定です★★★。これにより、自衛隊の意思決定プロセスにおいてもパランティアの技術が浸透していく可能性が高まっています。

 

民間への技術転用: 日本を代表するユーザーであるSOMPOホールディングスや富士通も、軍事レベルで鍛え上げられたこの「オントロジー」と「AIP」を活用しています SOMPOではすでに8,000人以上の従業員がこのシステムを使い、年間1,000万ドルの財務改善効果を見込んでいます 

 

「ロジック・レイヤー」の覇権: 投資家の視点では、パランティアが「データの保管場所(スノーフレイク等)」ではなく、「データの意味を理解し、行動を決定する頭脳(ロジック・レイヤー)」の市場を独占しつつあることが明確になりました 。現在の時価総額3,600億ドルという評価は、この「国家のOS」としての地位を反映し始めています」。ということだ。

こうしたAI技術が「ネットワーク中心の戦い」という機能をみるならば、軍事システムの日米一体化も、促進されるはずだ。◆

 

B】設計思想と実践の事例としてのイラン侵略戦争

 

≪1≫「オントロジー」は、通常どのように、設計されたものか

 

●【そもそも】、この「メイブン・スマート・システム」を稼働させる「オントロジー」というシステムは、サプライチェーンの運営管理のために作られたものに他ならない。

 

【「オントロジー」の主な機能】は、次のようなものだ。

 

 ●以下は、「Palantirの「オントロジー」をPythonで再現してみた」(@channnnsm),『Qiita』投稿日2025年12月28日)からの引用だ●。

 

※Python…プログラミング言語の一つ。1990年代初頭に登場した。プログラミング…人間がコンピューターに処理内容を命じるための人工的な「言葉」。ソフトウェアをつくるために使われる記述手段。

 

「作るもの:Supply Chain Control Tower

1 Ontology Explorer : 製品・工場・サプライヤーなどの「オブジェクト」を管

理。

2 Semantic Graph : オブジェクト間のつながり(関係性)を可視化。異常個所は赤く警告。

3 Chaos Engineering : 意図的に「サプライヤー停止」などのトラブルを発生させる。

4 AI&Action AIがトラブルを検知し、代替案を提案。人間がボタン一つで発注(Write-back)を実行。」

 

そこでシステムの稼働順序の説明がある。【この引用では】、こまかい入力手順や、情報の流通の回り方などは省略した。

 

「●1●Schema is Semantic(定義こそが意味) 従来のDBテーブル定義(SQL)は『データの持ち方』を定義しますが、オントロジーではpydanticを使って『ビジネス上の意味(型)』」を定義します」→「このように定義を行うことで、後述するAIが「factoryのstatusがCritical」ということは、製造が止まっているんだな」というビジネスロジックをプログラムの構造から理解できるようになります」。

 

→「●2●Graph is Context(つながりが文脈) ……従来のRDBでは複雑なSQLを書かなければなりませんが、オントロジーではオブジェクト間のリンクを辿るだけで、AIが判断に必要な『現場の文脈』を抽出できます」。

 

「……AIは『在庫が減っている』という事実だけでなく、『在庫が減っているが、工場の操業停止により生産できず、サプライチェーンも寸断されている』という複雑な文脈を理解できます」。

 

★★★ここが、これまでの普通のAIのように、つまり「在庫が減っている」というだけのAIと違うところだ★★★

 

→「●3● Human-in-the-Loop Actions(人とAIの協働)  そして一番の肝がAction(行動)です。分析で終わりではなく、その場でシステムに書き込み(wite-back:分析結果を……(システムの機能に――引用者)反映させること)を行います。 今回のデモでは『AIが検索・提案→人間が選択→システムが実行』というワークフローを実践しました」。

 

つまり、「代替案」の提示まで、行ってくれるという事だ。選択肢から「選択」するのが、人間である、ということになる。

 

★★実際に、実地の現状で、どのように動くか、シミュレーションしたものを、次に見ることにする★★。

 

≪2≫「オントロジー」はホルムズ危機では、どのように作動するか

 

●引用は次の論考からのものです。「三井物産」がパランティア・オントロジーを使うとホルムズ危機にリアルタイムで対処できる:パランティアのケーススタディ」(『さっつーのAIエージェント 監修 今泉大輔』。2026/04/16。「https://sattu-ai-agent.com/2026/04/16/mitsui-ontology-case/#toc6)●

 

【第二章:ケーススタディ:ホルムズ海峡封鎖における「機器の収益機会化」】

 

(2・1浮き荷(オンボード)のリアルタイム可視化と意思決定)

 

●「パランティア・オントロジーを導入した環境では、世界中の海上を移動いる「浮き荷」の全容が、各船の積載量、品質(例:原油の性状)、所有権、そして仕向地規制の有無(FOB契約など)と共に完全に可視化される」。

 

●この場合、この論考で、【「表」として示されている項目】では、「データ鮮度」は従来のExcelベース管理で「数日~数週間のラグ(報告ベース)だったのに対し、オントロジー・ベースでは「リアルタイム(AIS・センサー連動)」「AIによる数万通りの全社最適案提示」。

また、「シミュレーション」ではExcelベースが「担当者の経験則に基づく部分最適」なのに対しオントロジー・ベースでは「AIによる数万通りの全社最適案提示」と表示されている。

 

(2・2 傭船のダイナミック転換とアービトラジーの実行)

 

(※ アービトラジー(裁定取引)=いわゆる「サヤ取り」。金利差・価格差を利用して、売買し、マージンを稼ぐこと。利鞘とりなので「サヤ取り」という――引用者・渋谷)

 

「ホルムズ海峡が閉鎖された瞬間、オントロジーは即座に『仕向地条項のない(FOB)』貨物を特定する。三井物産が保有する米国産LPGや、中東以外(豪州、モザンビークなど)からの調達貨物の権利関係を走査し、どこへ転送するのが最も高い経済価値を生むかをAIが算出する」。

 

 「ここで重要となるのが、三井物産が出資する『BEARING.ai』の技術である。過去の膨大なデータと深層学習アルゴリズムを組み合わせた燃料消費予測モデルを活用することで、リルートに伴う追加コスト(燃料費、傭船料、寄港料)と、供給不足で高騰する欧州・アジア市場での売却益を正確に比較できる」。

 

AIは、例えば『中東へ向かっていた空のLNG船を即座に米国ルイジアナ州のキャメロンLNGへ向かわせ、欧州のガス不足を補うためにプレミア価格で売却する』といった具体的なアクションを提示する。この判断は、市場が価格の高騰を完全に織り込む数時間から数日間前の『裁定取引(アービトラジー)』の機会を捉えるものである」。

 

ここで、オントロジーの位置づけが、紹介される。

 

「オントロジーは、部門間の壁を物理的にではなく『データの意味』によって取り払う。『エネルギー部門』の供給遅延が『金属資源部門』が運営する豪のアルミニウム精錬所の操作にどのようなエネルギーコスト増をもたらすか、あるいは『食料部門』が関与する肥料工場(アンモニア原料など)の稼働率をどの程度低下させるかを、全社的な連鎖反応としてシミュレーションする」。「この部門間統合により、『エネルギーを市場で高値売却する利益』と『自社精錬所の操業を維持するためにエネルギーを確保する便益』を秤にかけ、全社利益を最大化する経営判断を下すことが可能になるということである」。

 

(結論:三井物産が示す『真のDX』の形)

 

 「今や、オントロジーという『デジタルツイン』が、全社のアセット、契約、市場環境をリアルタイムで統合し、AIが最適なアクションを秒単位で提示する。この『意思決定の超高速化』こそが、危機を収益機会へと劇的に転換させる原動力となる」というものだ。

 ※DX……デジタルトランスフォーメーション(デジタル技術を活用してビジネス・経営を変革すること、それにより競争力を強化してゆくこと――引用者・渋谷)

 

★★★これらの機能が軍事AIによる、「新しい戦い方」全般の【前提に】あることだ★★★。

 

≪3≫イラク侵略戦争の開戦における「サイレント・ホーリー・シティ作戦」(ハメネイ師せん滅戦闘)の様相

 

2026年2月28日、米帝・トランプ一派とイスラエルは、イラン侵略戦争に突入した。そして、「サイレント・ホーリー・シティ」作戦として、イランの指導者・ハメネイ師らの殺害を強行した。

 

●以下は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ株式会社)2026/03/03「【11分23秒で作戦遂行】イラン攻撃はAIが主導する人類初めての戦争となった 近代戦に深く組み込まれた、AIの脳と神経網」からの引用だ。

 

「米軍とイスラエル軍が実行したイランの最高指導者ハメネイ師を標的とする攻撃(コードネーム:サイレント・ホーリー・シティ)は、作戦の開始から標的の捕捉、最終的な戦果判定に至るまでの「キルチェーン」がわずか1123秒で完了した。この電撃作戦は、アンソロピックの人工知能モデル「Claude」と、パランティア・テクノロジーズのデータ分析基盤「Gotham」や統合基盤「AIP」による情報処理によって実現したものである。人類史上初めて、人工知能が高度な意思決定の根幹を担い、軍事作戦を主導した戦争となった」。

 

 そこで、各機能の役割についての位置づけが、以下のように説明される。

 

「イランの作戦遂行において、米パランティア・テクノロジーズが提供するデータ分析基盤「Gotham5」や統合OSAIP」、そして米アンソロピックの最先端AIモデル「Claude」が中核的な役割を果たした。人間に例えれば、パランティアの分析統合システムが「神経系」の機能を担い、アンソロピックの「Claude」が「脳」の機能を担っている」。

 

どういうことが、仕事になったかだが。

 

「作戦では、イスラエル軍が開発しパランティアのシステム上で稼働する「Where's Dad?(お父さんはどこ?)」と呼ばれるアルゴリズム(計算手順、計算方法――引用者・渋谷)が使用されたとされる。Claudeが標的の家族関係、音声パターン、SNS上の行動履歴などの非構造化データを瞬時に分析し、標的が特定の場所に存在するという確信度を算出した」。

 

【ここで言われているのは、まず、高速度の情報収集と処理・分析がAIによって、行われるという事】である。

 

「作戦の初期段階においてイスラエルと米中央情報局(CIA)や米軍が収集したデータを元に、Palantierの「Gotham5」と「Claude」は、宇宙、空、陸、海、サイバー空間、そして人的情報という6つの次元から収集された2.3ペタバイト、およそ12000万件に及ぶ断片的な情報を分析した。

 

★★★人間の分析チームであれば100日を要するデータのクリーニングから相関関係のモデリング、高価値情報の抽出に至る工程をわずか90分で★★★完了させている」ということだ。

【さらに】。

 

「標的捕捉の段階では、ターゲットの車列が特定の交差点を通過する際に生じた1.2秒の停止といった、人間の目には留まらない微小な異常をAIが検知した。衛星画像をはじめとする上空からの視覚データ、現地の工作員による人的な諜報データ、長期間の監視記録、傍受された電子シグナル、SNS上のオープンソースデータを包括的に解析し、標的の生活パターンを精密に構築している。こうした分析の中で、極度に慎重であったハメネイ氏とイラン指導部の行動パターンから「わずかな隙」を算出した」。

【これは】。

 

 「過去6カ月の行動履歴や警護チームのシフト、気象条件などを統合した時系列の予測モデリングを実施し、防空レーダーの死角と警護交代が重なる3分間の隙を特定することで、ターゲットの位置の誤差半径を500メートル以内にまで絞り込んだ」という成果を導くことになった。

 

【そこで】。

 

「指揮官の意思決定に必要な作戦立案シミュレーション(ウォーゲーミング)も8分で処理され、極超音速の作戦遂行が可能となった。報道によると高精度弾薬と長距離ミサイルを備えたイスラエル軍機が、ハメネイ氏と指導者らがいた別々の場所にある3つの建物を同時に攻撃し、わずか1123秒でこの作戦は遂行された」という戦果を結果した。

【だから】。

 

 「この作戦は、トランプ大統領がアンソロピックのAI製品の連邦政府での使用を即時停止するよう命じた禁止令と同日に実行されており、AIがすでに軍事インフラへ深く組み込まれ、排除が困難な水準に達している実態を浮き彫りにしている」という事を意味している、となる。

 

●「作戦提案」→「AIが優先すべき指標」の設定→AIによる「ベストマッチの作戦」の表示→人間による「攻撃」の認証ボタンでGO→リアルタイムでの結果の提示

 

(内田聖子(PARC共同代表)「軍拡はAIからはじまる」、岩波書店『世界』2026年6月号から)。

 

「イラン攻撃で使用されたAIシステムは、これまでとは異なる次元に進んでいた」。どれが、パランティア・テクノロジーズ社が開発した「メイブン・スマート・システム」だ。

 「標的の補足を中心に行うAIである「メイブン」と、過去の戦闘・戦術情報をすべて蓄積した同社の「Gotham」というAIによって駆動する。

 まず、米中央情報局(CIA)、米軍は、長期間にわたる標的の行動履歴や警護チームのシフトなどを含む膨大なデータをAIに入力する」。そのデータ量の分析スピードは、「人間の分析チームで行った場合、100日はかかると言われるこの作業を、AIはわずか90分ほどで達成した」また「このシステムは攻撃開始から24時間で2000カ所を標的として抽出した。このように作戦立案の速度と攻撃の規模は飛躍的に拡大した」。

 

★★さらに「もう一つの特徴」として「これまでより圧倒的に操作が簡単になったことだ」という★★。

 

 「もともと企業経営や組織の改善のために開発されたこのシステムは、必要なリソースを蓄積し、指示された条件(資金や時間、人手等)によって複数のシミュレーションを提案することに長けている」。

 

ここから内田論文は、次のように指摘する。

「軍事作戦においては、簡単なパソコンの操作だけで標的の抽出から攻撃ターゲットへの指定ができ、『作戦を提案する』というボタンをクリックすると攻撃のオプションがいくつも提示される。この時、『AIが優先すべき指標』として距離や所要時間などの条件を自由に設定できる。すると数ある作戦の中で『ベストマッチの作戦』が表示されるのだ。最後に人間が『攻撃』の認証ボタンを押せば作戦が実行され、結果もリアルタイムで確認できる」

 

こうした作戦は先述の「メイブン」と「Gotham」に、大規模言語モデル(LLM)である「Claude」(アンソロビック社)を噛ませることで簡単な操作となり、「人間はテキストさえ打ち込む必要もなく、AIに話しかけるだけで即座に回答が出るようになった」ということである。

 

→以上が、「新しい戦い方」の重要な事例としてあげられることと推論する。

それでは、次回は、「新しい戦い方」の一つ、ドローン戦争について、見て行こう。◆

 

―——

 

【次回(第10回)予告】 ◆【ウクライナ・ドローン戦争と日本のドローン戦略】

・ドローン戦争の戦略地図・イラク侵略戦争でのドローン戦争・ウクライナ徹底抗戦におけるドローン技術の発達・日本のドローン戦略——民間企業との連携・アジアで加速する武器輸出競争